第七話:都を目指そう
「ん~ここは…」
俺は朝、目が覚めると見知らぬ布団に寝ていた。
(あ、そっか昨日は…)
すぐに昨日のことを思い出す。
昨日、俺は銀と共に盗賊を倒した後(ほとんど倒したのは銀だが)、村人達に一斉に囲まれて散々お礼を言われた後に、感謝の気持ちだとかで村人達が俺達の為に宴を開いてくれたのを思い出した。
「宴が終わった後におっちゃんの家に泊まったんだったな…」
俺は宴の後に金が少ないから泊まるところがないと話すと、泰三のおっちゃんが自分の家に泊めてくれたのだ。
最初は迷惑かと思ったが、村の恩人を迷惑に思うはずがねぇと逆に怒られてしまうし、おっちゃんの奥さんも快く迎えてくれたので一晩だけ泊まることにしたのだ。
「ふぅ…そろそろ起きるか」
そういい布団を出ようとすると手が何か柔らかいものに触れる。
「…んっ」
「ん?」
触れたものはとても柔らかく、気持ちいい感触がした。
「何だ?すごく気持ちいい感触だ」
さらにそれに触れてみると。
「…あんっ///」
するとその物体がなんとも可愛い声をだし震える。
そして、その物体が動きだした。
「な、なんだ!」
俺がすごく驚いているとその物体が正体を現した。
「…真緒…えっち…」
その正体は昨日、圧倒的な強さで盗賊を退治した。
紅い瞳に今は美しい白に近い銀髪を下ろしている美少女、鬼山銀だった。
「ぎ、銀!」
「…おはよう…真緒」
何でもなかったように俺に朝のあいさつをしてくる。
「ああ、おはよう…じゃなくて!」
「?」
可愛く首を傾げるその仕草は小動物を連想させるもので、とても可愛いが今は彼女が俺の布団にいたことの方が重大だ。
「なんで俺の布団にいたんだよ?」
俺が質問をすると少し考える仕草をした後、すぐに銀は俺に抱きついてきた。
「うわっ」
俺はそのまま押し倒され、布団に沈む。
そして、銀が俺の体に頬をスリ寄せながら喋る。
「…私は真緒が好き…だからいる」
「エエッ///」
そんなことを言われてもどう言葉を返したらいいかと考えていると、いきなり部屋のドアが開けられ泰三のおっちゃんが入ってきた。
「よう兄ちゃん、昨日はぐっすり寝られた…か…」
「あっ」
「……」
最初は勢いよく入ってきたおっちゃんは俺達の状況を見て固まる。
「すまねぇ、邪魔した!」
何か勘違いしてそのまま急いで飛び出していくおっちゃん。
「ちょっと待ったー!!!」
俺の叫びが家中にこだましたのだった。
▼▼▼
俺はその後、なんとかおっちゃんの誤解を解いて朝食をご馳走になっていた。
「はっはっは、いやーすまんな兄ちゃん」
大笑いするおっちゃんにげんなりしながらもおっちゃんと話す。
「いや…勘違いするようなことをしていたのこっちだから、別にいいよ」
おっちゃんと話している隣では銀が朝食を幸せそうに食べている。
すると奥からおっちゃんの奥さんである華さんがにこやかな笑顔を浮かべて、新しい料理を運んできた。
「うふふ、銀ちゃん美味しい?」
「…うまうま」
「あら、嬉しいわ~おかわりいっぱいあるから、どんどん食べてね、真緒くんも遠慮しないでね」
「本当にありがとうございます。一日泊まらせてくれたうえにこんな美味しい料理までご馳走になちゃって」
俺は申しわけなさそうに言うと。
「だから遠慮しなくていいってよ、お前らはこの村の恩人なんだからよ」
笑いながらそう言ってくれるおっちゃん、華さんもその通りというように頷いている。
「でも…盗賊をほとんど倒したのは銀だったし俺は「…違うよ」…えっ」
俺の言葉を遮るように銀は言葉を重ねた。
そして、食べるのを一旦やめてこちらの方を見つめてくる。
「銀?」
「…私が生きているのも……あいつらを倒せたのも…全部…真緒のおかげ…」
たぶん俺が気にやまないように言ってくれたのだろうか、別に気にやんではいなかったのだが、俺のことを想っての言葉なのだろう俺は純粋に嬉しかった。
「銀…ありがと」
「……うん///」
俺が礼を言うと銀は照れたように返事をし、また朝食を食べるの再開しはじめる。
その光景をおっちゃん達夫婦はニヤニヤしながら見ていたので、俺も恥ずかしくなりごまかすように朝食を食べ始めた。
それから朝食を食べ終わり、おっちゃん達に旅のこれまでの経緯を話す。
「実は俺、ある目的があって旅をしているんだ」
「ほぉ、目的ってなんだ?」
「ある理由で、とある七人を探しだして仲間にすることなんだけど…」
「七人の仲間を探すねぇ…ある理由ってなんだ?」
理由のことを聞かれるが、俺は答えられないおっちゃん達に魔神のことを伝えたて不安にするようなことは出来なかった。
「…ごめん言えないんだ」
「そうか…すまないな」
するとおっちゃんが俺の気持ちを察してくれたのかそれ以上聞かないでくれた。
「でも、その仲間の一人は見つけたと思う…」
チラッと銀に視線を向ける、すると俺の視線に気がついたのかこっちに視線を向けてきて
なんだろうという風に首を傾げている。
「?」
俺は首を傾げている銀に向かって俺はお願いする。
「銀…俺の仲間になってくれ!」
「……」
きょとんとした顔で俺のほうを見つめてくる、確かに急に言われたら驚くかもしれないが俺は銀に説明をする。
「銀は俺が探している七人の内の一人なんだと思う、その証拠がその右手にある刻印だ!」
「…刻印?」
銀はそう言われてマジマジと刻印を見る。
「その刻印は俺の刻印に共鳴するように現れたんだ、だからその刻印は俺が探し求めている七人の証拠なんだと思う…」
銀はそんな根拠のないような説明をちゃんと聞いていてくれていた。
そして、俺が説明し終わると銀は俺にいつもと違う真剣な表情で質問してきた。
「…真緒は…私が必要?」
俺はその質問に即答する。
「あたりまえだ、そうじゃなかったらこんなこと言わない、俺には銀が必要なんだ!」
「…///」
銀が顔を伏せてしまう、なんか恥ずかしい言葉を口走ってしまった俺、銀に引かれてないか心配で銀の顔をうかがおうとした時、急に銀に抱きつかれる。
「うおっと!」
急に抱きついてきた銀を転ばさないように受け止めると、銀は上目づかいをするようにこちらを見上げてくる。
「…一生ついていく///」
そう言い俺の体に顔をうずめて頬ずりしてくる。
「いいってことなのか?」
俺はそう問うと、銀は可愛く頷いてくれたのだった。
仲間になってくれることを承諾してもらい、ほっとするとなんだか力が抜けてくるのを感じた。
「はあ~ありがと、銀」
脱力しながらお礼を言うとさらに抱きついてくる銀。
美少女に抱きつかれるのは嫌じゃないけど、そろそろおっちゃん達が送ってくる温かい目が恥ずかしいので銀を離そうとする、だが、銀は離れようとしない。
「あの~銀、そろそろ…」
「…いや」
(あはは、どうしよう)
▼▼▼
なんとか銀を説得して抱きつくのをやめてもらったその後、俺は銀と一緒に旅の支度をして、今は村の出入り口まで来ており、おっちゃん達との別れのあいさつをしていた。
すると別れのあいさつをしようと村の全員が集まってくれたのだった。
「銀ちゃん、よかったらこれ旅の道中で食べて」
「…ありがとう」
俺がおっちゃんに別れのあいさつをしているその隣では、銀が華さんに食べ物を貰いご満悦な表情を浮かべている。
「兄ちゃん次は何処に向かうんだ?」
「いや、まだ決まってないよ」
おっちゃんに次の目的地を聞かれるが、答えた通りまだ次の目的地を決めていなかった。
するとおっちゃんが良い情報を教えてくれた。
「だったら都の《京安》に向かうといいぜ、あそこは人が多いしよ兄ちゃんの探している奴らもいるかもしれないぜ」
確かにそこだったら《七勇士》になれる人がいるかもしれないと思い、おっちゃんの助言をありがたくいただくことにした。
「わかった、そこを目指してみるよ、ありがとうなおっちゃん!」
「なぁに、良いってことよ!」
目的地も決まったのでそろそろ村を出ることにし、俺と銀と村人達に別れを告げこの村をあとにした。
「じゃあなー!また来いよー!」
「お元気でー!」
「村の恩人にバンザーイ!」
俺達を盛大に見送ってくれる村人達に手を振りながら次の目的地を目指す。
「よし、行くか銀!」
「……ん」
俺は一人目の勇士となった銀を仲間にし、次の目的地に新たな勇士がいることを願いつつ旅立つのだった。
次の目的地は東国の都《京安》さてこれからどうなることやら。
次も見てくれると幸いです。