第二話:旅立ちと出会い
「じゃあ、行ってくるよ爺ちゃん、婆ちゃん」
俺は昨日爺ちゃんに言われたとおり、魔神復活に備えて己を鍛える為に、そして、俺の仲間となる《七勇士》を探す旅に出ることになった。
「うむ」
「本当に行っちゃうのね…真緒ちゃん」
婆ちゃんは心配そうにに俺に話しかけてくる。爺ちゃんは一見いつもどおりにだが、なにか寂しそうに俺は感じた。
「大丈夫だよ婆ちゃん、あまり心配すんなって」
「うん…でもやっぱり寂しいは~」
そう言いながら俺に抱きつく婆ちゃん、実は俺もかなり寂しかったりする。もう何年も一緒に住んでいるこの家と、今まで俺を育ててくれた二人にしばらくお別れするのだと思うと辛かった。
しかし、これも魔神を倒す為だから仕方のないことだ。それに今生の別れでもないし、魔神との戦いが終わればすぐに帰って来れるはず、その為にも《七勇士》を探すことはとても重要なことだ。
などと思っていると。
「真緒よ、旅立つ前にこれを持っていけ」
爺ちゃんが俺に向かってあるものを投げる。
パシ
それを難なくキャッチする。それは鞘から柄の先まで全体のほとんどが真っ黒な色をした刀であった。
「爺ちゃん…この刀は?」
「それは儂がその昔、若い頃に使っていたものだ。名を《漆黒丸》という、旅の選別だ持っていけ」
俺は鞘から刀を抜いてみる。刀の刃は艶やかな漆黒でとても美しく、しかもちゃんと手入れがされていて、とても昔に使われていたとは思えないほど綺麗なものだった。
「いいのか…こんな良いの俺が貰って?」
「構わん、好きに使いなさい」
「ありがとう爺ちゃん!」
爺ちゃんに礼を言うと、俺は刀――《漆黒丸》を自分の腰に差した。
「真緒ちゃん、私からはこれを」
そう言って婆ちゃんから渡されたのは、安全祈願と刺繍された手作りのお守りだった。
「…婆ちゃん」
「真緒ちゃんが無事に帰って来れるように、お婆ちゃんがちゃんとお祈りしながら作ったからね~」
笑顔でそう話す婆ちゃん、俺は心が温かくなるのを感じる、そして、改めて俺はこんな笑顔を守る為に旅立つのだということを決意する。
「…本当にありがとう二人とも、じゃあそろそろ行くな」
「うむ、行ってくるがよい…達者でな」
「いってらしゃい真緒ちゃん、体に気をつけね」
「ああ、行ってきます!」
そうして俺は見送る二人に別れをつげ、慣れ親しんだ家をあとにし旅立つのだった。
▼▼▼
家を出てから数時間後のことだった、俺はある森の中でとんでもないところに出くわしたのである。
それは少女が盗賊らしき三人組に囲まれているところだった。
「ヒャッハー今日は俺達ツイてるぜ!」
「ああ、今日は収穫がなくて全然だと思ったが!」
「こんな上玉と出会えるなんてな!」
「……」
下卑た笑いを少女に向ける三人組。確かに三人組の言うとおり少女は、白に近い銀髪をポニーテールにしたその姿は、今までに見たことがないような美少女であった。
その少女に一瞬、見とれていたがフッと正気に戻る。このままではあの三人組にあの美少女が襲われてしまう。そう思い少女を助ける為、動こうとした時、今まで無言だった少女が喋りだした。
「…ねえ……食べ物…持ってる?」
少女から放たれたその言葉は予想外な言葉で、三人組もこいつ何言ってるんだ?という風な顔をしている。
「ハァ?お前この状況わかってんのか!」
「へへッこいつどうやらこの状況で、頭おかしくなったんじゃねえか?」
「そうだな、嬢ちゃん食いもんなんて俺達持ってねーよ、その代わり俺達が嬢ちゃんをおいしく食べてやるよ!ギヒヒ」
そう言ってまたもや下卑た笑いを少女に向ける、三人組の言葉聞いた少女は残念そうにこう言った。
「……そう……じゃあ……もういい」
少女がその言葉を口からもらした次の瞬間、三人組の一人の体がブッ飛んだ。まだ残りの二人は気づいていない。
「へ」
「てってめーーーーこのアマがーーー!!!」
残りの二人がようやく気がつく、一人は呆然とし、もう一人は怒り少女に向かっていく、しかし、男の攻撃は少女に軽やかによけられる、そのまま少女は男の懐に入り掌底を繰り出した。
「ぐばっ」
男は攻撃をまともにくらいそのまま気絶した。それを見た最後の一人は仲間を置いて叫びながら逃げていった。一連の出来事を見ていた俺は心底驚いていた。
(すごいなあの娘…俺が出るまでもなかったな)
ドサッ
「ん?」
そんなことを思ってこの場を立ち去ろうとすると、大きな音がしたので振り返る、そこにはなぜかさっきまで普通に戦っていた少女が急に倒れていた。
「えーーー!」
俺は急いで少女に駆け寄った。
「おい!大丈夫か!」
怪我なんてしなかったよなと思いながらも少女を揺する俺、すると微かだが少女が声をだす。
「……な……いた」
「今なんていったんだ!」
少女に聞き返すと今度は小さくだがはっきりとその声が聞こえた。
「……お腹…すいた」
「は」
それがこいつ腹ペコ侍(俺命名)こと鬼山 銀と俺の初めての出会いだった。
次も見てくれると幸いです。