第二話 入学式②
本日四本目です。
第二話 入学式②
秀樹と雑談をしつつ、時間をつぶしているとどうやらそろそろ開始されるようで、前方の壇上で、おそらく司会を務めるのであろうスーツを着た先生が、マイクの準備などを始めていた。
加えて、八人の先生方が、前方の壇上に用意されていた椅子に座っていく。
その先生方が座っていたほうとは反対側の壇上にもいくつか椅子が設置されている。
よくみると、壇の下のところにも椅子が四席ほど並べられていた。
ところでなのだが、この学園は毎年一学年の生徒の総数とクラス数が決まっていて、その人数は一クラスにつき二十四人×八クラスの総勢百九十二人となっている。
これは、この学園で行われる行事が影響しているのだ。
また、クラスごとの人数が少ないのは、担任の教師が一人一人にしっかりと注意を向けることができるようにという配慮からなるもので、割と昔から、といっても日本全土でこの方法を使用し始めたのは二十一世紀後半からであるが、からこのようなクラス編成が政府から推奨されている。
これにより、学力が昔に比べて向上するなど、様々な好影響を及ぼしたのだそうだ。
どういうことかというと、生徒の人数が少ないため、授業の担当教師が全体に目を配ることができ、その結果授業をサボる生徒が減少したり、時々、教師が生徒を指名して答えさせるという形が容易になったため、生徒たちが自主的に予習復習などを行うようになっていったのだ。
そんな理由があり、クラス人数はかなり少なめにされている。
そのことから考えるにおそらく、あそこの八つの席に座るのはこれから担任となる教師たちなんだろうななんてことを考えつつ、ふっと教師たちのほうへと目を向けてみる。
どの教師も黒いスーツを身にまとっており、きちんとした格好をしている。
ちなみに、男女比は五対三だ。
そういえばなのであるが、この学園では教師も大きく二つに分かれる。
通常授業担当と、特別授業担当の二つだ。
通常授業というのは、所謂、英語や数学なんかの授業のことである。
一方の特別授業というのは主に超能力についての授業であり、自らの能力の制御の練習や能力の強化など、様々なことが行われる。
もちろん、この学園で重視されているのは特別授業のほうであり、割合としてもかなり高めである。
その一方で通常授業をおろそかにするわけにはいかないため、この学園ではほかの学校と比べて授業数がかなり多くなってしまっている。
ちなみに、授業の時間は一単位五十分だ。
これは集中して授業を受けるためにはこの時間がベストだということらしい。
そのほかにも様々なことを考慮して、時間割を作っているらしく、パンフレットにも授業の時間割は、生徒たちがもっともその恩恵を受けやすいように組んであるというようなことが書かれていて、その点では、かなり自信を持っているようであった。
まぁ、ほかの高校もそういうことはやっているらしいのだけど。
そんなことはとりあえずどうでもいいからおいておこうと思い、俺は端末を開き、朝の通学時間中にも確認していたデータを開く。
そこには、細かい時間についてのデータに加えて、当日、俺が出なくてはいけない時間、通ってほしい場所、礼をする場所などが事細かに記されている。
また、ムービーもついており、その映像でも、当日の流れが説明されているなど、かなり分かりやすく書かれていた。
「おや、それは本日の予定ですか?」
「あぁ、前に送られてきていたんだ。
確認したのは昨日が初めてだったりもするんだけどな。」
「あぁ、そういえば、忘れていたんでしたね。
ですが、それがあるのに忘れるというのは正直どうかと思いますよ。」
「しょうがないだろ、引越しだったりなんだったりで忙しかったんだから。」
「まぁ、苦労するのは自分だけですのでかまわないと思いますよ。
当日にしっかりと間に合わせてくる限りは、ですが。」
「まあな。
当日まで出来上がっていないというのは全員に迷惑をかけることになるしな。
ところでなんだが、あっちの八人はおそらく担当の教師たちだと思うんだが、反対側の椅子は何なんだ?」
「おそらく上においてあるのは学園長などが座る椅子なんでしょうね。
下のほうの椅子は分かりませんが。」
「あぁ、なるほどな。」
学園長などのことをすっかり忘れていた俺はなるほどなと納得した。
俺が納得したのと同じ頃、下のほうに置かれていた椅子のほうにも人が座った。
俺たちと同じ制服を着ているので、間違いなくこの学園の先輩たちであろう。
それに、その中でも見知った人が二人いた。
一人目は、配られたパンフレットの表紙に載っていた男子生徒で確か、名前は南原朱里という名前だったはずだ。
この学園の現生徒会長らしく、パンフレットの中でも、その肩書きとともにメッセージが書かれていた。
もう一人は、今日の朝、校門を上から見ていた女子生徒だ。
あの位置関係からでは見えなかったので分からなかったが、見事なプロポーションであり、黒いストッキングに包まれた、長く細い両足を少し斜めにそろえて座っている。
「あぁ、あそこは生徒会の人たちが座る椅子でしたか。」
「そのようだな。
一番右側に座っているのは間違いなく、この学園の生徒会長だしな。」
「そうですね。
ほかの人たちも、生徒会のメンバーのようですね。
人数も各学年二人ずつの計四人ですから、間違いはないでしょう。」
「だな、そういえば……」
そう話を続けようとしたところで、司会の先生がマイクのテストを行い、会場が静かになったため、話を中断することにした。
学園長も席へとつき、周りを一度確かめた司会の先生が、全体へ声をかける。
「(トントン)
開式の言葉」
そういって、学園長が前に出てくる。
「これより、第三十回、国立東京中央学園入学式を始めます。」
「一同、礼。」
全員が頭を下げる。
「続きまして、国歌斉唱。
一同起立。」
“
(♪前奏♪)
君が代は
千代に八千代に
さざれ石の
いわおとなりて
こけのむすまで
”
「続きまして、学園長式辞」
「えぇ、皆様本日はお忙しい中この……」
ふむ、先生方の話が長いのはどこも同じなのかな。
校長だけでも長いのに他のお偉い方まであるとは。
全く肩が凝るではないか。
とはいえ、これに関しては慣例化してしまっているし、仮に短くしようとしてもできないって言う自情なんかもあるのかもしれないが。
「では、最後になりますが、この高校生活、学べることはたくさんあるはずです。
そのあふれんばかりの熱意と努力でもって自らの力をのばしていけることを心より願っています。
以上です。」
このような形で少しずつ入学式が進んでいく。
「続きまして、在校生による歓迎の言葉。
代表。
高校三年、生徒会長、南原朱里。」
司会の先生がそう呼ぶと、会長はゆっくりと立ち上がり、礼をしてから壇上へと向かい、話し始める。
「新入生の皆さん入学、誠におめでとうございます。
この学校は一般の学校に比べ実習の時間も長く、入学してしばらくはやりくりに四苦八苦されることも多々あるでしょう。
そのようなときはぜひ私たち上級生のことを頼り、相談にきてください。
私たちもみずからの全力を持って貴方方をサポートいたします。
この学校で学ぶことは貴方方の将来に必ずや役に立つことでしょう。
皆様がこの学校生活を楽しんでくれることを心より願います。」
生徒会長からの挨拶が終わる。
さて、この次が、新入生代表者の挨拶、つまり俺の出番となるわけだ。
がしかし、これはわりと緊張するなぁ。
こういう時はどうするといいんだっけか。
ええっと、確かみんなジャガイモと思えばいいんだっけか。
よし、やってみるとしよう。
「続きまして、新入生代表挨拶。本年度主席入学者、北神秋水」
ジャガイモ、ジャガイモ、ジャガイモ、ジャガ……あれはどちらかと言えばさつまいもか?
まぁ、どっちでもいいか。
おっ、そんなこと考えていると緊張がほぐれたぞ。
なるほど、確かに効果はあるわけだな。
まぁしっかりと書いてきたわけだし問題ないな。
よし、いくぞ。
「優しい春風に舞う桜の花とともに私たちは今日ここに入学することができました。
駅からの桜並木を見て、この高校に入学することができたという実感が漸く持てました。
そして、これからの高校生活。
今までとは違った新たな生活に対し、不安な気持ちとともに新たな挑戦に大してのうれしさで心を弾ませています。
高校生活の中では時に悩み、時にたち止まってしまうことがあるかもしれません。
そのようなときは自分たちで協力し合って乗り越えていきたい、そう思っています。
もし、私たちだけでは及ばないような事態になってしまったときは先輩方、先生方、保護者の皆様方、どうか力をお貸しください。
最後になりますが、皆様には暖かいご指導をよろしくお願いいたします。」
ふぅ、なんとかなったかな。
それにしても、やっぱり疲れたよ。
席に戻るとしますか。
席にもどると秀樹が声をかけてきた。
「お疲れ様です、秋水。」
「あぁ。
挨拶って割と緊張するんだな。」
「まぁ、慣れが必要ですからね、ああいうものは。」
「以上で入学式を終わります。
新入生が退場します。
皆様、拍手でお送りください。」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
司会のアナウンスに従い、講堂から外へと出る。
「さて、これからどうするんだっけ?」
「クラス分けを見に行くんだと思いますよ。」
「なるほど。
よし、それじゃあ行くとするか。」
そういって、ほかの生徒たちの流れに乗って教室のあるほうへと向かう。
こうして、高校の入学式は何事もなく終わったのであった。
第二話 end
入学式はこれで終わりですね。
本当の挨拶だと、平成○○年とか言う気がしたのですが、ここで、その平成という部分を変えるのはさすがに不謹慎なのでこういう形をとらせてもらいました。