第三話 名簿の前での談合
本日五話目です。
第三話 名簿の前での談合
入学式が終わり、俺は秀樹とともにクラス分けを見に行くこととなった。
どうでもいいのだが、このクラス分けの発表、普通に端末で配信すれば、コストも安く済むし、名簿の前で混みあったりしないのでそっちのほうがいいんじゃないかと個人的には思うのだが、その意見に対しては、前学園長がなぜか猛烈に反対したらしく、実現していない。
前学園長いわく、
「この名簿に関しては、全員名前が書かれた紙を友達などと一緒に見ることによってそれを一喜一憂するのが楽しいのだ。
自分の名前はどこにあるかな、などと一つ一つ探していくのがな。
その楽しみを奪うなどありえんぞ。
断じてわしは認めん。」
とのことらしい。
この意見によって今もこの方式は変わっていないのだそうだ。
おそらく、何らかの思い入れがあるのだろうと思う。
ともあれ、その学園長の一声で、いまだに紙で廊下の壁に張ってある名簿を見て、自分のクラスを把握するという方法をとっているのである。
そんなこんなで込み合っているあの集団の中に入りたくはない俺と秀樹は、少し離れた場所で集団を眺めつつ、話をしていた。
話題は、超能力を使ったことが察知できる機械を作れるかどうかということについてである。
「いや、だって、超能力者でもある程度使いこなせている人たちは、相手が使用したかどうかっていう事が分かるわけだろう。
だったら、おそらく何らかの物が出ているはずじゃないか。
それをうまく察知すればできると思うんだよ。」
「ですがその方法では、人ごみの中だと察知不能ですよ。
そもそも、いろいろと調べているのにもかかわらず、そういうものが出ていないことを考えるのであれば厳しいような気がしますね。
もちろん、炎の能力者なんかは熱量が上がるから察知できるなどといわれていますけど、身体強化の能力なんかは、自分の体の中だけで完結してしまっているわけですから、外部から調べるということは無理なように思えますね。」
「まぁ、確かにな。
それでできるのであれば、とっくに各国がそれをやっているはずだもんな。
逆に、何かしらの波動みたいのを流して、それが帰ってくるときの変わり方で調べるみたいなことはできないかな。
ほら、蝙蝠が超音波で周りを調べるのと同じような形を使ってみるとか。」
「やはり難しいとは思いますよ、なにせ、どんな波動ならば、超能力に反応するかということも分からないわけですからね。
しかも、その波動が一般人に悪影響を及ぼす可能性があるかもしれませんし。
それに、その波動によって能力を暴走させてしまうなんていうのはかなりありそうなことだとも思いますからね。」
「あぁ、それはそうだよなぁ。
う~ん、やっぱり難しいのかね~。」
「もし、本気で超能力というものを監視下に置こうというのであれば、それは超能力者全員を牢屋にでも入れておくしかないんじゃないでしょうかね。」
「う~ん、それじゃあ意味がないんだよな。」
そもそもなぜこんな話をしているのかというと、最近一部の人間が、超能力者は危険なのではないかという流れが出てきてしまっているせいである。
その人たちの主張では、超能力者は常に人を殺せる兵器を持ち歩いているようなものだ、いうなれば、常に拳銃を構えつつ歩いているようなものであり、人間兵器ともいえるような存在だ。
であるので、そいつらは、戦場へ放り込むとき以外は牢屋にでもぶち込んでおくべきだという主張である。
それをいうのであれば、一般人であろうとも、ナイフなんかを持ち歩けば、常に人を殺せる兵器になりそうに思えるものであるが、彼らに言わせるとそうではないらしいのだ。
まあ、おそらくは、得体の知れない力を持つ人々への恐怖と自分のもっていない力を持つものへの妬みが彼らの根本にはあるのであろう。
まぁ、今のところは、法律上守られているため、そこまで大きな問題になっていたりはしないのだが、もしこの主張にメディアが乗っかっていき、この主張を唱える人が多数派となってしまった場合のことを考えるとかなりまずいことになることが予想される。
つまり、その強力な能力を持って能力者が非能力者を虐げるか、数の暴力でもって非能力者が能力者を虐げるかのどちらかへと世界が変わっていってしまう可能性が非常に高いということである。
そのため、各国では、ある程度能力者たちを縛ることができないかを研究しているのだ。
これは、能力者たちをある程度抑制することができると示すことによって、一般民衆に対して安心であるということを示すという目的と、いざ、超能力者たちが反乱を起こした際の対処法を持っておきたいというお偉い方の意思がはたらいている。
あぁ、もちろん、戦争の際に、敵の超能力者を抑えられないかという意味での研究という面ももっている。
そうそう、ちなみに、すべて殺してしまわないのは、偏に超能力者は軍事使用を目的とした場合、かなり有能な兵士となるからである。
自国が能力者を迫害することによって、自国の能力者たちが外国へと逃げ出してしまうことになれば、その分だけその国は弱体化し、代わりに相手の国を強大化させてしまうという結果を招いてしまうのである。
つまり、現在の超能力者たちの地位というのは外国とのパワーバランスという不安定なものに乗っかっている危うい存在なのである。
仮に、あるひとつの国が強大化し、全世界を完全に影響下に入れるような事態に陥れば、超能力者たちは世界から必要とされなくなり、迫害されてしまうだろうし、仮に、世界の国々が結託して、超能力者たちを敵に回そうと考えれば、やはり超能力者たちは迫害されていく結果に陥ってしまうであろう。
もちろん、超能力者たちも黙ってこの状況を見ているわけではない。
このような不安定な立場から抜け出すためや、一般の民衆の超能力者廃絶の動きを少しでも削るために様々な研究を独自に行っている。
例えば、軍事利用以外での超能力の使用方法や、ある程度自分たちの力を制御できるということを示して、超能力者たちが危険な存在ではないということを証明しようといった動きなどがあげられる。
そして現在、このような超能力者たちの動きを取りまとめている、各国の超能力者たちが集まって成立した機関が日本名、超能力保護党通称PPPである。
これは英語名の頭文字をとっていったもので、基本的にはこの名前で呼ばれる。
PPPは、幾つかの国に支部があり、本部はアメリカで、、各支部では独自に研究を行っており(もちろん相互協力はするが)、その中で今現在PPPが最も力を入れているのが今話している、超能力者たちが能力を使ったことを機械などで監視、判別できないかということである。
この研究が成功すれば、超能力を悪用しようとしている人々も、うかつに街中で超能力を使用することができなくなり、結果として一般市民も、街中での超能力の使用ができないとわかれば、超能力者に対する恐怖が減ると考えられるからだ。
もちろん、これは、超能力者たちの自由を損なうことではあるものの、ある程度の制限が加わってしまうのは仕方のないことだというのがPPPの公式見解である。
そんな理由もあって、俺と秀樹は意見を戦わせていた。
俺たちが話し合ったところで何も生まれない確率が高いが、わずかでも可能性があるのならということで話し合っていたというわけだ。
そんなこんなで議論を続けていると、名簿の前がだいぶすいてきたようだ。
ほとんどの生徒たちはもうすでに自分の教室へと向かったようだ。
さてと、自分の教室を確認しておくとしますか。
「えっと、北神秋水は……あぁ、A組みたいだね。
俺はA組のようだが秀樹はどこだったんだ?」
「僕はB組のようですね。」
「残念、別のクラスか。」
「まあ、主席と副主席なわけですから、当然といえなくもないですね。」
「それもそうか、それじゃあな秀樹。」
「ええ、ではまた。」
こうして俺は秀樹と別れ、A組の教室へと入っていくのであった。
第三話 end
これを見てくださっている方に、何人前にかいていたほうの作品を読んでくださっていた方がいるのかは分かりませんがかなり、作品の内容をかなり変えたことが分かってもらえるかなと思います。
例として、もうひとつの方の同じところまでの分量を見てみると、
前作:4844字
今作:16663字
となっております。
なんと、同じところまでを書くのに四倍近く文字数を使っているということになっていますね。
結構頑張って書いたので前作よりもよくなったんじゃないかなと自分では思っていますがどうなんでしょうか。
もし、前作のほうも読んでくださった方で、この後書きを見てもらえたなら、
前作と比べてどうだったかなどといった感想を書いてくださるとありがたいです。
あっ、これを見てから前作へはできる限り行かないようにお願いします。
流れ的なものが多少似ているため、ネタばれのようにもなってしまいますし、正直、見るに絶えないレベルの作品な様な気がしますので。
ただ、この作品を見た感想などは大歓迎ですので、どしどし送ってください。
それでは、これからも貧しい脳みそではありますがフル活用して、できる限りよい作品を描いていこうと思っていますのでどうかよろしくお願いいたします。