表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

覚醒1~3

いつものように、教室までの道々、僕は考えた…過酷な運命? デクの存在意義とは?

(1)

 いつものように、教室に行くまでの道々、僕は考えた。何を考え

てるかってのはその日によって違うんだけど、例えば、一昨日はこ

の頃お天気がハッキリしない日が続くなってコトだったし、昨日は

あんなに沢山いるカラスは何処で死ぬんだろう?ってコトだった。

 お天気が悪いのは今が梅雨だから当然って言えば当然なんだけど、

カラスのコトは不思議だと今でも思ってる。ほら、カラスって街中

でも結構いるよね? でも、そのカラスの死骸はあんまり見たコトな

いんだ。アイツら、いったい何処で死ぬんだろう?


 今日の僕は、朝見たカレンダーの隅にある言葉について考えてた。

ほら、広告の為に、おまけにもらえる安っぽい奴があるだろ? で、

そのカレンダーの隅に格言っていうのか、とにかく為になる言葉っ

てのが載ってるんだ。誰でもいっぺん位は見た事あるんじゃないか

な。


『愛は与える程に中身を増す』これが今月の言葉だった。愛は与え

る程に中身を増す。よく分んないけど、多分とってもえらい人の言

葉なんだろうな。

 愛は与える程に中身を増す。本当だろうか?

 愛は与える程に中身を増す。そうだといいだろうな。

 愛は与える程に中身を増す。きっとそうかもしれない。

 愛は与える程に中身を増す。この僕ですらも?


 そんなコトを考えながら教室のドアを開けた途端、ガン! っと

一発後頭部に衝撃がきた。僕はそのまま前のめりに教室のドアを突

き破り、勢い余って教室を横切り、窓ガラスに顔から突っ込み、で

も外には飛び出さずに跳ね返って、教壇のまん前まで来た処で仰向

けに倒れた。


「あ~あ、オマエ、汚ねーよ、おら、そこいらに血を飛ばすんじゃ

ねえ」

 やっとの思いで目を開けると、エー君がニヤニヤ笑いながら僕を

見下ろしてた。


(2) 

 ああ、現実はこんなものなんだ。頭の中で考えるコトはいつだっ

て極彩色だけど、現実に見える色彩は、僕の場合、今の梅雨時の曇

り空色がいいとこなんだろう。


「す、すみません。すぐにキレイにしますから…」

 転んだ僕の周りは、ちょうど幼児が赤色のクレヨンでいたずら書

きしたみたいに汚れて見える。あわてて立ち上がろうとしたけれど、

ちょっと立ちくらみがして、また転んだ。

「このデク野郎が!ますますオマエの汚ねー血で床が汚れたじゃね

ーか。まずは鼻にティッシュでも突っ込みな!」


 僕の額と鼻から大量の血が流れ出て、僕が動く度に幼児のクレヨ

ン落書きは幅を利かせ始めてる。

「おら! オメーにはティッシュなんぞ贅沢なんだよ! これでも

突っ込んで、と!」

 エー君の第一の子分のジー君が、僕の髪を掴んで鼻に何かをグイ

ッと押し込んだ。周りでヘラヘラしながら見ていた他のクラスメイ

ト達が一斉に吹き出した。

「ヘヘッ、いいぞジー!ハナチョーク決まったねっ!」

「キャハハハ、ヤダ~、キタナーイ!」


 今日もどんよりした曇りの日で、今にも雨が降り出しそうだ。朝だ

というのにまるで夕方のような感じすらする。教室のオートライトが

点いてるのはそのせいで、窓ガラスが鏡みたいになってる。僕は自分

の姿をそれに映してみた。ああ、みんなが笑うのも無理は無い。


 そこに映っているのは、小学五年生だというのに女子を含めてク

ラスで一番チビの、そのくせ体重だけはクラスで一番ある、髪の毛

の薄い、見るに耐えない物体だ。そんな物体が鼻から二本のチョー

クを出して、血まみれになりながらも薄笑いしてる。


(3)

「早く拭かせろ! センコウが来るとウルセーからよ」

 エー君がジー君に命令した。このエー君は、自分自ら手を出すコ

トは滅多に無い。何をやるにしても、自分は実行者の後ろで冷やや

かに笑って見ているのが常だ。自分がシティの政策ブレーンに関わ

ってるのが彼のご自慢で、何かというとすぐにそれを口にする。ひ

弱な彼が周りに子分をはべらして置くコトが出来るのも、彼の政治

的権力って奴のお蔭だ。


 僕が立ち上がって雑巾をとりに行こうとすると、ジー君が僕の足

にキックを入れた。

「オメーは雑巾を使うほど偉かーねーんだよ! おら、自分の服で

拭きな!」

 うずくまった僕の服をボタンごと引きちぎり床に叩きつけたジー

君は、興奮した目で僕を見てる。教室に彼のハァハァという激しい

息づかいが響いてる。ジー君、今朝、何か面白くない事でもあった

のかな? 大した事じゃ無ければいいんだけど。


 僕は自分のちぎれた服で床を拭き始める。四つん這いになって、

額から血と汗を流しながら…

 いくら拭いても次から次へと僕の汗と血が床を汚すので、いった

ん僕の体からの汚れを止めようと、僕は自分の体を服で拭った。そ

れから自分のカバンから絆創膏と包帯、それと塗り薬も取り出して

素早く処置をし、替えの服も着た。この間、僅か一分も経ってない

だろう。


「そんなこたー後にして早くやれ!」

 その間中もずっとジー君のキックが僕のわき腹やお尻に炸裂して

る。僕は出来るだけ素早く床を拭いた。今度は僕からの汚れは止ま

っているので、床はキレイになった。

「よし、いいだろ。今度は窓ガラスも処理させとけ」

 そう言うとエー君は自分の席に行き、座った。言われてみれば、

さっき僕が激突したガラス窓には、僕の顔がぼんやりプリントされ

てる。風船みたいな顔が汗と血で版画のように。

終わりまで毎日更新する予定でいます。この章はとりあえず42までの予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ