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始まりのダンジョン配信者  作者: 沼口ちるの


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第十四話:恐怖の特訓!

第一節:Bランクの焦燥

Sランク大魔導師セレスの塔に、勇者アリスという絶対的な戦力が加わったにも関わらず、リリアナは焦燥感を覚えていた。


「このままでは、私は完全に足手まといだわ」


研究室には、捕縛されたザックが黒い魔力障壁に閉じ込められており、リリアナは彼を見下ろしながら呟いた。


レンは解析台から彼女に語りかけた。


「リリアナの持つ実戦経験とギルドとの繋がりは不可欠です。それに、勇者アリスは闇属性に特化した戦力。物理的な敵や、魔力に耐性を持つ存在には、あなたの剣術が必要になります」


「言葉ではそうでしょうが、現実は違う。私はBランク。ザックは闇の力でレベル50まで跳ね上がり、Sランクの圧力で一蹴された。次に現れる『五星陣』の刺客は、私を容赦なく排除するでしょう」


リリアナは自分の力を引き上げる必要があると悟った。しかし、セレスは魔導具の研究に夢中であり、アリスの戦闘技術は次元の違うものだ。


リリアナはリーナに目を向けた。


「リーナ。あなたはセレスの魔導具開発を手伝っているようだが、あなたの魔導具師としての能力は、戦闘補助にも活かせるのか?」


リーナは工具箱を抱え、きっぱりと答えた。


「もちろん! 私の専門は魔力伝導体の最適化。リリアナお姉さんの剣や鎧に、体内の魔力を効率よく流すための回路を組み込むことはできるよ。でも、私の作った回路を活かすには、お姉さんの体がその膨大な魔力と衝撃に耐えられるようにしないと」


リリアナは頷いた。「つまり、肉体の強化が必要ということね」


「うん。肉体を鍛えるなら...私のお姉ちゃんに頼むしかないよ」リーナは突然、顔を青ざめさせた。「フィリスお姉ちゃんは、この街で全ての武道を極めた達人。でも、特訓はすごく、すごく怖いんだ…」


第二節:全ての武道を極めし達人、フィリス

リリアナはリーナの姉、フィリスがいるという街外れの道場へと向かった。リーナは工具箱を抱え、まるで処刑場に向かうかのように震えている。


道場は、質素な木造建築で、セレスの塔のような魔力の気配は一切なかった。


道場の奥から現れた女性は、リリアナの想像とは全く異なっていた。フィリスはリーナとよく似た顔立ちだが、髪をきっちりと結い上げ、無駄のない筋肉を纏った道着姿で、その眼光は研ぎ澄まされていた。彼女のレベルは解析台で確認するまでもなく、極めて高かった。


情報解析: 名前: フィリス クラス: 【武術の達人ユニーク】 レベル: 65 スキル: 【無手の極意】Lv.MAX、【心眼】Lv.MAX、【身体強化】Lv.MAX 状態: 観察、静穏、一切の油断なし


「…フィリスさん。フォルトナ冒険者ギルドのBランク、リリアナです。緊急の事情で、あなたに肉体強化の特訓をお願いしたい」リリアナは緊張しながら言った。


フィリスは表情一つ変えず、リリアナの全身を観察した。


「リリアナ。あなたは魔力に頼りすぎている。身体の重心が定まっていない。魔力の爆発的な出力に耐えられるだけの、基礎構造がない」


フィリスは、レンと同じように、リリアナの欠点を一瞬で見抜いた。


「私の特訓は、『恐怖』と『痛み』の二つが柱だ。武道とは、ステータスやスキルに頼らない、純粋な肉体の最適化。覚悟はいいか?」


リーナは涙目でリリアナの袖を引いた。「お姉ちゃん、本当にやめた方がいいよ…」


リリアナは意を決し、剣を置いた。「お願いします。この世界の危機のため、どんな痛みでも受け入れます」


第三節:恐怖の身体最適化

特訓は即座に開始された。それは、リリアナの想像を絶するものだった。


フィリスは、リリアナに一切の武器を持たせず、ただ道場の板張りを走らせることから始めた。しかし、その走り方は、フィリスによって数ミリ単位で矯正された。


「違う。魔力を使わず、地面を蹴る重心移動。あなたは、一瞬の魔力強化で回避する癖がついている。それでは、魔力が切れた瞬間、ただの的だ」


フィリスは、リリアナが少しでもバランスを崩すと、指先一つで彼女の急所を的確に突いた。痛みは一瞬だが、リリアナの体内の魔力回路が強制的にシャットダウンするような感覚だった。


次に、リーナの出番だった。


「リーナ。お前の役割は、リリアナの肉体が限界を迎えた瞬間に、私が設計した『痛覚遮断・魔力安定化回路』を皮膚に直接組み込むことだ。失敗すれば、リリアナの肉体は過剰な魔力に耐えられず、爆散する」


「ひっ…わかったよ、お姉ちゃん!」


リーナは震える手で、リリアナの脇腹に小型の魔導針を刺し、特訓で疲弊しきったリリアナの体内に、安定した魔力を流し込み、一時的に身体能力を増幅させた。


リリアナの体は悲鳴を上げたが、リーナの精密な魔導具操作によって、その痛みは耐えられるレベルに抑えられ、肉体だけが極限まで鍛え上げられていった。


レンの配信画面には、リリアナが純粋な肉体的な鍛錬で、限界を超えていく様子が映し出されていた。


視聴者「アリス」: リリアナさん、すごい! 根性があるよ!


視聴者「匿名F」: 武術の達人って、スキルよりもエグいな。これぞリアル特訓。


数時間の特訓の後、リリアナは泥のように倒れ込んだ。しかし、彼女の身体には、以前にはなかった、魔力と肉体の完璧な融合の感覚が生まれていた。


「...フィリスさん。ありがとうございます」


フィリスは無言で、リリアナの前に一本の木刀を置いた。


「明日から、対人戦闘の極意を教える。お前の剣術は、ただの棒振りに過ぎない。全てを捨てて、肉体と魂で剣を握れ」


リリアナの身体は、闇の帝王の眷属と戦うための、新たな舞台へと昇華し始めていた。


フン。レベルやスキルばかりに頼る、軟弱な冒険者がまた一人来たかと思ったが、あのリリアナという女剣士には、まだ芯が残っていた。


あの小さな妹、リーナの言う「魔導具」とやらで、身体を瞬間的に強化しているようだが、肉体の構造が脆弱では、それはただの自滅行為だ。


武道とは、魔力やスキルに頼る前に、まず自身の肉体という最も優れた魔導具を最適化すること。


彼女の剣術は、見た目こそ美しいが、殺気が希薄で、力の流れが散漫だ。相手の攻撃を予測する心眼の基礎もなく、ただの反射で動いている。それでは、あの闇の力で強化された『五星陣』の連中には通用しないだろう。


だが、彼女の『絶対に負けられない』という魂の渇望は、本物だった。


私は、あのリリアナの剣に、武道の極意を叩き込む。それが、私の唯一の妹であるリーナを守るための、最も確実な方法だからだ。


明日からは、手加減はしない。彼女が生き残るか、死ぬかは、彼女自身の肉体が決めることだ。


フィリス (武術の達人・リーナの姉)

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