第十四話 トーナメント戦三日目
本日三話目の投稿です。
第十四話 トーナメント戦三日目
さて、本日はトーナメント戦の三日目である。
明日、決勝ではあるがとりあえずは目の前の二戦だ。
気を緩めずに頑張っていこう。
そんなことを考えながら家をでた。
「あっ、会長。
お久しぶりです。」
朝、学校へ向かう途中駅で会長を見つけ、声をかけた。
「ん?
あぁ、秋水か。
久しぶりだな。」
「はい、入学式の次の日以来ですので。」
「そうか。
集まりについては聞いているな。」
「はい、秀樹と、莉奈先輩から教えていただきました。
そういえば、会長は最終日に試合にでられるんですよね?」
「あぁ、そうだ。
藤堂に聞いたのか?」
「はい。
『会長はこの学校で一番強いから敵わないわ』といってましたよ。」
「そうか。」
「ちなみになんですけど、莉奈先輩の能力って身体強化系なんですよね?」
「そうだが?」
それがどうしたのかと言外に問いかけられる。
なので、俺は少し疑問に思っていたことを聞いてみた。
「いえ、初登校の日に勧誘を受けたのですが、そのときに、全く気付かれずに後ろにつかれたものですから、もしかしたらテレポートでも使えるのかと思ったのですが。」
会長は少し考えた後、
「いや、それはないだろう。
昨年の入試結果や、戦闘の様子などを見るに身体強化系の何かであるはずだ。
現に、瞬間移動を使ったところは見たことがないしな。」
「そうですか。」
「まぁ、あいつは隠密もかなりのものだ。
単に気付かなかっただけと言う可能性が一番高いであろうな。
俺も能力を使わなければ間違いなくきずけないだろう。」
「やっぱり、そうですか。
俺もまだまだっていうことですかね。
結構そっち関連は自信もあったんですけど。」
「まぁ、まだ、高校生だ。
多少気が抜けて気付かない場合と言うのもあるだろう。
今から鍛錬を積めばまだ成長の余地は残っているだろう。」
「はい、ありがとうございます。」
「まぁ、まずは今回のトーナメント戦だな。
お前なら気を抜かねば大丈夫であろうが、油断をしないよう頑張れ。」
「はい。
会長も最終日の模擬戦頑張ってください。
すばらしい勝負を期待しています。」
「おう。」
こんな話をしながら、学校へと登校していくのであった。
「……本日は三日目となります。
現在まで勝ち残っている二組は疲労が残っているかもしれませんが、集中をきらず、全力を出し切ってください。
応援しています。
また、今回は敗退してしまった方も、現在残っているチームをしっかりと観戦して、これからに活かしてください。
以上です。」
先生からの応援をいただき、その後、会場への移動となった。
移動の最中、二人が話しかけてくる。
「準々決勝頑張りましょうね。
私も精一杯頑張ります。」
「そうね。
あたしが見るに、今日からの相手はなかなか強かったし、いい勝負になるんじゃないかな。」
「そうだな。
前回までとは、レベルが違うだろう。
今回は俺も動くとするか。」
「そういえば、前回まで全く出番ありませんでしたしね。」
「そういえばそうね~。」
「こういう男の人をなんと言うんでしたっけ。
え~と……ひも?だったかな。」
「それはなんか違うんじゃないかな……。」
「ひも……。」
澪の言葉に少しショックを受ける。
「あぁぁ、ごめんなさい。
秋水くんはひもじゃないですよ。
少なくとも私たちは分かっています。」
こちらがショックを受けていることに気付いたのかフォローを入れてくる。
「大丈夫だよ、端から見ればそう見えるって言うのは分からなくもないし……ぐすん。」
ちょっといじけてみせると、かなり慌てている。
かわいいのう。
しばらくすると遊ばれたことに気付いたのか、咎めるような視線を向けてくる。
「ひどいです。」
「ごめんごめん。
ちょっと可愛かったものだから、つい。」
「えっ!!」
「まぁまぁ、おあいこってことでいいんじゃない。」
輝美が仲裁する。
澪は少しほほが赤い。
照れてるのかな?
「じゃあここで。」
更衣室の前で分かれ、着替えることにしたのであった。
「よし、みんないいか。
今回を含めて、あと三回勝てば優勝だ。
だが、ここで気を抜けばすぐにでも負けてしまうだろう。
絶対に気を抜くな。」
「「はい。」」
「では、いくぞ、ファイトー「「オー!!」」」
「では、第一試合に出場する選手は所定の位置に着いてください。」
アナウンスが流れる。
こうして俺たちはトーナメント戦の第四戦目、準々決勝に挑むのであった。
「では、試合を開始します。
始め!!」
アナウンスとともに試合が始まる。
今回の敵はD組のグループである。
「いきます。」
輝美が先陣を切って飛び出し、その後を澪が追う。
さて、俺は建物の上から狙いますかね。
建物の上に飛び乗り、建物から建物へ飛び移る。
気配を探り、それが全員分あることを確かめ、そちらへ向かう。
下を見ると、ちょうど戦っているようであった。
三対二ではあるがほとんど互角に戦っている。
が、少しおされているようである。
周りを警戒していないように見えるのは、経験の少なさなのか、余裕がないのか、それとも、前の三戦で一度も戦闘をしていないせいで忘れ去られているのか。
「できれば最後の選択肢ではないでほしいな。」
そんなことをつぶやきつつ奇襲の準備をする。
どういう理由にしろ、せっかく奇襲をかけられるんだから、利用しない手はない。
建物の屋上から飛び降りると同時に蹴りを放つ。
対象の死角から飛んだので気付かれてはいない。
その勢いのまま突っ込み飛び蹴りを放つ。
見事にクリーンヒットしたのかうごかない。
一人を戦闘不能にできたようである。
他二人も一対一になったからか敵の攻撃をきっちりとさばいている。
そして、そのまま、俺たちの勝利となったのであった。
「あれ〜、おかしいな。
なんというか、やっぱりあっさりと勝利しちゃったよ。」
「まぁ、今回は、相手が完全に油断してたんだろうね。
全く秋水に気付いてなかったしね。」
「存在を忘れられてたんでしょうね。
前の三試合何もしていませんでしたから。」
「まぁ、次からはそういうこともないだろうし、なかなかいい勝負になるんじゃないかな。」
「まぁ、そうかな。」
昼食を食べながらそんな話をする。
あまり、試合数も多くないため、昼食の時間などは長い。
ゆっくりと食事をとりながら会話を嗜む。
「そういえば、最終日に、会長と副会長が試合をするって知ってる?」
「えっ、そうなの?」
「毎年恒例らしいよ。」
「私は知りませんでした。」
「あたしも知らなかったな。
会長ってあのパンフレットの人だよね。
ってことは火の能力な訳か。
副会長はどんな能力なの?」
「身体能力を強化する系統の能力みたいだよ。」
「どっちが勝つんでしょうか。」
「あたし的には、会長が有利だと思うけど。」
「どうしてですか?」
「身体強化系ってことは基本近距離になるわけだからね。
何でもありならともかく、試合だったらなかなか近づけないだろうし、近距離が遠距離に勝つにはある程度力の差があるか、奇襲攻撃ぐらいしかないしね。」
「そうなんですか。
そういえば、私の訓練のときもなかなか近づけませんでしたしね。」
「そうそう、そういうことよ。」
「まぁ、どちらにしろかなり高度な試合になるだろうからしっかりと見ておかないとな。」
そんな話をしながら、昼食の時間を過ごしていくのであった。
「よし、みんないいか。
次は準決勝だ。
今回を含めて、あと二回勝てば優勝だ。
優勝に手が届きそうな位置ではあるがここで油断したら足下をすくわれるだろう。
心してかかれ、いいな。」
「「はい。」」
「では、いくぞ、ファイトー「「オー!!」」」
「では、第一試合に出場する選手は所定の位置に着いてください。」
アナウンスが流れる。
こうして俺たちはトーナメント戦の第五戦目、準決勝に挑むのであった。
「では、試合を開始します。
始め!!」
アナウンスとともに試合が始まる。
今回の敵はF組のグループである。
さっきと同じように、二人は突撃、俺は上からである。
先制攻撃は俺だ。
水球を五つほど並べ、一気にうちだす。
『二人とも下がって』
『『了解。』』
テレパシーを用いて会話をする。
常につないでいれば、相手に作戦を知られることはない。
一方の相手も風で張った防壁で氷弾を防いでいる。
事前の調査では風の能力が二人とサイコキネシスの使い手が一人と言うことが分かっている。
相手も風弾を撃ってくるが、これは輝美が無効化する。
若干戦況が膠着し始め、輝美が提案する。
『あたしが突っ込むから援護して。』
『分かった。』
『私が合図を出します。
三・二・一・突撃!!』
澪の合図とともに突撃を開始する。
俺は、輝美の周りに水球を浮かせ、援護の準備をする。
その少し後を、澪が攻める。
こちらにも援護の水球をつけるが、持ち込み数に制限がかかったため数が心もとない。
少しずつ大気中の水分なんかを集めつつ援護の準備をする。
なかなか集中力を要する作業だ。
相手側も固まっていたのが散開し、風の二人が一気に輝美へ攻撃を行う。
「よっと。」
それを水の壁でうまく受け流すようにコントロールする。
そして、片方に接近するが、
「うわっ!!」
サイコキネシスで吹き飛ばされる。
その着地の瞬間を狙って風弾を打ち込むようだ。
『足場を作るからそれを使え。』
『了解。』
落ちる途中で氷壁を張り、足場とさせる。
踏み出すときに、なかなか力がかかる。
距離が遠いこともあってなかなかつらい。
それと同時に澪がサイコキネシスを使った方に向かっていく。
それに対して相手方も手を向け、はじき飛ばそうとするが、
『こちらで集中を崩す。
そのまま突っ込め。』
『分かりました。』
水弾の遠隔操作で、一気に攻撃を加える。
相手はそれをかわすのに精一杯で、うまく攻撃を行えないようだ。
しかし、相手側も風使いの片方がこちらに攻めてくる。
風の刃みたいなものでの攻撃のようだが、
「甘いな。」
難なくかわし、先に仕掛けておいた罠を発動させる。
地中の水を表面に持ち上げ、それを凍らせたのだ。
足場が聞かなくなった相手を氷弾で倒し、他の二人の援護に集中する。
一人倒したことによる数的優位でなんとか勝てそうだ。
結局、俺の援護もあり、勝利を収めたのであった。
「お疲れさま。
なんとか決勝に進めたね。」
「そうね。
結構苦戦したけどなかなかいい感じだったんじゃない。」
「はい。
あとは、この試合を観戦しておきましょう。」
「そうだな。
まぁ後は決勝だけだし、今日は帰ったらしっかり体を休めないとな。」
そんな話をしながら、試合観戦をしていると、勝敗がついた。
やはり、勝者は秀樹のチームだった。
秀樹と戦うのはかなり久しぶりなので楽しみである。
ぜひとも勝ちたいものだな。
その後は相手チームの分析などをしつつ、家へと帰るのであった。
第十一話 end