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そんな重々しい空気の中、場違いな声が響いた。
「お待たせ。ノア。」
なんとも自愛に満ちた声。
きっと、あえて明るい空気で声をかけたのだろう。
声をかけた本人、父上は僕を抱き上げる。
「どうしたのだ?」
と、ニコニコしている。
「あ、僕ちょっと失敗しちゃったと思います・・・すみません、父上。」
「ん?何があった?ムン。」
僕にかける声とは違う厳しい声。
「はい。新人がノア様に喧嘩を売り、剣術にて対戦しましたが、惨敗。その後、入隊後1年の者の実力はこの程度なのか、とノア様がおっしゃり、そうですと答えると、ノア様は頭を悩ませておりました。そして、ノア様とリアム様との勝率も教えていただき、リアム様、ノア様の優秀さを皆に知らしめておりました。」
それを聞いた兄上は、僕に手を伸ばし、いいこいいこをした。
「ふむ。さて、今の模擬戦をして、不服だった者はいるか?正直に手を挙げよ。」
シーン・・・
からの、ザッと音が響く。
騎士たちは片ビザをたて跪き、騎士の礼をとった。
「くっくっく。ノア、皆の心をおったな。」
「父上、申し訳ありません。」
「いや、さすがだよ。ノアの言うとおりだしな。近頃は、鍛錬しても強くなるのが、遅くなっているのは事実だ。なんとかせにゃ、いかんだろうよ。」
「それは、そうですね。スタンピートが近いなら、なおさら。」
「ほんとにそうだな。」
「お前たち、各隊交代で魔力と体力を使い切れ。格段に伸びるぞ。」
「「「「「はっ!」」」」
「よし、君。鍛錬の相手になろう。」
あ、さっきの彼。父上にもロックオンされちゃったね。
「はっ、はい!光栄です!!」
「他の者も、模擬戦しろ!リアム、お前も参加しなさい。」
そう言うと父上は僕をおろし、魔法の模擬戦を行う方へ向かった。
どうやら、広大な更地は3ヶ所に区分けされていて、だいたいの場所が決まっているようだ。
「兄上は何に参加されますか?」
「そうだな。ノアが剣術、父上が魔法となると、残りはミックスしかないな。」
「そうでした。僕も見ていていいですか?」
「ああ、もちろん。」
「ヤッタ。兄上の勇士見たい。」
「・・・あああ。弟が可愛い。可愛すぎる。食べちゃいたい。嫁にしたい。」
「え?兄上、僕は男ですよ・・・」
「そんなの女の子の恰好すれば、そこら辺にいる女より断然かわいいだろ?」
「え・・・いやです。僕は、女の子が好きです。」
「ははっ、分かってるよ。」
あれ、兄上って、こんなキャラだったかな???