金髪ツインテドリルお嬢様、豚の餌処「ネクストLow」にて堕つ!~底辺の脂に溺れて~
鳳凰院アンジェリカ。
日本経済を裏から牛耳ると噂される鳳凰院財閥の至宝にして、社交界に咲き誇る『黄金の天使』。
そんな彼女が特注の最高級シルクドレスと高貴さを纏い、下々の街を我が物顔で散策している時のことだった。
「……なんですの、この掃き溜めに群がるような不気味な行列は?」
アンジェリカは、ご自慢のドリルのように巻かれたツインテールを誇らしげに揺らし、列が吸い込まれていく店舗に掲げられた黄色い看板を見上げた。
そこには無骨なフォントで『ネクストLow』と書かれている。
漂ってくるのは、美しく澄んだコンソメの香りではない。
鼻腔を力ずくでこじ開けるような、暴力的なニンニクと、煮込まれすぎた獣の脂の強烈な臭気。
嗚呼、なるほど。ここが……。
風の噂に聞いたことがある。たしか、庶民に愛される『豚の餌』を提供する店があるとか……。
「ちょうど小腹もすきましたし、いいでしょう。更なる高み(High)を目指す我が鳳凰院家として、社会の底辺(Low)を知る必要がありますわ。 ……さあ、庶民の豚さんたちが愛する餌とやら、わたくしが直々に毒見して差し上げますわ!」
アンジェリカは優雅に店内に足を踏み入れた。
入店直後、「注文はそちらで」と促され対峙する、謎の電子筐体――券売機。
「こちらから購入すれば良いのね。……まぁ、庶民の店は一万円札が使えませんの? たまたま千円札があって命拾いしましたわね」
薄汚れた機械に千円札を吸い込ませ、表示されたメニューを品定めするように視線を走らせる。
そして見つけ出した『小』という控えめな一文字。
「あら、わたくしのような少食な淑女を気遣うとは、大変殊勝な心がけですこと。 よろしい、その一番小さな『小』をいただこうじゃありませんか」
それが、彼女が踏み抜いた最初の地雷であった。
食券を購入し指定されたカウンターの席に腰を下ろすと、隣の男たちが「ギルティ」だの「完飲」だのと、不穏な隠語を呟きながら、狂ったように極太の麺を啜っている。
やがて、眼光の鋭い店主が、アンジェリカの前に立ちはだかる。
「……ニンニク入れますか?」
アンジェリカは余裕たっぷりの笑みを浮かべる。
「ええ、当然ですわ。 本来、社交界においてニンニクの香りはタブーですけれど……今は無礼講ですわ。 それと、そこの『アブラ・マシマシ』という言葉、響きが可愛らしくてよ。 それも追加してくださる?」
更に踏み抜かれる地雷。
一瞬、店内の空気が凍り付いた。
隣の男が、憐れみの視線をアンジェリカに送る。
それが何を意味するのか……、今の彼女は知る由もなかった。
「……はい。小、ニンニク、アブラマシマシ」
ドスン。
目の前に置かれたのは、もはや料理ではなかった。
それは、まさに―― 暴。
肉と脂にまみれた、巨大なもやしの塊。
「な、……な、なんですの、この……この、冒涜的なまでの質量は……っ!?」
震える箸で、標高二十センチの野菜の山を崩そうとする。
「食べ物をこぼしてはなりません」――幼少期より叩き込まれた食事マナーが、盛りこぼさんばかりの器へと、無意識にその顔を近づけさせた。
その瞬間、事件は起きた。
前のめりになった拍子に、アンジェリカのアイデンティティたる「金髪ツインテドリル」の先端が背脂の濁流へ突き刺さったのである。
「あ、ああっ……! わたくしの髪が、下層(Low)の脂でベトベトに……っ!!」
引き抜いたドリルの先からは、ドロリとした褐色の超濃厚スープが滴っている。
丹念に手入れされた黄金の髪の輝きは、もはや見る影もない。
本来ならここで立ち去るべきだった。
だが、脳を直接殴打するようなニンニクの香りが、彼女の理性を、財閥の教育を、根底から破壊していく。
「……っ、毒食らわば皿までですわ! 覚悟なさい、ネクストLow!」
アンジェリカは自慢のドリルを脂でコーティングしたまま、一心不乱に麺を啜り始めた。
――否、溺れた。
その圧倒的、脂の海に。
小麦の暴力。カエシの衝撃。
「おいひい……。 なんという、甘美で……野蛮な味かしら……っ! なんらかの法に触れているのではなくてっ!?」
止まらない、止められない箸。
「……認めますわ。 ええ、認めればよろしいんでしょう!?」
家族が見たら卒倒するであろう、貪り食うかの如き無作法。
「今のわたくしは、気高き鳳凰などではありません! この極上の『餌』を欲してやまない、卑しい、卑しい……ただの一匹の子豚ですわーっ!!」
十五分後。
店を出たアンジェリカの姿に、かつての気品はなかった。
オーダーメイドのドレスは脂の飛沫で汚れ、ウエストのボタンは無残に弾け飛び、自慢のツインテドリルは脂の重みで解け、泥に濡れた犬の尻尾のように力なく垂れ下がっている。
「うぷっ…お、お腹がはち切れそうですわ…」
――だというのに。
「……明日も。 明日もわたくし、ここに来なくてはならない気がしますわ……」
もはや『黄金の天使』の異名の見る影もなく、アンジェリカは夕陽に向かって敗北の吐息(ニンニク風味)を漏らすのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
鳳凰院財閥の誇りを背脂に溶かしたアンジェリカ様の明日は、果たして……。
「お嬢様、ギルティですわ!」「ボタン弾け飛んでますわよ!」と思ってくださった皆様。
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本作はAIちゃんとの共同執筆により、脂マシマシの構成でお送りいたしました。




