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「ムンさん困ります。僕は、爵位を継ぐ気はありません。」
「はい。それでも、リートルテ家の一員ですよね。」
「今は、です。」
「え・・・?」
「僕は時が来たら、冒険者として暮らしていくつもりです。この後、登録にも行きます。僕は今すぐにでも、と思っていたのですが、父上から10才になるまでは、と言われているだけなのです。」
「当たり前だろう!10才だって、まだ学園にいる年齢だぞ。可愛い我が子を、ホイホイと外に出せるか!」
父上も親ばか・・・でも、前世ではこんな気持ちなかったから、本当にうれしい。
「父上。ありがとうございます。」
「当たり前だよ。」
頭を撫でてくれる。
「ずっと、家に居てもいいんだよ?」
と、兄上も頭を撫でてくれる。
気持ちが嬉しい。それだけで、生きていけそう。
「坊主、お前は利口だなっ」
と、さっき声をかけてくれた第二隊の団長さん。
「ありがとうございます。」
「俺は第二団、団長のダンだ。一応隣のルートルテ辺境伯の三男だ。よろしくなっ!」
「そうでしたか。よろしくお願いします。」
「ああ、兄貴たちがパーティーに行けず、申し訳ないって言っていた。」
「いえ、お気持ちだけで充分です。それに、ダン様来てくれていたじゃないですか。」
「ははっ、バレてたか。様付けはやめてくれ。性に合わん。」
そう、一応?ダンさんは参加していた。
当主ではないので遠慮してか、目立たないようにしていたし、大っぴらにはルートルテ辺境伯は参加していないとなっていた。
だが、ダンさんのことは覚えていた。
まさか、ルートルテ辺境伯の弟君だとは思わなかったけど。
「まあだからな、貴族間の面倒なことも、多少わかっちまうんだ。5歳でこの才能だ。ノアはまだまだ強くなる。そんなノアを利用しようとするやつもいるだろうな。まさか辺境伯家の中にはいないとは思うが、中央の貴族は守られているにも関わらず、無茶な要求してくるやつもいる。それを危惧して、焦っているんだろう?」
「!・・・はい。」
意外だった。そんなに頭のまわるタイプなのか、と。
「坊主・・・」
ジト目で見るダンさん。あ、これは思ってることバレテマスネ。
「まあ、いいんだが。パーティーのときは、坊主は隙もなかったからな。騎士団の中には、気づかないやつの方が多いからな。」
ヘヘヘ、と笑ってごまかしておいた。
え?あざとい?そうかもしれない。
自信のなかった僕だけど、毎日だくさん愛されて、こんな僕でも自分を好きになってきたよ。