第四話:INT極振りの真価と、リリアナの誤解
レンはコボルト・リーダーの情報解析に基づき、剣ではなく魔法の使用を決意した。
コボルト・リーダーはレベル7だが、精神力(MND)が極端に低く、魔法耐性が皆無という致命的な弱点を持っていた。
「【生活魔法:水球】」
レンは、昨日コボルトを誘き出すために使った、ただの水滴の塊を生成する。
しかし、今回は彼のMP50のほぼ全てを、この初級魔法に注ぎ込んだ。
彼の高い魔力(INT 15)は、本来なら基礎魔力の低い生活魔法の威力を大幅に増幅させた。
彼の指先で生成された水球は、直径五十センチほどの巨大な水の塊へと変貌し、通路に充満する魔力を吸収し始めた。
魔力消費: 40 MP / 50
視聴者 から 魔力 が供給されました。(MP 40 → MP 42)
視聴者「匿名J」: うそだろ...生活魔法でこんな巨大な水球作れるのか!?
視聴者「アリス」: これ、水の爆弾じゃん!
目の前の通路に、棍棒を持ったコボルト2体と、一回り大きなコボルト・リーダーが出現した。
レンは狙いを定めず、ただ巨大な水球を群れの中央へ放った。
ズドン、という鈍い音と共に、水球は弾け、凄まじい水圧と魔力の波動を周囲に撒き散らした。
水は壁と床を叩きつけ、コボルトたちを押し流した。
システム: コボルト・リーダーに致命的なダメージを与えました。
レベル7のコボルト・リーダー が消滅しました。 コボルト 2体が気絶しました。
経験値 を獲得しました。(経験値ゲージ:90%) レベル が 3 から 4 に上昇しました。
レンは魔力を使い果たしかけていたが、即座に視聴者からの魔力供給でMPが回復していくのを感じた。
「視聴者からの熱量、凄まじい...」
彼の背後の岩陰。
リリアナは信じられない光景を目撃し、愕然とした。
(あれが...生活魔法? 私の使う初級魔法の十倍以上の威力よ! 馬鹿な、彼自身のステータスは低いはず。やはり、あの魔力映像機に秘密がある!)
リリアナはレンが交信している「支援者」が、空間を越えて魔法を増幅しているのだと誤解した。
レンは気絶したコボルト2体を処分し、リーダーの魔石を回収した後、すぐに石窟から離脱した。
ギルドへ戻る途中、レンは人気のない裏路地で待ち伏せを受けていた。
「待ちなさい、レン」
声の主は、やはりリリアナだった。
彼女は戦闘態勢こそ取っていないが、警戒の色を隠さない。
「あなた、一体何者なの? あの魔法は、レベル3の冒険者が使える代物ではない。特に、あの魔導具。あれは一体何?」
レンは冷静に答えた。
「これは、私のユニークスキルによるものです。この魔導具は、私の魔力を増幅しているだけです」
「ユニークスキル? ふざけないで。あなたの言動は全て、ギルドの常識から逸脱している。あなたが、この街のダンジョン情報を流出させているのではないかと、ギルドマスターは疑っているわ」
レンは、自分が置かれている状況を即座に解析した。
誤解を解くには、この世界の常識では理解できない「配信」という概念を説明しなければならない。
「私はこの世界の人間ではありません。故郷の世界に、私の活動を配信し、その報酬として魔力を得ています。それがこのスキルの正体です」
リリアナは完全に困惑した。「故郷の世界? 配信? そんな非現実的な話、信じられるわけがないでしょう!」
その時、二人の間に、小さな影が割って入った。
「あのね、お姉さん! その魔導具、とってもいい匂いがするの!」
声の主は、十歳ほどに見える小さな少女だった。
肩までの茶色の髪に、大きな琥珀色の瞳。
彼女は背中に、レンの背丈ほどもある巨大な工具箱を背負っていた。
情報解析:
名前: リーナ
クラス: 【見習い魔導具師】
レベル: 15
スキル: 【魔力感知】Lv.5、【魔導具製作】Lv.3 状態: 純粋な好奇心、高レベルの魔力に反応
少女は、レンの持つ魔力映像機に興味津々で、身を乗り出していた。
「この機械、こんなに濃密な魔力を放っているのに、なんで街のどこにも登録されていないの? 変なの!」
リリアナは警戒を緩めず、少女を庇うように一歩前に出た。
「リーナ、危ない! この男は怪しいのよ」
「でも、お姉さん。この機械の魔力の流れ、すごく綺麗だよ? どこかで見たことある...ああ、そうだ! 遠い昔の記録にある『世界樹の枝』の魔力共鳴に似ている!」
リーナの言葉に、レンとリリアナは同時に目を見開いた。
特にリリアナは、古代の魔導具に関する知識を持つ者が、こんな子供だということに驚いていた。
レンは機転を利かせた。リーナの持つ【魔力感知】スキルが、この魔力映像機の正体——すなわち地球からのエネルギー流入の特異性を捉えているのだ。
「君は、この魔導具の秘密を知っているのか?」レンはリーナに尋ねた。
「秘密なんて知らないよ! でも、この魔力、遠いところからたくさん集まってきているのはわかる! レンさんっていうの? これ、私にちょっとだけ見せてくれない?」リーナは上目遣いで訴えた。
レンは目の前の少女が、自分のユニークスキルを物理的に解析できる、この世界で唯一の理解者となるかもしれないと直感した。
あの男、レン。
本当にどこまで私の常識を壊せば気が済むのよ。
あの巨大な水球! あれはもう、生活魔法の範疇じゃないわ。
完全に上級魔法の威力よ。
やっぱり、彼の後ろには何か強力な魔術師がいるとしか思えない。
そして、ギルドに戻る途中で見かけたあの子供、リーナ。
あの生意気なガキ...いえ、才能ある見習い魔導具師。
彼女が、レンの魔導具の魔力に惹かれるなんて。
しかも、「世界樹の枝」の共鳴に似ているですって?
世界樹の枝は、遠い次元と魔力をやり取りする古代の遺物とされているわ。
もし、レンの魔導具が本当にそれに似た仕組みを持っているとしたら...。
...レンの言っていた「故郷の世界への配信」が、全くの嘘ではないのかもしれない。
くっ。こうなっては、私一人で彼を監視するのは危険すぎるし、情報も得られないわ。
リーナの魔導具師としての解析能力と、私の戦闘能力。
彼の怪しい秘密を探るために、一時的に共闘するしかないかもしれないわね。
…気に入らないけれど。
リリアナ (フォルトナ冒険者ギルド所属 Bランク剣士)




