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始まりのダンジョン配信者  作者: 沼口ちるの


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第二話:配信の反響とギルドへの第一歩

安アパートに戻った蓮は、魔力映像機を机の上に置いた。


配信を終えたにも関わらず、機体はわずかに温かい熱を帯びている。


「レベル3...MPも回復した。それに、この情報量」


蓮の視界には、配信終了後に表示された「配信レポート」が展開されていた。


配信レポート(第一回)

視聴者総数: 1,280名

同時接続者数最大: 153名

総視聴時間: 58分12秒

魔力供給総量(MP換算): 1,530

主要コメントキーワード: #異世界 #ダンジョン #リアルゲーム #チートスキル #初心者

収益(転生世界通貨): 0 (現時点では魔力供給のみ)


「魔力供給が1500以上。これが実質的な燃料か」


蓮は深く頷いた。

この【異世界配信】の肝は、視聴者の熱狂や集中という「感情エネルギー」を、異世界での活動に必要な「魔力」として逆輸入することにある。


地球の巨大なネットワークと無数の人間を、彼一人の魔力インフラとして利用しているのだ。


しかし、魔石の換金はまだ行っていない。この世界で生きていくためには、ギルドで正式に冒険者登録を済ませる必要があった。


蓮は部屋に備え付けられていた古びた地図を広げた。


フォルトナ市内の地図だ。


ギルドは市の中心部に位置し、そこへ行くにはいくつかの魔導具店や武器屋の前を通る。


「まずは魔石を換金して、最低限の装備を整える。それが今日の目標だ」


蓮は錆びたショートソードを布でくるみ、魔石数個を小さな革袋に入れ、アパートを出た。


フォルトナ市街地は、石造りの建物が並び、活気に満ちていた。


人々の服装や馬車の多さから、前世のヨーロッパ中世のような風景が広がる。


目的地である冒険者ギルド「銀の盾」は、ひときわ大きく重厚な石造りの建物だった。


扉を開けると、内部は異様な熱気に包まれていた。


全身に金属鎧を纏った戦士、ローブ姿の魔術師、軽装で俊敏そうな盗賊たちが、依頼掲示板の前で騒ぎ、酒場で大声で語り合っている。


「これがギルドか...」


蓮は圧倒されそうになるのをこらえ、受付カウンターに向かった。


カウンターには、赤い髪の真面目そうな女性職員が座っていた。


「新規登録ですか? こちらに名前を記入してください」


蓮は渡された羊皮紙に「レン」とだけ書き記した。


「レン様ですね。あなたの適性を見るために、簡単なステータス測定を行います。この水晶に手をかざしてください」


蓮が言われるがままに水晶に触れると、水晶は一瞬強く発光し、小さな魔導紙が吐き出された。


ギルド職員はそれを見て、眉をひそめた。


「...クラス【無職】。レベル3。魔力(INT)は高いですが、他の基礎ステータスが平均を下回っていますね。レン様、戦闘経験は?」


「昨日、灰色の石窟でスライムとコボルトを数体討伐しました」


「灰色の石窟? あの新人殺しとも呼ばれる迷宮区で? しかもコボルトを...」


職員の目つきが訝しげになる。


常識的に考えれば、レベル3の【無職】がコボルトを討伐できるはずがない。


「正直に申し上げます。あなたの提示した情報は、ギルドの常識からかけ離れています。しかし、規定により登録は可能です。あなたは【Fランク冒険者】として登録されます。初期ランクです。魔石の換金は、こちらの窓口へどうぞ」


蓮は無表情を貫き、魔石換金窓口へと移動した。


魔石換金窓口で、蓮は昨日得たスライムの魔石4個と、コボルトの魔石1個を提示した。


窓口の職員が鑑定用の魔導具にかざすと、すぐに結果が出た。


「スライム魔石、4個で銅貨10枚。コボルト魔石、1個で銅貨25枚。合計、銅貨35枚です」


銅貨35枚。

この世界での相場から見て、一食の食事が銅貨3枚程度だとすれば、数日分の生活費にはなる。


蓮が銅貨を受け取った瞬間、ギルドの奥、酒場の一角から鋭い視線を感じた。


彼は動かずに、視線が向けられた方向を、魔力映像機で解析した。


情報解析:


対象: 女性冒険者

名前: リリアナ・フェンネル

クラス: 【剣士】

レベル: 32 ランク: B

状態: 警戒、疑念


リリアナは、長い赤髪をポニーテールにし、軽装の革鎧を身につけていた。


その瞳は獲物を観察するハンターのようだ。


リリアナは小声で隣にいる男に話しかけている。


「...あれが、あの新人よ。レン。本当に貧弱な装備ね。あれでコボルトを倒したなんて、信じられないわ」


蓮は、自身の【異世界配信】の解析スキルが、距離や障害を無視して、視界内の「視聴者が関心を持つ可能性のある対象」の情報を抜き出す機能を持っていることを知っていた。

リリアナが彼に強い関心を向けていることが、この情報の顕現に繋がっている。


蓮はリリアナと目を合わせることなく、そっとギルドを後にした。

彼の目的は目立たないこと、そして生存に必要な資金と情報を得ることだ。


(配信の内容は、ギルドの常識を逸脱している。目立ちすぎると、このユニークスキルを狙われる可能性がある)


彼は悟った。

彼の配信は、この異世界の常識とは相容れない「異端」なのだ。

彼は、地球の視聴者を味方につけながら、この世界のルールの中で、慎重に生き残る戦略を練る必要があった。


ギルドを出た蓮は、すぐに次の配信の準備に取り掛かった。

次は、装備のアップグレードと、より多くの視聴者からの「魔力」獲得が鍵となる。


ねえ、今の配信見た?

配信っていうか、現実のレンさんのこと!


レンさんってば、本当に異世界で冒険者になっちゃったんだよ!

ギルドって、ファンタジー小説でしか見たことない場所だよね。リリアナさんっていう、めっちゃ強いBランクの剣士にガン見されてて、ちょっとヒヤヒヤしたけど!


レンさんの「異世界配信」スキル、本当にチートだよね。視聴者が見てくれるだけでMPが回復するとか、もう最強の課金システムじゃん!

しかも、あの解析画面! 敵の弱点とか、リリアナさんのステータスまで見えちゃうとか、ずるすぎる!


銅貨35枚かあ...。

なんかリアルな生活感があって面白い。


でも、いくらレベルアップしたとはいえ、装備が錆びた剣一本じゃ心細すぎるよ!

私たちがもっとコメントして、もっとレンさんを応援しないと。それがレンさんの命綱なんだから!


よし、次の配信は絶対リアタイする。

みんな、レンさんを死なせないために、絶対見てね!


異世界配信者レンのサバイバルは、ここからが本番だよ!


アリス (地球の視聴者・レンの熱狂的ファン)

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