表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

優しい母

作者: シルバック

お題 永久歯、立ちっぱなし、お弁当


最近私の息子は乳歯から永久歯に生え変わった。綺麗に生えそろっていた歯に隙間が空いてるのを見て無邪気な印象を持った。その時に私が子供の時のことを思い出した。

私は物心つく前には親が離婚していた。後から聞いたのだが、父がとてもくず男だったらしい。DVはするし、金遣いも荒いし、愛想をつかした母が家を出て行ったのだと大人になってから言われた。

母が仕事で家にあまりいなかったので、とても寂しかったことを今も覚えている。

小学生になって初めての運動会、母はお弁当たくさん作って見に行くねと言っていた。そういわれたとき過ぎうれしい気持ちになった。運動会当日、私は運動が苦手で徒競走でこけてしまった。恥ずかしい気持ちとけがをしたのが痛くて、動けずにいると、母の声が聞こえてきた。

「あおい、がんばれ!」

その声はとても大きく、私に勇気を与えてくれた。母親の応援のおかげでゴールをすることができたが、残念ながらビリだった。母親は、私が戻ってくるのを退場門のところで待っていた。

戻ってくると優しく抱きしめてくれた。

「あおい頑張ったね。偉いよ」

私は恥ずかしかったけど、すごいうれしい気持ちで胸がいっぱいになった

「恥ずかしいし、苦しいよ」

と私が言うと母ははっとしたように

「ごめんね。」と優しい声で言った。

徒競走が終わり、リレーや玉入れなどが終わりお昼休憩の時間になった。僕は母を探した。

数分探して母は遊具がたくさんある場所にブルーシートを敷いて待っていた。

私は母に聞いた

「今日のお弁当の中身は何?」

母は答えた。

「今日はあおいがすきな卵焼きと唐揚げ、ハンバーグとかたくさん作ったよ。」

お弁当の中身を見ると、僕が好きなものがたくさん敷き詰められていた。

私はたまご焼きを食べた。とてもおいしかった、僕の好きな甘い卵焼き。

全部手作りで朝早く起きて作ってくれたんだなと思うとすごいうれしかったし、仕事で疲れてるのに作ってくれたことに少し罪悪感を覚えた。

時間が刻一刻と進んでいく。母とゆっくり話せる時間も終わってしまう。もうお昼休憩の時間が終わてしまうなぁと思って残念な気持ちになる。

私はさみしい気持ちを隠しながら

「もう行かないとだから行くね。」と元気に言った。

「頑張っておいでちゃんと見てるからね。」といった。


午後は綱引きと大縄跳びと閉会式がある。大繩では引っかからないように頑張って学年で一番になった。

すごくうれしかった。綱引きは頑張ったけど二位だった。

やっと運動会が終わって母と一緒に帰っていると。

急に母に申し訳なさそうに、「ごめんね。」と言われた。

私はなんで誤ったのかわからなかった。

「なんで謝るの?」

と困惑しながら聞いた。

話をきくと仕事で家を空けることが多くてさみしい思いをさせてることが申し訳ないとずっと思っていたらしい。

私は安心させたくて母に言う

「大丈夫だよ!確かにさみしいけどままがお仕事頑張ってるの知ってるし、お仕事も私のために頑張ってくれてるんでしょ?じゃあ大丈夫!!」

母は安心したように見えた。


そのあとは母と手をつないで楽しく話しながら一緒に帰った。

「お母さん!」

そのことを思い出していると息子に声をかけられて我に返った。

大人になって私は結婚して息子が生まれた。母の気持ちがこどおのころよりもわかるようになった。

今日は息子の初めての運動会、息子が好きな卵焼きと唐揚げ、ハンバーグを作って息子の小学校へ向かう。

全部母が教えてくれたものだ。


徒競走の時、私と違って運動ができる息子が一等賞でゴールテープを切った。

息子が退場してきたとき、私は母と同じように息子を抱きしめ言った。

「頑張ったね。偉いよ。」


私はちゃんとなれているだろうか。私の母のような優しい母親に。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ