第十三話:セレスと勇者アリス:新たな協力関係
第一節:Sランクの譲歩
セレスの研究室。勇者アリスの光の魔力によってザックは無力化され、闇の帝王から与えられた力が浄化されていく。
アリスはザックを倒す直前で剣を止め、セレスを振り返った。
「セレス・リーゼロッテさん。あなたはレンさんを実験台にしているようですが、彼のユニークスキルは、この世界に光の勇者を呼び出すほどの次元の扉を開いています。彼の安全を確保しないと、次元が不安定になり、もっと危険な存在が流入する可能性があります」
セレスは、アリスのレベル100という異常なステータスと、彼女が放つ「世界を安定させる」タイプの魔力に、すぐに状況の重要性を理解した。研究者としての知的好奇心が、彼女の独占欲を上回ったのだ。
「フン、次元の不安定化ですって? 面白い。私が想定していたよりも、この次元間魔力流通は複雑な代物だったようね」セレスは障壁を解除し、リリアナを解放した。
「リリアナ、その愚かなDランク(ザック)を縛りなさい。勇者アリス。あなたの言う通り、レンは今、この世界で最も重要な『次元の楔』だわ。彼の安全は、私の研究、ひいては世界の安定に直結する。一時的に、私の独占欲は棚上げするわ」
リリアナは解放され、すぐにザックを捕縛用の魔力鎖で拘束した。ザックは闇の力が浄化され、以前のDランクの弱々しい状態に戻りつつあった。
第二節:パーティーの再編と役割分担
セレスは、レン、リリアナ、リーナ、アリスを解析台の前に集めた。
「レン。あなたの持つ情報は、闇の帝王が最も欲するものよ。あなたの周波数帯を解析した研究員は、恐らく『影の円卓』に所属している。我々Sランクの調査では、その組織は長年、次元の歪みを利用した非合法な活動を行っていた」
アリスが強く頷いた。
「影の円卓は、私の元の世界でも存在した、次元を超えて悪意を振りまく組織です。彼らの目的は、レンさんのユニークスキルを利用し、闇の帝王をこの世界に完全召喚することにあります!」
レンは冷静に状況を整理した。
「つまり、私の配信が、勇者アリスという『光』だけでなく、闇の帝王という『影』を呼び寄せる触媒になっている、ということですね」
セレスは研究者らしく、すぐに実務的な役割分担を提案した。
レン(次元の情報源): 塔の最上階で配信を継続。視聴者からの情報と魔力を最大限に供給し、敵の解析を専門とする。
アリス(光の矛): レンを護衛し、闇の勢力の迎撃を専門とする。彼女のレベル100の力は、闇の帝王の眷属を浄化する上で最も有効。
リリアナ(実戦経験): ギルドへの情報提供および、アリスとレンの護衛。戦闘においては、アリスの聖なる力で無効化される敵の物理的な抑え役。
リーナ(魔導具支援): セレスの助手として、魔力増幅装置やトラップの設置、魔導具の保守・開発を担当。
セレス(戦略と技術): 塔の防御システムを強化し、レンのユニークスキルを解析・応用して、次元の不安定化を防ぐ魔導具の開発に集中する。
リリアナは渋々ながらも、その合理性に同意した。
「...まさか、私がSランク大魔導師と、異世界勇者の護衛をすることになるとはね。レン、あなたのせいで、私の冒険者人生はめちゃくちゃよ」
第三節:視聴者への協力要請
レンは、新たな防衛ラインが確立された研究室から、再び地球の視聴者へ向けて語りかけた。
「視聴者の皆さん。今、このアルカディアは、次元を超えた巨大な闇の組織に狙われています。勇者アリスの召喚は、皆さんの熱狂的な魔力供給によって実現しました」
レンは、研究室の壁に設置された巨大な魔力解析画面を配信に乗せる。そこには、闇の帝王の魔力周波数の特徴が図示されていた。
「この闇の帝王の魔力周波数を打ち破るには、圧倒的な『情報』と『光』の魔力が必要です。皆さんのコメント、応援、そして熱狂的な『情報』を、勇者アリスとセレスが利用します」
視聴者「匿名X」: 闇の帝王の周波数! こんな情報まで開示するのか!
視聴者「アリスファン」: アリスちゃんに協力するためなら、いくらでもコメントするぞ!
レンの配信は、単なるダンジョン攻略から、次元の命運を賭けた壮大な戦略会議へと変貌した。地球の視聴者という無限の情報源を背景に、レンたちは闇の帝王を迎え撃つ準備を整えたのだった。
信じられないわ。私は今、Sランクの塔の最上階で、異世界から来た勇者と、自分の弟子にしたいぐらいの天才魔導具師と、そして魔力電池になったあの新人、レンを守っている。
ザックは完全に闇に堕ちて、恐ろしい魔物に変貌したわ。あの憎しみに満ちた目...。レンの持つものが、彼をここまで狂わせたのよ。
勇者アリス...彼女は本当に眩しすぎる。レベル100なんて、冗談じゃなくSランクのクライヴをも上回る数値よ。でも、彼女は純粋で、使命感だけで動いている。そこが危ういけれど、彼女の力が必要なのも事実だわ。
セレスの態度は相変わらず気に入らない。レンを自分の研究対象としてしか見ていない。
だけど、私にも冒険者としてのプライドがある。この街の危機に、逃げるわけにはいかない。レンが呼び込んだ光と影の戦いの渦中で、私は彼らを守り、この狂った状況を生き抜いてみせる。
次は、ザック以外にも『五星陣』の刺客が来るはず。気を引き締めないと。
リリアナ・フェンネル (Sランク護衛担当・Bランク剣士)




