7 温泉ふたたび
温泉ふたたび
泉樹さんは縋るような顔でルウトに何とかならないかと頼み込んでいる。
ルウトは困った顔で「難しいよね・・」と頭を掻いている。
ルウトのそばにコフィがあったので飲んでいいかと問うと、俺が帰ってきたことにようやく気づいたらしく
「あ、お帰り、えっと、ああ飲んでいいよ」とあわてて答え、目線を手元のインフォグラスに戻す。
コフィだと思ったがきな粉の香りがした。・・・黒豆茶だった。
暗めの赤色の下地に金の細い線で何かが描かれているが、一部剥がれている。
どっかで見たことがあるメガネだと思ったが、泉樹さんの「お嫁に来たとき、おばあちゃんから貰ったものなの」というので思い出した。
「ああ、万珠のかあ!」なつかしいなあと、つい大きな声が出てしまった。
「えっ、シウト、知ってるの?」二人が豆鉄砲くらったみたいな顔でこっちを見る。
「知ってるも何も、前に世話になったときのお礼に模様をつけてあげたんだよ」
「万珠はオシャレさんだったからな。インフォグラスって既製品で画一的なデザインだろ、カッコよくしたら万珠が喜ぶと思ってな、枠とつるに模様を描いたんだ。S-TALに乗せてもらったお礼。」
まだ持ってたんだなあ。「40年くらい前かなあ。風道さんはまだ影も形もなかったよ・・・」
「で、何を悩んでるんだ?」
ルウトの話では、泉樹さんが受け継いだインフォグラスはDLP素子に問題があって表示に線が入るらしく、以前この町を訪れたディモスが表示設定を工夫して目立たなくはしていたらしいのだが、それ以外にも色々と機能不全が蓄積しているらしい。
泉樹さんは万珠に憧れていて、同じようにS-TALの操縦資格を取りたいらしいのだが、シミュレィタ訓練ではS-TALのアビオニクス画面をインフォグラスにリンクさせて表示しなければならず、無線リンクまで怪しい現在の機能不全状態では使えないとのこと。
物欲が乏しいルウト地蔵としては「これはこれで置いておいて、S-TAL用に新調すれば?」とのこと。
新しいものは少し軽くなっているし強度も高いためおすすめだそうだ。色も2種類から選べる。
でもまあ、そうじゃないよな。一緒に飛びたいんだよ。
「ルウトなら部品交換で何とかできないの?」
「うん・・AOIに照会したんだけど、ちょっと前に部品の更新があってね、大きさと接点の配置が合わないんだ。」
「ちょっと前の仕様変更なら、旧部品が支調房に残ってんだろうに」
「サピエンス用のデバイスは10年くらいで部品がなくなっちゃうんだよ」
「・・・早いな、ちなみにちょっと前ってどんだけ前?」
「22年」
いちど泉樹さんの顔を見てからルウトに向かって「おまえ、さっきからツッコミどころ満載だけど、そういうところだぞ!」と窘めておく。
僕たちにとって20年くらいはちょっと前な感じだが、サピエンスの22年と言えばひと世代だ。
ルウトの頭の上に?がたくさんついていて、「2色じゃ駄目なのか・・」とか言っている。こいつ、わかってないな。
それにしても腹が減った。そういえば俺だけ駄菓子を食べてない。どんぐりsに買ってあげて満足してしまっていた。
ちょっと考えて、名案が浮かんだのでとりあえず「昼飯にしよう!」と言って、お悩み相談終了を宣言する。
そして昼ごはんを食べてから、高らかに宣言する「温泉に行こう!」
未来のAI像は、多分、攻殻機動隊(地上波放送)のタチコマの影響が強いです。
誤字脱字、物語の矛盾などがあれば、修正がんばりますので教えてください。