第六話 生徒会②
少し短いです。
第六話 生徒会②
「「失礼します。」」
そう告げて一礼をし、生徒会室内へと入る。
生徒会室の中は普通の教室と同じか少し大きい程度ではあるが、これを六人前後で使うというのであれば十分大きいといえるであろう。
そしてその部屋の中には三人の人影があった。
「よく来たな。
もうすでに知っていると思うが、一応自己紹介をしておこう。
俺が生徒会会長の南原朱里だ。
高校三年のE組に所属している。
これからよろしく頼む。」
そう言った会長は百九十センチを超えるであろう身長にがっしりとした体つき。
低く、渋い声をした人物であった。
「私は書記と会計を担当している二年D組の井内亜里沙です。
これからよろしくお願いしますね。」
そういって、会長の右隣に座っていた、落ち着きのある雰囲気の女性が自己紹介をする。
「あたしは、桐山真琴。
高校三年よ。
特に役職とかはないけど、委員会のとりまとめなんかをやっているわ。
二人ともよろしくね。」
井内先輩と会長を挟んで逆側に座っていた髪を短く切りそろえた先輩がその次に自己紹介をする。
「私ももう一度自己紹介をしますか?」
「いえ、莉奈先輩は先ほど聞いたので別にいらないかと。」
「それもそうですね。」
ドアをしめた莉奈先輩がこちらに声をかけてきたのでそう対応する。
「では次は俺が。
高校一年A組の北神秋水です。
これから一年間よろしくお願いいたします。」
「僕は高校一年B組の西野秀樹です。
至らない点も多いかと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。」
先輩たちの挨拶が終わったので、俺たち二人も続けて自己紹介をする。
「まぁ、とりあえず、簡単な軽食も用意してあることだしそこに座ってよ。
といっても、私が用意したわけじゃないんだけどね。」
桐山先輩が俺たちに椅子に座るように勧める。
それと同時に莉奈先輩が、全員の前に三枚のパンで構成され、真ん中に串が一本刺さったサンドイッチと付け合わせと思われるポテトが乗った皿を置いていく。
進められるがままに椅子に座り、前に置かれたそのプレートを見る。
少し温かく、いいにおいを漂わせているその皿は、俺の食欲をわきたてるには十分な物であった。
プレートを眺めていると、莉奈先輩が、
「コーヒーと紅茶どちらがいいかしら。」
と聞いてきた。
「コーヒーを」
「では紅茶でお願いいたします。」
そのオーダーに答え、先輩は全員分のコーヒーと紅茶をいれはじめる。
先輩にやらせるのはどうなのだろうかと思った俺たちは代わろうかと聞いたが今日はまだお客様扱いなのか、大丈夫だと言われたのでおとなしく座っていることにしたが、おなかが減っている状況で、おいしそうな食事を前に待つのは少しつらかった。
やがて、全員分の飲み物がそろい、食事が始まった。
「このサンドイッチおいしいですね。
特に、ほんの少し聞いているマスタードなんかの加減が絶妙ですね。
いい味を出しています。」
「あらそう?
ありがと。」
先輩のお手製だというサンドイッチはマスタードがいい感じに聞き、とてもおいしかった。
しばらくゆっくりと食事を取り、その食事が終盤に近づいてきた頃、ついに会長が口を開いた。
内容は生徒会の簡単な仕事の説明である。
「この学園の生徒会の主な仕事は三つある。
部活関連と争いごとの裁定、そして行事関連だ。
まず、部活関連だが、これは予算の執行などが主な仕事だ。
次に争いごとの裁定だが、生徒同士のトラブルなどは生徒会でさばくことになっている。
そこまで件数が多いわけではないが、週に一度以上はあるのでこれを公平な立場でさばかなくてはならない。
一応過去の事例をまとめたデータがここにある。
今日でなくともいいが一度目を通しておくといいだろう。
最後に行事関連だが、これが主な仕事となる。
一番近いのはトーナメント戦だが、これはこちらで行うことになるから気にしなくてもいい。
が、次の五月にある体育祭はお前らにも仕事をしてもらうことになる。
これは委員と協力しながら行うが、生徒会が主導する事も多い。
これが年間スケジュール帳だ。
この他に仕事が入る場合もあるが基本はこれにそって仕事を行うことになる。
しっかりと頭に入れておくように。
とりあえず、説明はこんなもんだが、何か質問はあるか?」
「いえ、特にはありません。」
そう答えるものの、
「週に一度も生徒会に判断を問うような問題が起きるのか?
それって、そこまで多くないといえるのであろうか。」
などといったことが頭をよぎっていた。
「そうか、それならいい。
細かい仕事は二年の井内と藤堂の二人に聞け。」
「わかりました。よろしくお願いします。莉奈先輩、井内先輩。」
「よろしくお願いいたします。」
「まかせてください。では、秋水君のほうは私が教えますので、亜里沙は秀樹君の方をお願いできますか?」
「了解しました。
では、西野君こちらへ。」
「はい。」
「じゃあ、ここの設備の使い方について教えるね。
まずはこっちのパソコンからかな。」
「はい、お願いします。」
そういって、先輩は壁側のほうにあるパソコンの前に誘導してくる。
「これの使い方は、基本的にクラスにあるものと同じよ。
とりあえず、端末で登録をしてもらえるかしら。」
「分かりました。」
先輩の声に従って端末を取り出し、パソコンへの登録をした。
「それじゃあ、まずは、一応暗証番号を決めなくちゃいけないから打ち込んでおいてもらえるかしら。
パスワードは忘れないような、それでいて、ほかの人に見抜かれないような物がよいとされますので。
一応私は見ないでおきますね。」
そういって先輩は後ろを向く。
別に見られたところで対して問題はない気がしたが、特に何も言わず、暗証番号の打ち込みを済ませた。
「打ち込み終わりました。」
「そう、それじゃあ、一度開いてみて。
……。
ちゃんと開けるみたいね。
それならよかったわ。
基本的には普通のパソコンと機能は変わらないけど、まず最初に一つだけ注意してほしいことがあるの。」
一つだけとばかりに先輩は唇の前に指を一本立ててそう告げる。
「はい、何でしょう。」
「この端末からは生徒の個人情報などを引き出すことができるけれど、それを、他の人に教えたりするのはだめということよ。
これを破ると罰則があるから注意してね。」
「分かりました。」
「よろしい。
それじゃあ細かい操作を一応押しておくわね。
まず、これが、生徒会専用のネットワークで、基本的に作成したデータなんかは個々にためられていくは。
バックアップなんかも、ここに保存した時点でいくつかとられるから、失われる心配はゼロよ。
このデータは、生徒会とこの学校の先生以外は引き出せないようになっているけど、秋水君は生徒会委員なので自由に閲覧してもかまいません。
過去の行事についてのデータや映像なんかが納められているから、見てみると割と面白いと思うわ。」
そんな感じで、莉奈先輩にパソコンの細かい使い方を教えてもらい、その後も生徒会室にある設備の使い方や鍵についてなどを教えてもらった。
こうして、俺の生徒会に入って一日目の生徒会は終わりを迎えるのであった。
第六話 end