445日目 午後
説明会です。
アンと話をした後、研究室から階段を使い地上へ出た。
ここは、瀬戸内海に浮かぶ無人島で、最初にここを知った時には「来島」と呼ばれていた。
東広島、大崎上島町、呉よりボートにてアクセスが出来るが通常航路からは離れた島だ。
カメの甲羅に似ているので「カメ島」とかってに俺は改名している。
カメのように引きこもっている自分が住むにはお似合いだと思っている。
南西には砂浜が2面あり、島の北部には貯水棟とため池がある。
ガスはなし、電気は太陽光と発電機に頼る。
ここは、かつての雇い主。「先進理化学研究所」通称:理研のお偉いさん方が職員の福利厚生と予算消化の目的の為にバブル期に購入したものらしい。
各部屋に設置された檜風呂が一番の売りだ。買って保養施設を作ったまでは良かったのだが、バブルが崩壊。
折しも、税金の無駄遣いが世間でバッシングされていたこともあり、処分したくとも表に出せず、そのまま眠っていたのを俺が見つけた。
帳簿上は、次世代通信研究の為の大規模通信施設という事になっている。
その証拠として、保養所の隣には10mクラスの衛星自動追尾する機能を持つ鏡面修整カセグレン型アンテナが設置されている。
これも、どこだかの通信研究をしているグループがバブル期の予算に浮かれて購入したものの設置場所を決めずにアンテナが納品されたせいで、港の倉庫に放置されていたものだ。
5年前にあった、国の調査を前になんとか誤魔化そうとした結果、無駄なものをくっつけて、即席の施設としてでっちあげたらしい。
保養所のもとは娯楽室。先ほどまで俺がいた部屋は「主管制研究室」として壁1面の馬鹿でかいモニターと世界の放送局分のサブモニターを別に設置された。世界一豪華な衛星放送が見れる娯楽室となった訳だ。見る人間は1年前の俺がくるまで誰もいなかったが。
施設は島のほぼ中央にあるが、島を徒歩で1周するのに1時間程度なので四方に行くのに20分もかからない。
南は良質の磯場で、海藻も豊富だ。絶好の釣りポイントである。
昔は、映画や読書をして時間をつぶしていたが、最近のお気に入りは釣りだ。食糧の備蓄も無限ではないので食糧の節約にもなるしな。
餌となる、シマサエビやイシゴカイは風呂場を改造して、養殖しているので問題ないし、釣り具もここに来る前に、大量に購入してある。
この施設を拠点にするのに1年かかったが、今のところは極めて順調だ。
さて、今日は何が釣れるか。楽しみだ。