魔法
吉田。この弁当廃棄だから食べろよ。
お前豚生姜焼き弁当好きだろ。
棚瀬さんがいう。
きっと棚瀬さんは気を使って優しくしてくれてるんだ。
あ、ありがとうございます。
アッハハハハー
店の方から笑い声が聞こえてきた。
何事かと思いレジに向かうとお腹を抱えて笑う美希ちゃんがいた。美希ちゃんは僕に気づくと
美希(ごめんなさい。あのお客さんが面白くて)
指差方を見ると店から出ていく後ろ姿がある
ボサボサの頭にサンバイザー、白Tに、、、
ピ、ピンク先生だ。
美希ちゃんはまだ笑っている。なんて可愛い笑顔なんだろう。今までこんな顔を見た事無い。
お客で来て、レジ打つ短時間で美希ちゃんをここまで笑顔に出来る。、、、ま、魔法か!
僕はとっさに入口に目を向けるがピンク先生はもういない。
美希ちゃんこの前はゴメンね。せっかく誘ってくれたのに。
僕の口から自然に言葉が出た。
笑顔の美希ちゃんが少し真面目な顔して
美希(本当ですよ。私嫌われてるのかと思いました)
少しふてくされた感じだがこれがまた可愛い
なんだろ。体の中心から流れてくるこの暖かい春の風は凄く気持ちが良くて眠ってしまいそうだ。
もしバイトを辞めて腐っていたらこんな気持ちになれなかったなー
僕は自分自身の変化に気づき始めた。
素直に謝る事が出来て綺麗な物を綺麗と感じる事が出来る様になってきた。
美希(じゃあ今度ご飯おごってください。
でも私の事嫌いだったら無理しないでいいですよ)
な、なにいってるの!嫌いな訳ないじゃん
しまった!かなりのビックボイスだ!
あまりの衝撃発言を聞いたので音声コントロール出来なかった。
美希(クスっ。吉田さんて可愛いですね!私前だししてきます)
そう言うと美希は少し照れた仕草を見せて
店の奥へ歩いて行った。
なんかわかんない。僕の気持ちは不安定な株価の様に上下している。ただ今日という日は
今までの人生で一番幸せを感じた日である。
大好きな人から誘いを受けるという事は背中に羽が生えた感じで天まで登ってしまいそうだ。もはや本田の話が本当か嘘かはどうでもいい。彼女が笑顔ならそれでいいんだ。
、、、なんかわからんけどありがとうピンク先生。