星空の記憶
無限に広がる光の洪水。
宇宙から地球への贈り物。
「タクちゃん、綺麗だね。また明日も見にこようね」
「もちろんだよ。ユイこそ忘れるなよ」
「その言葉、タクちゃんにそのままお返ししますわ」
「何だよ、その話し方は。オレは約束を忘れないぞ」
「うん、約束したからね」
「おう、まかせておけ」
それがユイを見たのが最後だった。
そうだ。
ユイは、翌日にこの町を去っていた。
「おい、タク。起きろよ。授業が始まるぞ」
「ヒロ・・・か」
「寝ぼけてるんじゃないぞ。次は実験棟での実習だぞ」
「やばい。ヒロ、走ろう」
「おう」
どうやら、オレは夢を見ていたようだ。
忘れていた記憶。
ユイ・・・か。
だが、オレにはその顔が思い出せなかった。
授業が始まる。
4人ずつのグループに別れての実験だ。
高校3年生の秋。
普通なら、受験勉強で忙しいはず。
オレの通う高校。
大学の付属校。
本人の希望があれば無条件で、誰でも付属大学へと進むことが出来る。
これは理事長の教育方針らしい。
受験勉強に費やす時間を本来の学ぶ時間へとするためだ。
オレとヒロは付属大学への進学が決まっている。
「なあ、タク。隣のクラスに転校生が来たらしいぞ。
転入試験で、ほぼ満点での入学だ。しかも、美人らしい」
「情報が早いな。ヒロの耳はロバの耳か」
「何言ってるんだよ。これは男たるものの使命だ」
「ヒロ、それは、お前の使命だと思うぞ」
「こら!、そこの2人。授業に集中しなさい」
怒られてしまった。
「は~い」
ヒロののん気な返事にオレは肩をすくめた。
授業終了のチャイムが鳴る。
「では、今日はここまで。皆、寄り道するんじゃないぞ」
オレとヒロには部活がある。
ヒロはバスケ部。
オレは・・・天文部だ。
運動は苦手な方ではない。
今でも体育会系のクラブから入部の誘いがある。
でも、オレは星が好きだ。
天文部。
部員は部長のオレを含めて6人。
人数は関係ない。
皆、星が好きなんだ。
今日・・・正確には今夜。
週に1度の天体観測がある。
天文部の活動は夜。
「はい、今夜は転校生で、新入部員を紹介しますね」
オレのクラスの担任でもあり、天文部の顧問でもある、女教師だ。
その明るさから、人気もあり、信頼も厚い。
「皆さん、はじめまして。・・・ユイです。星が大好きです。よろしくお願いします」
これがヒロの言っていた転校生か。
確かに美人だ。
綺麗で可愛くもある。
「部長の・・・タクです。もしかして?」
「そうだよ。タクちゃん」
「ユイ?」
「タクちゃん、約束だったね」
「そうだったな」
星の光のシャワーが降って来た。
「綺麗だね」
「ああ、綺麗だ」
「私、星もタクちゃんも大好き」
「オレもだ」
「うん」
「オレも星とユイが大好きだ」
「うん」
星空の記憶