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閑話 弟からのプレゼント

現在から少し前の出来事です。

少し短いです。

 閑話 弟からのプレゼント

 ~side茜~



「フンフフンフフ~ン♪」


 う~ん、いったいどうしたのでしょう?

 隣を歩く霧華のほうを見ながら私は思案していました。

 現在の時刻は昼の十二時。

 朝早くから生徒会の仕事をしていて、今さっきそれが終わったところです。

 この後は、今働いている喫茶店を手伝ってくれるということで、一緒にうちの喫茶店へと向かうことになっています。

 霧華は今朝からやけに上機嫌で、ずっと笑顔だったんですよね。

「私は今とても気分がいいんです。」と周りにずっと訴えかけている感じというんでしょうか。

 生徒会の仕事をしている時もずっと上機嫌で「夏休みなのに仕事なんて。」って嘆いていた昨日とはえらい違いですね。

 もう少しで、全国大会が始まるので、生徒会のほうでも生徒会長ともなると、いろいろと打ち合わせがあるので仕事がたくさんあるわけで、「生徒会長なんてやらなければいっしょに行けたのに~。」とかずっと言ってましたからね。

 そうそう、今日は八月の四日。

 ちょうど霧華の誕生日が昨日の八月三日でしたね。

 もしかしたらそのあたりに理由があるかもなぁ、なんて思いつつ、駅までの道の途中にある職場を目指して歩き続けます。

 さんさんと太陽の光が降り注ぎ、気温もかなり上がっていて外を少し歩くだけでも汗をかいてしまいますね。

 もっとも私たちは霧華の能力のおかげで汗のほうは別にそんなに気にはなっていないのですけど。

 とはいえ、実際に熱いことには変わりなく、そんななかを夏服で涼しい素材とは言え、制服で歩くのはあんまりしたいことではありませんね。

 とはいえ、昨日はあんなにぼやいていたのに今日はすごく上機嫌でした。

 今日の仕事の間もずっと微笑んでいたので、今日書類を届けてくれた男子生徒なんかも顔を真っ赤にして照れていましたしね。

 ただ、霧華はそれにも気付かない様子でずっとニコニコと笑っていたんですよ。

 正直、大丈夫なのかな?なんて思ってたんだけど。

 そんなに家の喫茶店の手伝いがしたいのかしら?

 ちなみに、霧華とは中学校からの付き合いで、そのころから何でも出来てしまう人気者でそこまで仲がいいっていうわけでもなかったけど、中学一年生の終りに同じ超能力者だってことでいろいろと話すようになってそのまま仲良くなっていったのよね。

 実際に付き合ってみると、少し抜けている面白い子だったわけだし。

 ともあれ、考えてみても分からないので実際に聞いてみることにしましょうか。


「ねぇ、霧華。」

「ん?

 なぁに~?」

「どうして今日は一日中嬉しそうなの?」


 そう聞いてみると霧華はとても嬉しそうな顔を一瞬して、すぐにその笑みを消し去り、私に問いかけました。


「えっ、聞きたい聞きたい?」


「私これについて話したいの~。」と、ぱっと見でわかるような表情をしながら聞いてきます。

 その間もやはり嬉しそうで、笑みがこぼれています。

「いや、別に。」と答えたいところですけど、話したそうですし、話を聞いてあげることにしましょうか。


「う~ん、もしかして、うちの喫茶店の手伝いをそんなにしたいの?」

「ちがうんだな~。

 ちょっと惜しい感じもするけど違うのよ~。」


 そういって少しじらしてきます。

 もしこれが、霧華でなくほかの人だったらもういいと言ってしまうところですけど、ここは友人の誼ということで聞いてあげることにしましょう。


「それじゃあ、どうしてそんなに嬉しそうなの?」

「ふふふっ、それはね~。」


 そういって、霧華はカバンの中からあるものを取り出しました。




「いらっしゃいませ~。」


 うちのカフェ(名前はLilium maculatumといって、略称でリリーと呼ばれています)からそんな華やかな声が聞こえてきます。

 学園から程近いということもあって、昼の間はもともとかなりにぎわっていたカフェでした。

 とはいえ、そこまでの人数というわけではなかったのですけれど、今日はお客さんもなぜか、いつもの三倍増し近い人数がおとづれていますね。

 いえ、まぁなぜかということもないんですけど。

 原因は分かるとは思いますが霧華ですね。

 とてもノリノリで、ピンクのエプロンをつけながら接客をし、手早く料理を作っています。

 特に客引きなんかをしたわけでもないのにお客さんがとても多いのはなぜなのでしょうか。

 しかも、今日は夏休みで、学生も殆どいないというのにこの人の多さです。

 実際に見ても、今来ている年齢層は、学生というよりももう少し上の世代が中心ですね。

 なぜ霧華がやるだけでここまで客の量が増えるのかを疑問に思いつつもメニューを取っていきます。

 いつもどんなに人が来てもあわてず、しかしきっちりとまわしているマスターも心なしか少しあわてているように見えます。

 あの人を慌てさせるとは、さすがとしか言いようがないですね。

 仮に私とマスターの二人だけのときにこの量のお客さんが入ったとしたらかなり危機的状況だったような気がしますけど、霧華が人一倍働いてくれているおかげで何とかまわせている状況です。

 こんなに忙しいのに霧華はとても楽しそうに仕事をしています。

 そうそう、さっきの霧華が今日一日中上機嫌だった理由なんだけど、どうやら、霧華が弟に誕生日プレゼントとしてエプロンを貰ったっていう理由らしいわ。

 霧華は七つ年下の弟くんをとても可愛がっていて、その弟がプレゼントをくれたということで喜んでいたようです。

 弟くんのほうもとても懐いているようですしね。

 まさに相思相愛(?)といったところなのでしょうかね。

 そんなことを思いつつ、楽しそうに働いている霧華のほうを眺めます。


「使おうかどうか迷ったんだけど、せっかく送ってもらったからには使わないとね。

 汚れちゃったら落とせばいいんだし。」

 と、いって上機嫌にエプロンをつけていた霧華の顔がとても印象的でしたね。




 サイズもぴったりで柄もかわいらしく霧華は甚く気に入ったようで送ってもらったときから、その後ずっとこのエプロンを使っていくことになったのです。




 ちなみに、後日マスターに聞いてみたところ、この日の売り上げはいつもの日の五倍近くまで伸びたそうです。

 恐るべき効果ですね……。

主人公は出てきませんけどこういうのも必要だと思うんですよね。



ここで名言。

『名前は付けた時点で意味をもつものである。』(意味深)

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