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始まりのダンジョン配信者  作者: 沼口ちるの


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第九話:大魔導師の実験室と丸裸のステータス

レンは、リリアナとリーナと共に、Sランク大魔導師セレス・リーゼロッテの私的な研究室に拘束されていた。


研究室はフォルトナ市街地でも最も魔力密度が高い塔の最上階にあり、無数の魔導書と、奇妙な光を放つ解析装置が所狭しと並んでいた。


リリアナは、セレスが何気なく作り出した無色透明の魔力障壁の中に閉じ込められていた。


障壁は無害だが、彼女のBランクの膂力ではびくともしない。


「セレス! 彼はギルドの保護対象です! 私たちを解放しなさい!」


セレスはリリアナの抗議を完全に無視し、レンの魔力映像機を指差した。


「さあ、レン。その奇妙な装置を渡しなさい。次元間魔力共鳴の基礎理論を確認させてもらうわ」


リーナは、リリアナとは対照的に興奮していた。


「わー! セレスさんの研究室! 私が読みたかった『古代魔力波形の理論』の書物がある! レンさん、これ、すごいよ!」


レンは諦めたように魔力映像機をセレスに差し出した。


彼の抵抗は無意味だった。Sランクとの魔力差は、レンの知識をもってしても埋められない絶対的な壁だった。



その瞬間、研究室の頑丈な鉄扉が内側から吹き飛び、全身黒ずくめのザックが飛び込んできた。


彼は二丁のシックルを構え、興奮した目で室内を見渡した。


「セレス・リーゼロッテ! そこで何をしている! その魔導具はギルドの共有資産となるべきだ! 渡してもらうぞ!」


ザックは、レンの持つ秘宝を横取りしようと、このSランクの牙城に単独で侵入したのだ。


セレスは、魔力映像機の解析に夢中で、背を向けたまま、うっとうしそうに片手を軽く振った。


「雑魚は邪魔。消えなさい」


その一言と共に、研究室全体を覆うように、目に見えない強大な魔力の圧力が炸裂した。


それは魔法の発動ではなく、Sランク大魔導師が持つ「魔力領域」そのものが具現化したものだった。


ザックは「ぐわっ!」という短い悲鳴を上げ、全身の骨が軋むほどの圧迫感に襲われた。


彼のDランクの身体は、まるで粘着質の泥に押し込まれたように動きを封じられた。


彼のシックルは音を立てて床に落ち、彼はそのまま壁に叩きつけられた。


「…な…何だ、この力は…」


セレスは振り返りもせず、鼻で笑った。


「私のアシスタントのパッシブ防御すら破れない雑魚は、私の研究室の酸素を無駄にしないで。外に放り出しなさい、ゴーレム」


セレスの指示で、研究室の隅に飾られていたと思われた小型の鋼鉄製ゴーレム(Lv.70)が起動し、完全に動けなくなったザックを乱暴に掴んで、塔の窓から投げ捨てた。


「あの馬鹿…」

リリアナはあまりの格の違いに、全身の力を抜くしかなかった。



邪魔者が消えたことで、セレスは再びレンに向き直った。


彼女は魔力映像機を古代の解析台に乗せ、数本の巨大な水晶柱で取り囲んだ。


「さあ、レン。正直に答えなさい。あなたのユニークスキル【異世界配信】の本質は何?」


レンは、隠しても無意味だと悟り、全てを話した。


視聴者の注目が魔力となること、情報が弱点解析に変換されること。


セレスは興奮しながら、水晶柱を起動させた。


水晶柱から放たれた光が、レンの体と魔力映像機を同時に貫いた。


レンの視界に、自身のステータスとは別に、Sランクの解析による詳細なデータが表示された。


Sランク解析レポート(セレス・リーゼロッテ)


【ユニークスキル:異世界配信】の真の構造:


主機能: 次元間情報・魔力逆流システム


駆動コア: 術者のINTステータス(高レベルで特異な周波数)


防御層: 術者のVIT・AGI(極端な低値により、魔力貯蔵への特化を確認)


解析結果: レンは、肉体を犠牲にすることで、地球という巨大な情報次元との常時接続を確立した、「生きた魔力貯蔵庫ライブ・マナ・コンテナ」。


結論: レンは低レベルに見えるが、彼のINTに内包される魔力量は、Sランク冒険者の平均を優位に凌駕する。彼の弱点は、この魔力を遮断された時のみ発生する。


レンは、セレスの解析によって、自分のユニークスキルのメカニズムが、この世界の科学の言葉で「丸裸」にされたのを見た。


彼のFランクのステータスは、宇宙規模の次元間取引の結果だったのだ。


セレスは歓喜の声を上げた。


「素晴らしい! 予想以上よ! あなたの肉体は、この巨大なエネルギーを保持するために、他の全てのステータスを削ぎ落としていたのね! Fランク? 冗談じゃないわ! あなたは、【次元間情報収集者ディメンショナル・インフォーマー】よ!」


「なるほど...」レンは口を開いた。

「私の肉体は、ただの電池であり、レシーバーだった、と」


その瞬間、レンの魔力映像機が再び激しく輝き始めた。

セレスの解析結果が、そのまま地球の配信画面に表示され、視聴者たちが熱狂したのだ。


視聴者「アリス」: マジでチートじゃん! Fランクとか嘘だった! Sランクでも勝てない魔力量!


視聴者「匿名X」: 生きた魔力貯蔵庫ライブ・マナ・コンテナ! 最高に燃える設定!


視聴者の熱狂により、レンのMPは瞬時に満タンになった。


セレスはレンのMPゲージが爆発的に回復するのを見て、さらに興奮した。


「その現象! これこそが、私が求めていた無限の魔力増幅理論の完成よ! レン、私はあなたを解放しないわ。私の研究に協力してもらう。そして、協力の報酬として、あなたが必要とする最強の魔導具を提供するわ」


レンはSランク大魔導師の研究室に閉じ込められ、彼の配信は、このアルカディアの科学と常識を根底から変える、新たな局面を迎えた。


クソッ…クソッ!


俺は今、フォルトナの塔の裏の汚水溜まりで、全身の痛みに耐えている。あの女、セレスめ。俺のDランクの実力を侮辱しやがって…!


あの一瞬の圧力。あれは、俺が命をかけて培ってきた『気配遮断』も『急所攻撃』も、全てが無意味になるほどの、純粋な魔力の暴力だった。

Sランクとは、あんなにも理不尽な存在なのか。


だが、収穫はあった。


俺が壁に叩きつけられる直前、聞こえたセレスの言葉。

「次元間魔力共鳴」「肉体を犠牲にした魔力貯蔵庫」…そして「最強の魔導具を提供する」。


あの新人レンは、やはりただの冒険者ではない。

彼は、Sランクをも虜にするほどの、この世界で最も価値ある情報源でありエネルギー源だ。


リリアナはもう動けない。


あの魔力障壁は、恐らく彼女の全ての魔力を使い果たしても破れないだろう。


だが、俺は諦めない。

俺はハンターだ。

一度狙いを定めた獲物は、どんな場所に隠れていようと、必ず狩る。


セレスの研究室は鉄壁だ。

だが、あの女がレンを外に出す瞬間が必ず来る。

その時こそが、俺が彼の秘宝を手に入れる唯一のチャンスだ。


待っていろ、レン。お前を支配する者が、今度は俺に変わるだけだ。


ザック (Dランクハンター・復讐の炎に燃える男)

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