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怖い話

ただいま

作者: 腹黒兎


 玄関のドアが開く音がした。息子が帰ってきたらしい。

「おかえりー」

 足音はリビングに入ることなく、手前の階段を上がっていく。

 中学二年生になった一人息子は絶賛思春期中らしく、日常の挨拶さえろくにしない。

 二階のドアが閉まる音を聞いて、ふぅと息を吐く。

「まったく。ただいまぐらい言ったらどうなのよ」

 挨拶はしないくせに「小遣いちょうだい」とか「炭酸買ってきて」とかはハッキリ言うんだから。

 帰ってきてもご飯とお風呂やトイレぐらいしか部屋から出てこない。他のママ友もこの年齢の男の子は大体そんな感じとは言うけど。

「なんだか寂しいわ〜」

 私もいい加減子離れしなくちゃね。

 読みかけの雑誌に視線を落とせば、アラフォーのメイク術という記事がある。

 四十一ってまだアラフォーかしら?

 迷っていると玄関のドアが開く音がした。

「ただいまー。なんか食うもんある?」

 足音と共に聞こえてきた声は間違いなく息子のものだ。

 リビングに現れたのはどこからどう見ても、朝送り出した息子だ。

「お、おかえり…?」

「ねー、なんか食いもんない?腹減った」

「え?あ、ああ、カップ麺ならあるわよ」

 鞄を担いでリビングに入ってくると、手を洗ってカップ麺を探しだす。

「いま、帰ってきた、のよ、ね?」

「は?当たり前じゃん」

 何言ってんの?と怪訝そうな息子の顔は嘘をついてるようには見えない。

「お湯あるよね」

「え、あ、うん」

 開けっぱなしのドアから二階へ続く階段を見る。


 じゃあ、さっき二階に上がって行ったのは、誰なの?


 ぞわりと寒気が全身を襲った私を嘲笑うかのように二階からカタンと音がした。


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