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覚醒 37~39

(37)

「そうですよね。この形式タイプは自分をダメ人間だと考えている、

か。しかし、うまい事を考えましたね。誰だってただのレプリボー

グよりそんなタイプの方がいじめ甲斐がありますもんね。ストレス

のはけ方だって段違いというところでしょう」

「うん。あ、そうだ、このレプリボーグの基本設計は、ここの生徒

達みたいな子供がしたのを君も知っているだろう?」

「はい。しかし…いや、子供だからこそこんな残酷な設計が出来た

んでしょうね」

「ハハハ、君、それは天才さんに対して失礼だよ」

「いや、これは失言でした。あ、そうだった、チーフ、このD-9

の思考回路の自己増殖の件ですが。このデータなんです」

「どれどれ…」


 暫くの間、父さん達は何やら話し合ってるみたいだった。


「ふうん、これは面白いね。余程注意しないと気づかない程だけど、

今までにだって徐々に思考回路が増殖してる形跡もあるし、本日に

至っては爆発的に思考回路が自己増殖してる。いわゆるビッグバン

並みだな。それに、特に興味深いのはコレ。五年四組の他の生徒や

担任、それから校長、給食のおばさん、彼らにはちゃんとした対応

が出来てる。でも、この一人…」

「ええ」


「そう、このアルファ、という生徒には対応が出来ていないのか。

ああ、この生徒は昨年からの編入生だね。このデータから見ると数

値は低いが、おそらくこの生徒は不適格者だな。う~ん、でもおか

しいね? これまでチェックに引っかからなかったなんて。何らか

の意思が働いたと見た方がいいんだろうね。本来なら真っ先にこの

生徒に対して指導するっていう風にコイツだって組まれているんだ

けどね。よし! いっぺんバラしてみるようかけ合ってみるか!」


(38)

「じゃ、チーフ、今回は現場の私どもにやらせて下さい。この手の

ケースは、私の研究テーマのひとつなんです」


 母さんの声も聞こえる。母さんの言葉に大きい父さんが

「そうか、君は専門が児童心理学だったね。一般社会における、い

じめられレプリボーグ投入の勧めと登校拒否児童の激減予想、それ

と、いじめられっ子の減少の予測データの収集、上手くまとめられ

てたじゃない。読んだよ、論文」

「ありがとうございます。その関係もありますんで是非私に」


「よし、いいだろう。じゃ、今夜はこのままにしておいて、明日朝

一番でラボに許可を取ろう。現場の私たちだって、いつまでもラボ

の小間使いじゃないって処を見せてやるんだ! ああ、君、替りの

奴を手配してくれよ。アレが無いと生徒達も納得しないだろうから

な。ついでにアルファって生徒にも対応しておくようにと」


 大きい父さんが父さんの一人にそう命じているのも聞こえる。


「はい、分りました、チーフ。でも、いくら全国から集められた天

才といえども子供には違いが無いんですよ? ここの子供達はこい

つら無しでは一日たりとも普通に生活出来ないんでしょうか? 困

ったことですよね」


「君、子供だけじゃないよ。ストレスの溜まりやすい教育者やお役

人、私らだってこいつらがいないと困るじゃないか。一度でもコレ

を体験した者にしてみれば、どんなにコレが必要なものかわかるだ

ろう? 君だって随分D-9の世話になってるじゃないか? 先月

はD-9の内臓人工血液が予定よりも随分早く無くなっていたが、

あれも君に無関係とはいえないよ? まあ、ここには天才がいっぱ

いだからね。君もストレスが相当のものだろうから文句は言えない

がね」

 大きい父さんは少し笑いながらそう言った。

「いや~、チーフ、ご存知だったんですか。お人が悪い。でも、コ

レのお陰でストレスが溜まらずキレにくくなったのは事実ですよ」

 父さんの一人も、恥ずかしそうにそう言った。


(39)

 「ま、こいつらのお陰で生活がスムーズかつ平穏に回るとなると、

こいつらはもう必要悪さ。今はまだ高価だし絶対数も少ないから、

ここみたいに政府直轄の特別施設位でしか使えないが、今に一家に

ひとつの時代が来るさ。言うなれば、世界を救うスケープゴートだ

な」


「そうですよね、チーフ、私の論文でもこいつらのお陰で、世の中

の暴力事件が減ってるって結論付けているんですもの。かえってこ

いつらに反応出来ない不適格者の方が、突然何をするか分らない分

危険ですわ」


「そうだとも。これが一般に普及すれば、政府の上層部だって突然

のクーデターを恐れなくてもいいんだ。こいつらのお陰でね。それ

が幼児教育界の方では良く分っとらんのだ。だから建前教育しかし

ない皺寄せがこっちに回って来るんだ。これは何もここの生徒達が

天才だからってこととは関係は無いさ」


「はい。私、ここの生徒達を見てると、天才ってものが良く分る気

がしますわ。確かにある部分では怖いほどの才能を持ってる子達。

でも、それ以外となると、同じ年の子達と比べても能力は落ちます

もの。特に一般常識や集団生活。この点においては、彼らはまるで

幼児ですものね」


「うん。天才とは、見方を変えれば『異形』だよ。ある部分が突出

すると、他の部分は凹む、これは道理だな。凹んだ部分を平均的な

ものと比べると、小さく見えるもんさ。神様も、ああ、これを私ら

科学者が言うとおかしいかも知れんがね、神様がもし居るとしたら

だ、神様も随分酷い悪戯をなさるものだと思うよ」


「あら、チーフ、神様のせいではありませんよ。彼らは科学の進歩

が生んだ天才達ですもの。罪深いのは我々科学者ということになり

ますわ」


「うむ。しかし、考えるに、人間は普通が一番幸せに出来ている。

そうは思わないかね?」


「ま、チーフ、今夜は飲みにいきましょう。その辺の処も大いに語

り合いましょう。ねえ、君も行くよね?」


「ええ、行きましょうよ、チーフ」


 この後、父さん達と母さんは僕を特別室に残したまま、出て行っ

てしまった。

 行く時、僕にこう言い残して。


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