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来訪

 テレビの昼下がりのワイドショーでは例の宇宙人の特集をやっていた。世津にも好奇心はたっぷりあるので集中して見ていた。

 宇宙人の青年は名前を「ケイ」と呼んでくださいと言っていた。ジャニーズを足して人数分で割ったような微妙なイケメンなのは、どうやら外見を簡単に変える技術があるらしいので無難な外見を選んで来たということだ。

 本来の目的である求婚は、下準備であるプレゼントも終わりに近づき、あとは発電所のメンテナンスや修理などの講習会を選ばれた企業や研究所の代表にするだけなので、いつ、目当ての女性が部屋に一人でいる時、瞬間移動で現れても不思議はないそうだ。宇宙人ケイは、この前テレビで呼びかけていた。

「僕が突然現れても驚かないでくださいね」と。

 両親が生きている日本女性の間では『私ではないか? 症候群』が起こっていて、少なからぬ女性達をドキドキさせていた。

 今、テレビでは中継で、宇宙人の青年が銀座の洋菓子店Мでミルフィーユを買って突然消えたと伝えていた。ミルフィーユは世津の大好物だった。

「久しぶりにミルフィーユ食べたいなぁ」とつぶやくと

「じゃあ、一緒に食べましょう。紅茶かコーヒーを淹れてくれますか?」

 声に振り向くとケーキ箱を持った宇宙人の青年がそこに立っていた。目が合った途端、何故か電流が全身に走るような感覚がしたが、驚いたためだろう。世津は

「ええっ! 私なんですか? 私の両親は生きていませんよ」

「あのご両親を看取ってからというのは嘘です。あなたを騒ぎに巻き込みたくなかったからです」

「でも私・・・73歳のお婆ちゃんですよ」

「僕はもっと長く生きています。若返る技術があるのでそんなことは問題ではないんです」

「でも何で私なんですか?」

「相性の良さです。僕達の相性は宇宙で一番レベルです」

「何でそんなことがわかるんですか?」

「失礼ですがあなたの髪の毛を調べさせてもらいました。解析の結果、相性抜群なことがわかりました。相性こそ結婚相手を選ぶ一番のポイントです」

「片っ端から大勢の人の髪の毛を調べていたのですか?」

「そんなことはありません。僕は百年くらい地球を観察してますが、あなたほど僕を引き付ける女性はいませんでした。もしやと思って髪の毛を調べたのです」

「宇宙で一番レベルの相性って、宇宙にはどれくらい人間がいるのですか?」

「生ものなのでケーキを食べながらお喋りしましょう」

「そうですね。ご馳走になります。ミルフィーユ大好きなんです。コーヒーでいいですか?」

「世津さんはコーヒー派でしたね。僕もコーヒーの方が好きです」

 世津はコーヒーメーカーをセットしてミルフィーユを切り分けた。コーヒーとミルフィーユでお茶しながら、宇宙人の青年から宇宙について様々な話を聞いた。

 宇宙人の青年「ケイ」の星にしても宇宙の全てについてわかっているわけではないらしい。地球やケイの星の他に、あと三つしか相互に結婚が可能な人間型の生物が住む星は見つかっていないそうだ。

 ケイは二時間程話し込んだ。

「それではまた」と言って、世津の部屋から消えた。

 世津は相性は大切だけど、それだけでは何か足りないと思った。とはいえ宇宙のいろいろな話が聞けるのは楽しみだった。

洋菓子店Мはマキシム・ド・パリをイメージしました。あそこのミルフィーユは最高だと思います。

追記:マキシム・ド・パリは2015年6月30日に全店舗閉店しました。私も「有閑倶楽部」でナポレオンパイを知ったくちなのですが、もう日本で食べられないと思うと残念です。

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