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第四話 高校一年A組

 第四話 高校一年A組



「ここだな。」


 そういって俺は、A組とかかれたクラスのドアの前に立つ。

 ここのドアは自動ドアとなっているため、特に手を使ってあける必要はない。

 こうして俺は教室の後ろのドアから教室内へと入っていった。

 前のモニターを見ると、席の順番が書いてある。

 ちなみにこのモニターなんだが、教壇に設置されているタッチパネルと連動しており、そこに書かれたものが後ろのモニターに映るようになっている。

 もちろん、データをそのまま映すことも可能で、最近では、黒板というものはほとんど見かけることはなくなり、殆どの学校で、このモニター式が用いられている。




 俺が席についてから大体五分ほど経ったであろうか、少し考え事をしていた俺の耳にドアの開閉音が入ってきた。


 コツコツコツ。


 ヒールの音が教室内に響き、教室内が静かになる。


「皆さん初めまして。

 とりあえず、入学、おめでとうございます。

 先ほどの入学式でも紹介されましたが、私はこのクラスの担任を務めさせていただきます、山田葵(やまだあおい)と申します。

 担当の教科は特別授業の中でも実技、それも、制御訓練のほうを担当させていただきますす。

 授業についての説明は、その最初の授業のときに行いますので、今は省略しますが、かなり厳しく教えていくのでそのつもりで。

 これから一年間、皆さんの担当となりますので、一年間よろしくお願いしますね。」


 簡単な自己紹介とともに、後ろのモニターにも、名前が漢字で映し出され、その他にも簡単なプロフィールが乗っている。


「これから皆さんはこの学園での高校生活を過ごすことになるわけですが、それはただ、遊びに来るだけというわけではありません。

 皆さんが持っている超能力という力は使い方を誤れば人を傷つける刃となるし、かといって、それを忌避するのは宝の持ち腐れといえるでしょうし、いざというときに使えず、逆に周りに被害を与えてしまうという事態は避けなくてはいけません。

 ですので、そのような事態を起こさないよう、しっかりとした訓練をすることが必要になるわけです。」


 山田先生はそういうと、教壇についていた端末を少し操作する。

 すると、机に備え付けられていたモニターが起動しはじめた。


「起動されていないという方はいらっしゃいますか?」


 そういって先生が周りを見渡す。


「いないようですので続けますね。

 今から、個人登録の確認をしてもらいます。

 事前に送られたメッセージに書かれたIDを打ち込んでホーム画面に移動してください。

 ホーム画面を出したら、画面右上のプロフィールの部分をタッチして開いてください。

 開けましたか?

 そこに電話番号や住所、名前などが載っていると思いますので、それらに誤りがないかどうかを確認してください。」


 先生の言葉に従い、皆がチェックし始める。

 俺も画面をチェックし、間違いがないことを確認する。

 数分が経過して、先生がまた全体に声をかける。


「大丈夫なようですね。

 それでは次に、自分の端末をそのホームページから登録してください。

 やり方がわからない方はいらっしゃいますか?」


 それについては誰も手を上げない。

 ところで、端末端末といっているが、これは、携帯とは別のもので、大きさは、縦が十五センチ程度、横が十センチ程度となっている

 この端末は現在、国民全員が少なくとも一台は持っているであろうもので、身分証や免許証などとしての利用や、鍵として、更には財布にもなるものである。

 財布というのは、中にデジタルマネーが入っているという意味で、決してその中からマジックのように札束が出てくるとかではない。

 ともあれ、その端末を用いて、学校でも管理などを行うので必須なのだ。

 この端末は、国から一人一人に支給されるため、子供から大人まで使い方は皆分かっているのだが、念のためということで確認したのであろう。

 ちなみに、少なくとも一台というのは何台かを持っている人もいるためだ。

 別に一台でも支障はないのだが、私用の物と仕事用の物などと用途別に分ける人もおおいのだそうだ。


「まぁ、さすがにいないですよね。

 皆さん登録が済みましたようなので、今から一通メッセージを送りますので、受け取れるかどうかを確認してください。」


 そういって、先生が端末を操作する。

 その数秒後に、俺の端末にはメッセージが届いた。


「届かなかった方はいらっしゃいますか?

 ……いませんね。

 それでは、今から何通かお知らせを送りますので少々お待ちください。」


 そういうと、もう一度教壇の端末を操作する。

 するとメッセージが送られたようで、いくつかのデータがこちらの端末に入ってきた。


「はい、それでは、説明していきますね。

 まず、一つ目のメッセージ、『年間予定表』とかかれた、データを開いてください。

 ここに書いてあるのが、今年一年間の予定表となっています。

 一年生は一番上ですね。

 それを見てください。」


 この予定表は、全学年分入っているようで、左端に上から、一年、二年、三年とかかれている。


「この表は重要ですので、後で必ず一度は目を通しておいてください。

 それでは、とりあえず、いくつかいっておきたいことがあるので聞いてください。

 まず一つ目ですが、四月三週目の金曜日のところです。

 ここに書いてあるトーナメント戦というのは現段階において、あなたたちが、どの程度能力を制御できているのかということを確かめる場となります。

 ルールなどは、今日はあまり時間がないので話せませんが、明日そのための時間がとってありますので、そのときに説明します。

 グループ決めなどもそのときにやりますので、そのつもりで。

 二つ目ですが、五月の半ば辺りにある、体育祭についてです。

 これも、詳しくは明日決めることになるのですが、どのクラスでも、委員などを選ばなくてはいけませんので、そちらのほうも考えておいてください。

 最後になりますが、八月にある全国大会ですね。

 これは、今年は福岡で行われますが、各校が威信をかけて戦う場となり、新人戦という形で、あなたたちも出場することとなります。

 ここでは、各校が今年入学した新人たちをどこまで育てることができたか、などといったことが試される場となりますので、内の学園でも気合を入れて取り組んでいます。

 選手の選定は夏までにある実技の成績で決まりますので、選ばれた場合はしっかりと我が校の代表としての誇りを持って、戦うようにということですね。

 まぁ、これはしばらく先になりますが頭の片隅にでも置いておいてください。」


 そういって、また、少し、先生は端末をいじる。


「それでは、二つ目です。

『面談申込書』というデータを開いてください。

 これは、希望する面談の日程について書く物で、全員必ず一度は受けるようにしてください。

 基本的には今月中が望ましいですが、間に合わない場合は五月でもかまいません。

 五月にしたい場合は後で相談に来てください。

 提出期限は、一週間後までですので、忘れないように。

 まぁ、提出していない場合は、画面を開いたときに表示が出るので大丈夫だとは思うんですけどね。」


 そんな話をいくつかして、先生の話は終わり、その後、外へと出ることになった。

 外の芝生の上で、全員で記念撮影をすることになったのだ。

 何人ものご両親たちが見守る中、クラス全体での記念撮影をした後で、一度教室へと戻り、解散となるのであった。

 さてと、とりあえずは、秀樹を探すとしますかね。




 ~side???~


「ここでいいのかしら。」


 私は前にも何度か訪れたことのあるこの学園の講堂の中に入り、他の人たちとともに二階席へと上る。

 仮にも息子の晴れ舞台なわけなんだから、来ないわけがないのにね、なんて思いつつ二階席の中でも、前のほうに座る。

 仮にも、主席なわけで、前で挨拶なんかするわけだから、しっかりと見ておかないといけませんから、母親としてね。

 もちろん録画体制もばっちりですよ。

 後々、もう一度見れるようにしておかないと。

 息子には行かないといった理由は行くといってしまうと緊張してしまいそうだという理由があるのですよ。

 決して他の理由はないんです。

 フフッ。




 さて、息子の挨拶の様子なんかもばっちり撮れたわけですし、これからどうしましょうか。

 あら、あれは……。


「こんにちは、秀樹さん、お久しぶりですね。」


 気配を消して後ろから話しかけると、少し驚いた様子を見せるも、こちらを振り向いて、挨拶を返してきた。


「おや、美雨さんでしたか、お久しぶりです。

 本日は来ていないと秋水から聞いていたのですが……。」

「いわないできたんですよ。

 行くというと緊張してしまうかもと思ったので。」

「あぁ、そうなんですか。」

「ええ、そうなんです。

 あの子のこと、どうかフォローしてあげてくださいね。

 あの子はどこか、危なっかしいので。」

「できる限りのフォローはするつもりですので、ご安心を。」

「そうですか、それではお願いしますね。」

「会っていかないんですか?」

「ええ、別にその必要はないでしょうから。

 それではまた是非家に遊びにいらしてくださいね。」

「機会があれば、是非行かせていただきたいと思います。

 それでは、また。」


 秀樹さんと別れの挨拶をして、私は帰路につきました。

 秀樹さんに頼んでおけば、あの子のことは心配ないでしょう。

 そんなことを考えながら。



 第四話 end

息子の入学式にすら行かないひどい母親ではないのですよ。

知らぬは息子ばかりなりってことですね。

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