幕間
三人称です
薄暗い部屋の中で、一人の人影がポツリと座り込んでいる。
手を口に近づけ、小さな声で話している。
一般の人が見れば、その光景は異様に見えるだろう、気が狂ったと思われるかもしれない。
『はい、問題ありません、このまま計画どうりに結構します』
人影は、まるで誰かに報告をしているみたいだ。
人影の手元には魔道具がある、これも見慣れない物だ、それもそのはずその魔道具は人影に指示をだしている人間が作ったものだからだ、その効果は離れた距離からでも魔道具を持つもの同士で会話ができるというもの。
今までにないものだった、画期的とも言える、世に出れば世界の情勢に影響を与えるだろう。
もし、人影がこのまま連絡をたち逃げ出してこの魔道具を何処かで、売りに出せればそれで、一生食べていけるだけの金を手に入れれる。
そんな魔道具も指示を出す上司にとっては、未完成な駄作らしい、部下の指示に便利くらいに思ってる程度で、惜しげもなく部下に渡している。
もちろん部下である人影は売りはらうなんて真似はしない、出来ないと言えるだろう、そう上司が仕向けているし人影自身がそれを良く理解している。
ある意味理想的な上司といえた、部下の能力を理解し適切な指示を出す、その仕事が自分の望む仕事ならだが、やらざる得ない、そうゆう状況に置かれてしまう。
他人や自分を傷つけてしまっても、しかし、指示を聞くそれが一番ましな未来に繋がる状況を作られてしまった。
全てが手の平だ、悔しさもあるだろう、人間的に好きに慣れる要素はない上司だ、けれど嘘はつかない、少なくても今までは。
『はい、わかっていますやるべき事は』
諦めにも似た決意を目に宿した人影は、報告を終えると、静かに魔道具の起動を切る。
部屋の引き出しから小瓶を二つ取り出す、同じ容器に似た様な液体が入っている、二つとも魔道具だ、一つは【イロカワール】ふざけた名前の魔道具だが平民の間で流行っているみたいだ、この学園で一時期流行った事もあった、この魔道具も上司が作ったものだ、戯れに世にだしたと言う話しだが、もしかしたら部下がこの魔道具を持っているのが見つかっても問題がない様にしたのかも知れない、本心は分からない、何処まで何を考えているのか部下である人影からは想像できなかった。
もう一つの小瓶は【イロカワール2】これもまた的当な名前だが、二つとも人影がこの学園に入るには必要な物だった、イロカワールが髪の色を変え、イロカワール2が瞳の色を変える。
定期的に使用しないと効果が切れてしまい、本来の紫の髪と瞳に戻ってしまう。
人々から忌み嫌われている、紫色に。
握る拳に力がこもる、瞳に怒りの影が映った。
人影は、息を吐き手の力を抜く。
魔道具を使用すると、ベットに滑り込み目を閉じた。




