第十六話:五星陣、現る!リリアナの単独迎撃
第一節:塔を貫く新たな闇
フィリスの特訓から帰還したリリアナは、塔の最上階、セレスの研究室の警備に当たっていた。レンは解析台に、勇者アリスは塔の魔力増幅装置の横で待機している。リーナはリリアナの装備の最終調整を行っていた。
その時、塔全体を覆うセレスの防衛障壁に、まるで鋭利な針が突き刺さるような、異様な魔力の侵入が検知された。
「セレス! 新たな侵入者よ!」リリアナが叫んだ。
セレスは解析装置から目を離さず、冷静に指示を出した。
「周波数解析完了。以前のザックとは異なる、極めて巧妙な**『魔力撹乱』**を主体とする刺客だわ。勇者アリス、迎撃の準備を。リリアナ、あなたは塔の階段を防御して。レンの解析情報を待ちなさい」
レンの魔力映像機に、新たな情報が展開された。
情報解析: 対象: 五星陣の刺客(影の円卓) 名前: グリム・ヴァイス クラス: 【虚空の魔術師】 レベル: 72 スキル: 【魔力撹乱】Lv.MAX、【空間掌握】Lv.5、【幻影創造】Lv.MAX 弱点: 心眼による予兆の把握、純粋な肉体の打撃。
「魔力撹乱と幻影...魔法特化型か」レンは即座にリリアナへ情報を伝達した。「リリアナ! 相手は【虚空の魔術師】! 魔法に頼るな! 相手の魔力そのものを信じるな! 予兆を捉え、肉体の動きを狙え!」
リリアナは、フィリスから教わった「心眼」の重要性を思い出した。武の達人フィリスが唯一の弱点として教えてくれたのは、「魔法やスキルに頼らない、純粋な肉体の動き」だった。
「承知!」
リリアナは階段の踊り場へと駆け出した。彼女は、勇者アリスの神聖魔法による広範囲迎撃を邪魔しないよう、あえて一人で刺客を食い止める決断をした。
第二節:心眼の覚醒と虚空の魔術師
塔の階段を駆け上がってきた男、グリム・ヴァイスは、黒いロングコートを纏い、顔には不気味な仮面をつけていた。彼の周囲の空間はわずかに歪み、魔力の流れが不自然に途切れている。
「たかがBランクの剣士が、我ら五星陣に立ち向かうか。無駄な足掻きだ」グリムは嘲笑した。
グリムが指を鳴らすと、階段の周囲の空間が歪み、無数のリリアナの幻影が出現した。
「フン! まずは自分の居場所すら見失わせてやる!」
リリアナは、以前ならこの幻影に惑わされ、魔力で広範囲攻撃を仕掛けていただろう。しかし、フィリスの特訓がそれを許さなかった。
(落ち着け。心眼を使え。目の情報、魔力の情報、全て捨てる!)
リリアナは剣を収め、ただ道着で教わった『不動の体軸』で立ち尽くした。そして、全身の皮膚と精神を研ぎ澄ませ、グリムの「呼吸」を読み取った。
幻影の群れの中、ただ一箇所、魔力撹乱が起こっているにも関わらず、呼吸の予兆が微かに途切れた場所があった。
「そこだ!」
リリアナは、リーナの『魔力最適化アーム』を起動させ、フィリス流の体軸を通した、一切の無駄がない一歩を踏み出した。その速度は、以前の彼女のAGIを遥かに凌駕していた。
彼女は幻影を全て無視し、ロングソードを、予兆の途切れた一点へと突き出した。
第三節:人の剣
リリアナの剣は、幻影をすり抜け、本物のグリム・ヴァイスの胸元を正確に捉えた。
グリムは驚愕した。「バ、馬鹿な! この魔力撹乱の中で、どうやって本体を...!」
リリアナの剣は、グリムのコートと皮膚をわずかに切り裂いた。グリムは魔術師であり、肉体的な防御力は極めて低い。致命傷ではないが、確かな「破壊」が彼を襲った。
「その剣は、魔力ではない。純粋な『人の技』...!」
リリアナは、初めて実戦で「心眼」が覚醒したのを感じた。
「これは、フィリスの特訓と、レンの情報解析の結晶よ!あなたの魔法は、私の肉体には通用しない!」
グリムは即座に距離を取り、空間を歪ませて巨大な闇の魔弾を生成した。
「面白い! この魔弾を、肉体だけで避けられるか!」
リリアナは、魔弾の「発射の予兆」を心眼で読み取り、フィリスに教わった「最小の動き」で体をひねり、魔弾を紙一重で回避した。魔弾は塔の石壁を粉砕した。
レンは解析台から、リリアナの覚醒を確信した。
「リリアナの戦闘スタイルが、グリムの弱点を完全に突いています! アリス、セレス、今がチャンスです!」
リリアナの単独迎撃は、Sランクパーティーを襲うはずだった五星陣の刺客に対し、見事に時間を稼ぎ、その弱点を露呈させた。塔の最上階では、勇者アリスが神聖な光を、セレスが解析完了した増幅魔力を放つ準備を整えていた。
リリアナさん、かっこいい!
配信画面のコメント欄も、リリアナさんの戦闘シーンで「心眼すごい!」「武術チート!」って大盛り上がりだよ!
私も神聖剣術の準備を整えていたけれど、リリアナさん一人で、あの五星陣の魔術師の弱点を引き出してくれたなんて、本当に頼もしいよ! フィリスさんの特訓は伊達じゃないね!
あの【虚空の魔術師】グリム・ヴァイスは、本当にずるい! 魔力や視覚に訴えかけてくるタイプの敵は、私の【聖なる加護】でなんとかなるけど、リリアナさんの「心眼」と「武術」がなければ、私たちは彼の幻影に惑わされ続けていたはずだもん。
セレスさんが解析してくれた情報と、リリアナさんが命がけで暴いてくれた弱点。
次は、私の出番だね! 聖なる剣で、あの魔術師を闇に還してあげる!
レンさん、私もリリアナさんも、あなたの配信と情報解析で最強になってるよ! これからもよろしくね!
アリス・ライトハーヴェスト (異世界転生勇者・リリアナを応援する者)




