表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/29

第九話 訓練初日

一話目が短かったので今回は長めです。

 第九話 訓練初日


 生徒会での用事を済ませた俺は、少し急ぎ足で第三アリーナへと向かっていった。

 別にかまわないと二人は言ってくれたが、さすがにあまり待たせるのはよくないだろう。

 そう思いアリーナに向かうと、二人のほかにも何人かの生徒たちが訓練をしていた。

 指先に小さな炎をともしてそれを操作するという有名な細かい操作技術を上げる練習を行っているものや、これまた操作技術を上げることで有名な、サイコキネシスを用いて自分の体を空中で維持する訓練など、それぞれが、様々な訓練をしている中で、とても目立っている二人組があった。


「フハハハハ。

 ほらほら、また、足下がお留守だぞ。

 しっかりと打ちかかってくるがいいわ。」


 やべぇ、すごい悪役っぽいのが一人いるぞ。

 はたから見れば、ショートカットの子が、ポニーテールの子をいじめているようにしか見えない。

 そんな状況の中、持っていた件で頭をツンツンと叩かれていた少女は(おそらく足払いで転ばされたのだろう)座っていた状態から立ち上がって、


「分かりました。

 やー!!」


 そう言ってもう一度打ちかかっている。

 あぁ、ちなみに二人っていうのは藤井さんと杉下さんだ。

 どうやら二人で模擬戦をやっているようである。

 そして、ただ模擬戦をやっているだけで、能力すら使っていないというのに何で目立っているのかというと、そのレベルの高さゆえである。

 戦闘能力がほとんどないと言っていたが杉下さんはかなりいい動きをしており、速さでいえば、その辺の上級車と互角レベルといえるであろう。

 まぁ、動きかまだまだ直線的なので、本当に勝負をする場合はかなわないであろうが。

 そして、藤井さんのほうも完全にそれをいなしているあたりさすがと言ったところか。

 ただ、いなした後の反撃がなかなかえげつない。

 少なくとも、素人を相手に行うレベルではない。

 二人ともなかなかの身体能力だな......というか杉下さんは本当に初心者なのか?

 そんなことを考えながらしばらく観察していると、杉下さんの木剣を藤井さんがはじき飛ばした。


「杉下さんは戦闘能力はほとんどないと言っていたわりになかなかセンスはあるみたいだね。

 まぁ、それをいなしている藤井さんはさすがだけど。」


 剣を弾き飛ばして、いったん終わりとなったタイミングで二人に話しかける。

 すると、


「いや〜、あたしはまだまだだよ。

 それより澪はすごいよ。

 今日初めて剣を持ったらしいのに、ここまでできるようになったんだから。

 才能あるんじゃないかな?」

「いえっ、全然そんなことないですよ。

 輝美ちゃんはさすがです。

 全力でいったのにそれを簡単にいなすなんて。

 実力差を感じます。」


 少しだけ息を切らせた杉下さんがそう答える。

 あのレベルで動いて少しだけしか息が切れないのであれば、上出来と言っていいと思うのだが。


「そりゃ、あたしは年期が違うわけだしね。

 初心者をいなせないようじゃ失格だよ。」

「まぁ、しばらく訓練すれば杉下さんもかなりものになるんじゃないかな。

 あっ、あとこれどうぞ。

 運動した後は水分補給が大事だしね。」


 そういって俺は二人にさっき買ってきた冷たいスポーツドリンクを差し出す。


「おっ、気が利くじゃん。」

「あ、ありがとうございます。」


 二人が水分補給を終えたところで、


「じゃあ、今日はどうする?」

「う〜ん、そうだね〜。

 澪のレベルは分かったことだし、あたしとしてはもう一人のチームメイトとの模擬戦がしてみたいかな。」


 ふむ、つまり俺との模擬戦か。


「私も二人の戦闘を見てみたいです。」

「そうか。

 ではやってみるとするか。

 まずは能力の使用はなしということでいいかな。

 体を暖めたいし。」

「了解。

 ではいきますか。」

「私はここで見ていますね。」


 立てかけてあった木剣を手にとり、構える。


「そちらからどうぞ。

 本当は、あまり女性に対して剣を向けたくはないんですけど、戦場じゃそもいきませんしね。」


 まぁ、姉さんとはよく模擬戦闘もしていたしね。


「ではおかまいなく。」


 そういうと藤井さんは一気に突っ込んできた。

 なかなかの速さではあるが、全力ではないのであろう、まだ余裕のある顔である。

 顔のあたりに向かって鋭い突きが放たれる。

 首をひねってかわし、、下段への回し蹴りを放つが、宙返りでかわされ、そのまま距離が開く。


「なかなかの速さじゃないか。

 少しびっくりしたぞ。

 それにずいぶんと身軽なんだな。」

「まぁ、そんなに力が強いわけじゃないから、ある程度素早く動けないと行けないしねっ!!」


 その言葉と同時に勢いよく突っ込んでくる。

 それに対し俺は、居合いの要領で、タイミングを合わせてカウンターを狙う。

 それを、剣で受け、その反動でふわっと浮き上がりそこから、蹴りで首を狙ってくる。

 横に転がり、蹴りをよけ着地の瞬間を狙って剣を振るが、やはりガードされる。

 そんな感じでしばらく戦闘を行い、体が暖まってきたところで、


「それじゃあ、そろそろ能力の使用ありということにしますか。」

「オッケー。」


 そういうと、彼女は全身に風をまとわせて、二、三回軽くジャンプをする。

 ほとんど膝を曲げていないにもかかわらず身長の倍ぐらいの高さまでピョンピョンと跳び上がる。

 風を操る人が行う準備運動のうちの一つだ。

 その間にこちらも準備をしておく。

 そうして、一分程度がすぎたであろうか。


「それじゃあ、あたしから行くよー。」


 そう言って剣を構える。

 俺の準備も整ったところで彼女は剣で切り掛かると同時に風弾を撃ってきた。




 〜side澪〜


 クラスでの自己紹介の後、実習のグループを組むことになりました。

 メンバーは主席の北神秋水くんと、ショートカットで活発そうな女の子の藤井輝美さんです。

 メンバー同士で自己紹介をした後、私と藤井さんは訓練場に行くことに、北神くんは生徒会室に行くことになりました。

 訓練場までの道すがら、藤井さんが私に質問してきます。


「戦闘能力はほとんどないって言ってたけど武術とかもいっさいやってないの?」

「はい。

 そういうのはあまり......。」


 お兄ちゃんはおじいちゃんに武術を習っているんですけど、私は全くやっていないんですよね。

 精々一緒に走り回ったぐらいですし、それもお兄ちゃんには全然かなわなかったですし。


「そっか〜。

 まぁ、とりあえず向こうに着いたら基礎だけでも教えとこっか。」

「はい、お願いします。

 できるだけ足手まといになりたくはありませんから。

 ところで藤井さんは武術とかを習っていたのですか?」

「まぁね。

 一応子供の頃からずっとやっているわ。

 あと輝美でいいわよ。

 あたしも、澪って呼ぶから。

 チームメイトな訳だしね。」


 そんな会話をしていると更衣室につきました。

 実習用の服は学校から支給されたもので、軍隊が使っている一級品には及ばないものの、軽く、高い防御力があります。

 近接戦闘が得意だと言っていた輝美ちゃんは腕や足にサポーターみたいなものをセットしていますね。


「さて、行くとしますか。」

「はい。」


 第三アリーナで訓練を開始する。


「さて、まずは体を温めるために周りを走るわよ。とりあえず5週ね。」

「はい。」


 大体、一周二百mぐらいだから、一キロですか。

 輝美ちゃんの後ろについて、アリーナの中でウォーミングアップを行います。

 ゆっくり走ったので大体十分ぐらいでしょうか。

 トラックを五周走り終わりるとすぐに、


「よし、それじゃあ、次は十周を十分で行くわよ。」

「はい。」


 さっきの倍で走るみたいです。

 訓練はこれが本番ではないでしょうけど、これぐらいだったら私にも何とかなりそうですね。

 さっきと同じように後ろについて十周走ります。

 十周走り終わると輝美ちゃんが少し驚いているみたいです。


「輝美ちゃん、どうしたんですか?」

「いや、運動は全然って言ってたからついて来れないかなと思ってたから少し驚いていただけよ。」

「さすがにバカにし過ぎですよ。

 ウォーミングアップでついていけないほど運動音痴ではないつもりですから。」


 本当にバカにし過ぎですよ。

 これでも百メートルを七秒ぐらいでは走れますし、千メートルも二分ぐらいでは走れるんですから。


「そ、そうなんだ。本当に運動とか何もやってなかったんだよね?」

「はい。

 なので、訓練についていけるかは分かりませんけど、よろしくお願いしますね。」


 そういって頭を下げる。

 ただ走り回るっていうのは運動じゃない気がしますからね。

 もし、それを運動と言ってしまいますと、通学中に歩くのも運動みたいになってしまいますから。

 その後、頭を上げると、輝美ちゃんは何かぶつぶつとしゃべっている。

 よく聞こえなかったけどなんと言っていたのでしょうか。


「まぁ、とりあえずおいておくとして、まずは実際に模擬戦をしてみましょう。

 こっちからは攻撃しないから実際にうってみて。

 悪いところがあったら指摘していくから。」

「分かりました。

 では、杉下澪、まいります。」


 そう声をかけて全力で向かっていく。

 実際の型だったりとかはしらないけど、剣を持ったときに何となく頭に浮かんだ通りに体を動かす。

 剣を一気に相手の喉元あたりをめがけて突き出します。

 お兄ちゃんの型を思い出してうってみたんですけど、やっぱり通用しなかったみたいで軽くよけられてしまった。

 その後もしばらく打ち込んでいったのだけれど、全て軽くかわされてしまった。

 そして、


「じゃあ、今から私も反撃するから気をつけてね。」


 と言われた。

 反撃すると言われてもかわし方や防御の仕方など知らない私は、攻撃こそ最大の防御とばかりに打ち込んでいったが、


「足下がお留守だよ!!」

「相手の動きをよく見ないから簡単にカウンターの流れに持っていかれるんだよ!!」

「攻撃が直線的で単純すぎるよ!!」


 などと、アドバイスとともに攻撃を仕掛けてきて、かわすのに手一杯でした。

 その後、しばらくすると剣をはじかれ、北神くんが来たこともあって訓練は終了となりました。


「杉下さんは戦闘能力はほとんどないと言っていたわりになかなかセンスはあるみたいだね。

 まぁ、それをいなしている藤井さんはさすがだけど。」


 と北神くんがほめてくれますけど、輝美ちゃんとの実力差を見ると、素直に喜べません。


「いや〜、あたしはまだまだだよ。

 それより澪はすごいよ。

 今日初めて剣を持ったらしいのに、ここまでできるようになったんだから。

 才能あるんじゃないかな?」


 それに乗じて輝美ちゃんもほめてくれますが個人的には全然まだまだだと思うのです。

 ですけどここで謙遜しすぎると、教えてくれた輝美ちゃんへの嫌みみたいになってしまうので輝美ちゃんをほめる方向にしておきましょう。

 そして、北神君が持ってきてくれたスポーツドリンクでのどを潤していると二人が模擬戦をやるという話になっていました。


「私はここで見ていますね。」


 実力者同士の試合を見るのは自らの上達への近道だっておじいちゃんも言っていましたからね。

 そういえば、最近会いにいってないな〜。

 今年の夏にでも会いに行ってみましょうか。

 そんなことを考えていると、二人の戦闘が始まったようです。

 まずは輝美ちゃんから仕掛けるようで、首元への突きを放っていきました。

 なるほど、実際に見本を見せてくれるつもりなのですね。

 技は教わるものではなく盗むものだっておじいちゃんも言ってましたからね。

 その後も先ほどの私との模擬戦とは比べ物にならないほどのキレで北神くんにうちかかっています。

 でも北神さんは、それをすべてかわしたりガードしています。

 さすが主席と言ったところでしょうか。

 先ほどもドリンクを持ってきてくださるなど気も利きますしね。

 しばらく打ち合っていると二人が何やら話しています。


「それじゃあ、そろそろ能力の使用ありということにしますか。」

「オッケー。

 それじゃあ、あたしから行くよー。」


 能力の使用を始めるということのようですね。

 その言葉と同時に輝美ちゃんが風をまとい、切り掛かると同時に風弾を手から打ち出しました。



 第九話 end

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ