第七話:Sランクパーティー「白銀の流星」
レン、リリアナ、リーナの三人は、エメラルドの洞窟の第二層へと到達していた。
レンは【異世界配信】で得た情報と、INT極振りによる強化魔法を駆使し、驚異的な速度で魔物を討伐していく。
「エメラルド・スライムは、この層でも同様に光属性に弱い。次は、硬質のコウモリ型魔物、ロックバットです」
レンは解析情報を表示する。
魔物名: ロックバット
レベル: 18
弱点: 鋭利な音、振動への耐性低下。
対策: レンチキュラー加工されたブロンズソードによる音波振動攻撃
「音波振動...リーナ、以前あなたが作っていた『共鳴増幅ボルト』は持っていますか?」
「持ってるよ! これを使うと、剣がキーンって鳴るんだよね!」リーナは目を輝かせ、工具箱から小さな部品を取り出した。
リリアナは、レンの指示に従う自分自身に戸惑いを感じていた。
レンの指示は全て、彼女の長年の経験則を覆すものだったが、結果は常に正しいのだ。
「私の剣に装着しなさい、リーナ」
リリアナの愛用のロングソードにボルトが装着された。
リリアナが剣を振るうと、刃先から高周波の振動音が発生した。
通路奥から飛来したロックバットは、その音波を浴びた瞬間に硬質な鱗が砕け、そのまま地面に落下した。
「すごいわ...物理攻撃は全く通用しない魔物なのに...」
リリアナは驚愕を隠せなかった。
レンたちが第三層への階段を目指していると、洞窟の奥から、圧倒的な魔力の波動と、凄まじい金属の衝突音が響いてきた。
リリアナは即座に臨戦態勢に入った。
「この魔力...間違いないわ。この街の頂点に立つSランクパーティー『白銀の流星』よ」
レンも解析スキルを起動させた。
対象: Sランクパーティー「白銀の流星」
リーダー: クライヴ・ベルンシュタイン 【聖騎士】 Lv.85
メンバー: セレス・リーゼロッテ 【大魔導師】 Lv.83
ガゼル 【武闘家】 Lv.79
「Sランク...彼らがこの中級迷宮区にいるのは異常事態だ」
レンは冷静に分析した。
通路の角を曲がると、レンたちはその光景を目にした。『白銀の流星』は、第三層への入り口を塞ぐように出現した中級ボス級魔物、グレートストーンゴーレム(Lv.50)を相手にしていた。
リーダーのクライヴは、銀色の全身鎧を纏い、神聖魔法を込めた大剣を振るい、グレートストーンゴーレムを圧倒していた。
クライヴは一瞬の隙を見つけ、レンたちの方を向いた。
「おい、そこのFランク。ここは君たちが来る場所ではない。すぐに引き返せ」
その威圧感は、レンの全身を硬直させるほどだった。
クライヴの警告は絶対的なもので、リリアナはレンの手を引き、すぐに撤退しようとした。
しかし、Sランクパーティーの一人、女性魔導師のセレスが、レンの持つ魔力映像機に興味を示した。
セレスは青いローブに身を包み、その銀色の髪は光を反射している。
彼女は、ボス戦の最中だというのに、一切の緊張感を見せず、レンに向かって歩み寄ってきた。
情報解析:
名前: セレス・リーゼロッテ
クラス: 【大魔導師】
状態: 純粋な魔導具への興味、解析欲求
「待ちなさい、そこの少年。その手に持っている、奇妙な魔導具を見せてくれるかしら」
セレスの声は、洞窟に響く戦闘音よりも強く、レンの耳に届いた。
クライヴが焦れたように叫ぶ。
「セレス! 敵は目の前だ!」
「うるさいわね、クライヴ。この魔導具から発せられる魔力の周波数、尋常ではないわ。まるで、遠い次元の『魔力流の脈動』と共鳴している...あなた、これは何なの?」
セレスはレンの前に屈み込み、その顔を近づけた。
彼女のINTの高さが、リーナ同様、レンのユニークスキルを感知していた。
レンは、Sランクの大魔導師の目の前で、隠し立てする意味はないと判断した。
「これは、別の世界から情報を集積し、魔力に変換する装置です。私はその情報を用いて、魔物の弱点を突いています」
セレスは恍惚とした表情を浮かべた。
「情報から魔力への変換...素晴らしい! その理論、今すぐ聞かせて。ダンジョンの攻略など、どうでもいいわ。あなた、私の研究室に来なさい」
レンの配信は、ついにこのアルカディアの「最強」と呼ばれる存在まで巻き込み始めた。
彼の配信戦略は、彼の意思とは無関係に、世界の常識を根底から揺るがし始めていた。
あんな薄汚い中級ダンジョンで、まさか世紀の大発見に遭遇するとは、運が良すぎるわ。
クライヴの奴は、目の前の岩人形を叩き壊すことにしか興味がないけれど、あの少年レンが持っている魔導具は、この世界の魔導科学の常識を覆すものよ。
あの子の言っていた「別の世界からの情報の集積」
...私が長年研究してきた「次元間魔力流通の可能性」を具現化している!
あの魔導具の周波数。
まるで、地球の核を流れる巨大な魔力流を、遠隔地から引き寄せているような、途方もないエネルギーだわ。
そして、あの子供魔導具師のリーナ。彼女の解析力も侮れない。
グレートストーンゴーレムの討伐? どうでもいい。
私の研究が、あの魔導具の解析によって一歩でも進むなら、Sランク冒険者としての地位など、いくらでも投げ出してやるわ。
クライヴには悪いけれど、あの少年は私の研究対象よ。
このエメラルドの洞窟から、絶対に逃がさない。
セレス・リーゼロッテ (Sランクパーティー「白銀の流星」所属 大魔導師)




