395日目
・開花から30日目
今日もいつもの時間に、軽く朝食を食べ管制室に入った。
空調とマシンの動作音だけが聞こえてくる、白一色の殺風景な部屋だ。
「鉢植えでもおいてみるかな。どう思う?」
誰もいない部屋でそう尋ねると、天井から若い女性の声で返答があった。
『室内の機材の故障につながる恐れがあります、ダミーの観葉植物をおすすめします。』
「ふむ。まぁシンプルなのが一番飽きがこないか」
メインの大型画面の前にある唯一の椅子に座りながら返事をする。
「アン、状況報告を頼む。開花は順調か?」
『はい、進捗は事前予測の98%です。順調に推移しています。』
椅子の脇に置いてある端末を操作し、画面にデータを表示する。
世界地図が映し出され、赤と青に色分けされている画面を見ながらいくつかの地域にさらに分割して表示する。
「ふむ、やはりアジア圏や南米は浸食が早いな、北米と欧州はまだ時間がかかるか・・・各国の反応はどうなった?」
『はい。インドは国境を封鎖、中国方面に軍を展開、種の侵入を排除しておりますが時間の問題かと。ロシア極東方面でも軍が展開していますが国境線の内側まで種に浸食されています。本格的な防衛線はもっと内陸西側を想定しているようです。今の防衛線はそれが構築されるまでの時間稼ぎかと思われます。積極的に軍事行動に出ているのはこの2国でその他各国政府は軒並み一般市民の出入国の禁止措置をとっています。』
「日本はどうだ?」
『すでに博多と大阪で開花が確認されました。国内の市民団体等の抗議によって組織的な排除封鎖行動が取れていません。羽田成田といった国際線は封鎖されました。東京への各所では検問と防疫体制が自衛隊と警察によってひかれています。』
「ほう、東京封鎖が思ったより早いな、さすが霞が関、保身だけは超一流だな。」
中央の画面の脇にいくつかある、小型画面では、各国のTV報道が流されている。
肌の色、言語は違えど、流される映像には共通点があった、人が人を襲うシーンが繰り返し流され、テロップで「!!」が付いた注意喚起とおぼしき
文章が目につく。
遠目に見ると暴動のように見えるが、よく見ると一方は腕がちぎれ、内臓が飛び出している尋常ではない人の形をした何かがまだ人である同朋を喰らっている。まぁ、簡単にいうとゾンビが人間を襲っている光景だ。
この現実を引き起こした張本人である自分でさえ、こうして見ても冗談にしか思えないのだから、画面の中で必死で抗っている人々にとっては悪夢だろう。
あんた達に恨みはない、ただ、俺という存在をこの世に生み出した神を恨むんだな。
でも心配するな、お前たちの滅び行く様はこの俺が最後まで責任をもって見届けてやる。




