74
「「「「「ふう。」」」」
誰の溜息だか分からないほど、何人もの人がホッと息を吐いた。
もちろん僕も、その中の一人に入っている。
「お疲れ。危惧したようなことにならず、良かった。」
「ひあ、本当に。皆さま、ありがとうございました。」
と頭を下げた。
家族が頭をポンポンとしていく。
「さあ、ほっとしたが、今日は領地の視察だ。ノア、準備してこよう。」
「はい。父上。」
「準備が出来たら、また玄関へおいで。ゆっくりでいいからな。」
「わかりました!」
そう言い、トーマスと一緒に自室へ戻る。
宰相のお見送りのために着た服では、視察にはふさわしくない。
汚れてもいいような、少しお値段の安く、それでいて安っぽくみえない、装飾のない服へ着替える。
それに、紙、ペンを持って、自作のマジックバックへ入れる。
それからGPSのような機能のある、魔石を持ったら、準備完了だ。
トーマスも着替えるから、それを待っている間に、メイドにお茶を入れてもらい待つ。
ゆっくりでいいよ、と伝えた。
入ってきたばかりの子とかは、色目使って来たりもするけれど、最近は新しく人も雇っていないし、そういう子はいなくなった。
まあ、僕がまだ5歳だからっていうのもあるのだと思うけど。
もちろん、自室のドアは開けたままだし、護衛もいるけどね。
_コンコン_
「ノア様、お待たせしました。」
お茶を飲み終わるくらいのタイミングで、トーマスが帰ってきた。
ほんと、良くできた執事だ。
僕の紅茶を飲むペースも考えていて、”ゆっくりでいい”って言ったから、僕はいつもより時間をかけて紅茶を飲みほしたんだ。
だけど、それでもちょうどいいタイミングで戻ってくるんだもん。
すごいよね。
「トーマス、ちょうどいいタイミングだったよ。」
と、ニッコリ笑えば、「ほんとにもう・・・敵いません。」
と言ったトーマスだった。
そんなトーマスを伴って、玄関に向かう。
父上は、まだのようだ。
そういえば、宰相は帰ったけど護衛はまだいるのは、なんでだろう?