第五話:リーナの解析と、リリアナの共同戦線
人通りの少ない裏路地で、レンはリーナの熱意に押され、魔力映像機を彼女の目の高さまで下ろした。
「本当に不思議な魔導具だね! レンさん、これ、ちょっとだけ触らせて!」
リリアナは警戒を強め、すぐにレンの前に立った。
「待ちなさい、リーナ! 何が仕込まれているかわからないわ。触るなんて危険よ」
「大丈夫、お姉さん。私は魔導具師だもん。危険な魔力はすぐにわかるよ」
リーナはリリアナの制止を振り切り、魔力映像機に両手をかざした。
彼女の琥珀色の瞳が強く輝き、スキル【魔力感知】が発動した。
数秒後、リーナは大きく息を吸い込んだ。
「分かった! これ、本当にすごいよ、レンさん!」
彼女の興奮は頂点に達しているようだった。
「これはね、魔力を発生させているんじゃなくて、遠くから『取り込んでいる』んだ! 魔力、というよりは...『情報の流れ』を変換して、レンさんの体内に送り込んでいる感じ」
リーナは巨大な工具箱から、小さなルミナスストーン(発光魔石)を取り出し、魔力映像機にかざした。
「ほら、見て! 普通の魔導具は、魔力を消費するところが光るんだけど、これは逆に、周りの魔力を吸い込んで光を強めている! これは『逆流の構造』だ!」
リーナの専門的な解説は、レンの推測を裏付けた。
視聴者の注目と熱狂という「情報」が、魔力としてこの世界に逆流している。
彼女の解析能力は、ギルド職員の誰よりも優れていた。
「君のおかげで、このスキルが理解できた。ありがとう、リーナ」
「へへ、どういたしまして! その代わり、レンさん。今度、この魔導具の設計図を書き起こすのを手伝ってよ! 現代の技術じゃ絶対に作れないよ、これ!」
リーナの解析を目の当たりにし、リリアナの疑念は半分ほど晴れた。
レンが交信しているのは、強力な魔術師ではなく、遠い世界からの「情報の流れ」であると理解したのだ。
「待って、レン。本当に、あなたが別世界にいる誰かに、今の状況を『配信』しているというの?」
「ええ。あなたが今私の横にいることも、遠い故郷の視聴者たちに公開されています」
リリアナは思わず身を震わせ、自分の服装や表情を気にしてしまった。
このリアクションが、視聴者のコメント欄を再び熱狂させる。
視聴者「匿名K」: リリアナかわいい! ツンデレヒロイン爆誕!
レンは解析を通して、視聴者の反応がさらに高まり、MPが回復しているのを確認した。
「あなたの言うことが真実だとすれば...あなたは、この世界で最も情報を持っている人間、ということになるわね」リリアナは真剣な表情に戻った。
「その通りです。魔物の弱点、ステータス、そしてこの街の未登録の強力な魔力反応。全てを解析できます」
リリアナは、ギルドマスターから受けた「レンの監視と協力」の命令を思い出した。
レンの持つ情報は、ギルドが直面しているダンジョンの深層化という問題に対して、決定的な突破口となる可能性がある。
「分かったわ。私はあなたを信用するわけじゃないけれど...あなたのユニークスキルは、ギルドにとって必要不可欠なものかもしれない。ギルドマスターには、彼の情報源を『未登録の鑑定スキル』だと報告する。そして...」
リリアナは、厳しい口調で続けた。
「私たちは、協力するわ。あなたの身の安全と、ギルドへの情報提供を交換条件として。私があなたの護衛につく。ただし、私の行動は全てギルドの承認の下にあるものとして行動するわよ」
レンは微笑んだ。
彼の戦闘力(STR 5)では、護衛は必須だった。
「ありがとうございます。私の目的は生存と、より多くの魔石の獲得ですから。協力者、大歓迎です」
そして、リーナが手を挙げた。
「私も手伝う! レンさんの魔導具の秘密を探りたいし、私の作った道具が、ダンジョン攻略の役に立つか試したい!」
こうして、レン、リリアナ、リーナの三人は、奇妙な協力関係を結んだ。
Bランク剣士、Fランク配信者、そして天才見習い魔導具師。
彼らの目的は、ダンジョン攻略と、レンのユニークスキルの秘密の探求へと向けられた。
レンは、新たな仲間と協力関係を得たことで、早速次の行動に移った。
「次の目標は、ギルドが最近、攻略に難渋していると報告されている『エメラルドの洞窟』です」
リリアナは驚愕した。
「エメラルドの洞窟? あれは平均レベル15以上が推奨される中級迷宮区よ! レベル4のあなたが行く場所じゃないわ!」
「解析によれば、エメラルドの洞窟の最初の魔物には、私のINTを活かせる致命的な弱点が存在するようです」
レンは、視聴者の熱い期待を背負いながら、次のダンジョンへの準備を始めた。
彼の配信は、この世界の常識を少しずつ破壊していく。
わーい、わーい!
私、レンさんの研究チームに入ったんだよ!
レンさんの持っている魔導具、あれは本当にすごい!
遠い遠い場所から魔力を集めて、レンさんに渡しているなんて、古代の文献でしか読んだことなかった次元共鳴型魔力転換機の仕組みに近いと思うんだ!
お姉さん(リリアナ)はまだ疑っているみたいだけど、レンさんは絶対に悪い人じゃないよ。
だって、彼の持っている魔力は、すごく純粋で綺麗な流れなんだもん。悪いことを企んでいる人の魔力は、もっとドロドロしているの!
私はレンさんの魔導具を解析して、もっとすごいのを作ってみたいんだ。
魔力増幅炉とか、自動防御魔法陣とか!
ダンジョン攻略? それもお姉さんがついててくれるから大丈夫! 私はレンさんの後ろで、彼の魔導具を最高の状態に保つための魔力補助と、必要な道具を供給する役割!
ねえ、レンさん。今度、あの魔導具の画面に映っている文字...「コメント」って言うんだよね? あれがどうやって魔力に変わるのか、一緒に研究しようね!
リーナ (見習い魔導具師・レンの協力者)




