ニャン×2
ニャン×2
張りつめた空気の中。
外で吹く風の音、のみが聞こえる。
時々鼻をすする音が響くが、誰の声も聞こえない。
固まった空気。
それぞれが目の前の敵と向かい合っている。
これまで鍛え上げてきた自らを、敵にぶつける。
武器は頭脳。
頼るは記憶。
走る音は、私を置いていく。
刻一刻と時は刻み続ける。
制限時間は10分。
倒すべき目標は目の前。
だが、二週間のブランクは大いに私を苦しめる。
残り5分。
全20問。
殆どが空白。
規定点数以上でなければ、追試があるらしい。
あきらめて見上げた瞬間、何かが鼻をくすぐった。
尻尾、だろうか?
前に座っている男子生徒から、生えているように見える。
私は顔を離すが、遊びたい猫のようについてくる。
触れるかどうかのギリギリの位置を保って。
ほう、この私に勝負を挑もうと?
素早く片手でつかみかかる。
空を切る音が静かに響く。
だが、そこには尻尾はない。
少しずれた位置でユラユラと揺れていた。
挑発しているのか?
尻尾自体にはそんな気はないかもしれない。
ただ、私にはそう見えた。
再び片手で掴みかかる。
結果は変わらない。
なら、両手ならどうだ?
右、左と素早く連続して繰り出す。
目にも止まらぬような、怒涛のラッシュ。
テスト時間の終了の鐘は、尻尾と私の戦いを終わらせる事となった。
「テストどうだった?」
テスト後の先生が来るまでのわずかな時間。
私の席の周囲に集まってくる。
「ねぇ、この席誰だっけ?」
前の席を指さしながら尋ねる。
トイレにでも行ったのか、友達とおしゃべりに行ったのか。
そこは空席となっている。
「ここ?」
「煌樹じゃない?」
煌樹、あまり話したことなかったな。
名前こそカッコイイ感じだけども、見た感じは普通かな?
「何、こいつの事が気になるの?」
気になる。
とてつもなく気になる。
特にあの尻尾。
「教えて、煌樹君のこと。」
「知ってる限り全部。」
彼女らの顔つきが、わずかに変わった。
ニヤニヤした笑い。
そのことに私は気づかなかった。
「頑張れ、乙心。」
「できる限り協力してあげるから。」
鐘がなり始め、各々の席に戻っていく。
そして、気になるアイツも私の目の前に戻ってきたのだった。




