第二十四話:最終決戦(上):武の極意、次元の断層へ
第一節:次元断層での布陣
レン、アリス、リリアナ、クライヴ、セレス、リーナの一行は、フォルトナ大迷宮の最深部、『次元の断層』へと辿り着いた。そこは、異界の魔力が吹き荒れ、空間の歪みが視認できる、この世界で最も不安定な場所だった。
セレスは、崩壊した塔から回収した【次元魔力共鳴増幅装置】を設置し、レンの【異世界配信】の情報を基に、断層周辺の魔力流を遮断する準備を始めた。
「レン! 五星陣が来るわ! 予測される出現地点は三箇所!」セレスが叫んだ。
レンの解析台に、敵の情報が表示される。今回は、五星陣の三体全てが健在だ。
その時、断層を覆う異界の魔力流を、一本の武術の達人が放つ、純粋な『気』の圧力が打ち破った。
「リーナ、無事か」
リーナの姉、フィリスが、道着姿のまま、一切の魔力も使わず、次元の断層の最奥に降り立った。彼女の登場は、全員の計算外だった。
「フィリスさん!」リリアナは驚愕した。
「お姉ちゃん!?」リーナは泣きそうな声で駆け寄った。
フィリスは、リーナの顔を見て安堵したが、すぐにクライヴとセレスに向き直った。
「セレス・リーゼロッテ。お前たちが妹を巻き込み、塔を崩壊させたことは見逃せない。だが、この場で手を緩めれば、リーナの命は闇の力に晒される。私は、この戦い、妹の護衛として参加する」
フィリスは、リーナの隣で、武の達人としての不動の構えを取った。
第二節:五星陣、総力戦の開幕
セレスが魔力遮断の準備を完了した、その瞬間、三つの黒い閃光が断層の三箇所に同時に出現した。
「遅かったな、アルカディアの光どもよ!」
闇に堕ちたザック(影の追跡者)、空間を操るグリム(虚空の魔術師)、重力使いの第三の刺客。五星陣が、闇の帝王の降臨のために、絶対的な護衛陣を敷いたのだ。
ザックは、クライヴとリリアナに向けて一直線に突進。
グリムは、幻影と空間魔法で、アリスの動きを封じようとする。
第三の刺客は、レンとセレスの増幅装置を狙い、超高重力場を放つ。
戦いの火蓋が切って落とされた。
クライヴは神聖な光を放つ盾でザックの双影鎌を受け止め、リリアナはフィリスから教わった【心眼】でその後の連撃を防ぐ。
アリスは、グリムの幻影に惑わされず、光の剣で空間の歪みを浄化していく。
第三節:フィリスの真価と全員の力
フィリスは、リーナとセレスの護衛位置から一歩も動かず、第三の刺客が放つ超高重力場に対峙した。
クライヴやアリスがその重力に苦しむ中、フィリスは武術の極意によって、肉体の内部構造を最適化していた。彼女の体は、外部の重力に依存せず、体軸と呼吸だけで、その負荷を耐え抜いていた。
フィリス: 「無駄だ。魔力に頼る重力操作など、肉体の究極の構造の前には通用しない!」
フィリスは、重力場の中で、わずかに腕を振るった。その一撃は、魔力を持たない**『純粋な気』によるもので、第三の刺客の重力制御に乱れ**を生じさせた。
レンは、その一瞬の乱れを、解析台で見逃さなかった。
レンの解析: フィリスの打撃が、刺客の魔力の外殻(重力)に干渉しました! 物理的な『気』が、情報の流れを乱した!
レンは、この情報を視聴者の熱狂に乗せて増幅。フィリスの放った『気の情報』を、第三の刺客の重力場全体に、【情報支配】で拡散させた。
グワァン!
第三の刺客の重力場は、レンの情報拡散とフィリスの『気』の融合により、制御不能に陥り、刺客自身を押し潰し始めた。
「バ、馬鹿な! 人間の肉体が、私の法則を書き換えるだと...!」刺客は悲鳴を上げた。
リリアナ、アリス、フィリス、クライヴ、そしてレンの『情報』。全員が自身の極限の力を発揮し、五星陣の一角を討ち崩したのだ。
セレスは、この隙に魔力流の遮断を完了させた。
セレス: 「やったわ! 闇の帝王の次元の肉体固定は、あと数秒遅れる! 今よ、アリス! 帝王の『核』を狙いなさい!」
戦場は、闇の帝王の降臨を阻止するための、最終段階へと移行した。
信じられん。あの武術の達人、フィリス。
彼女は、セレスの狂った実験チームの一員でもなければ、闇の帝王を討つ使命感もない。ただ、妹を守るという『人間としての純粋な決意』だけで、この次元の断層に立っている。
そして、彼女の武の極意は、あの重力使いの刺客の魔法を、『気』という物理的な情報で打ち破った。レンの【情報支配】は、その一瞬の隙を逃さなかった。
レンの情報、アリスの光、リリアナの剣、そしてフィリスの武。この異質な組み合わせが、五星陣を凌駕する最強の力となった。
しかし、残るは、闇に堕ちたザックと、空間を操るグリム。そして、全ての元凶、闇の帝王。
私の聖なる盾と剣は、必ず彼らの道を切り開く。レンの『情報』に従い、この戦いに終止符を打つぞ!
クライヴ・ベルンシュタイン (Sランク聖騎士・次元の戦いの立役者)




