62
「なるほど・・・そういうことですか。ちなみに、貴族籍を抜くのはいつごろとお考えですか?」
「僕は、今すぐでもいいかと思っているんですが・・・」
「いや、認めん。少なくとも学園入学の年齢(10歳)までは、家にいなさい。そのために、洗礼式の後にたくさんの人に協力を頼んだんだ。なに、心配することはない。最悪、一家で国を出ればいいだけだ。」
「ダンテ!!困る!!」
「わかってるよ。ノアを始めとした家族が、悪意にさらされたり、利用されない限りは、この辺境は守ってやるさ。」
「お願いしますよ。とりあえず、一度持ち帰ってその話も陛下とも話して良いでしょうか?陛下の確認はまだだが、私個人の気持ちとしては、私もノア様のことを守りたいです。最大限の防波堤になりましょう。」
「ん?なにが目的だ?」
なんて疑いの目を向けた父上。
「心外ですね。ノア様の人柄、才能に惚れたのですよ。」
「ノアは、やらんぞ。宰相の後継だとか、やめてくれよ。自由に生きてほしいんだ。」
「ああ、わかってるさ。本当に、裏のない言葉のままだから。まあ、でもノア様自身が選んだ時は別の話でしょう?」
「ううっ。それは・・・」
その時、影に隠れたリルが僕をよんだ。
「父上、リルが話したいそうです。出して良いですか?」
「ああ、もちろんだ。」
許可があったので、リルを出す。
『お主が宰相か。我の名はリル。フェンリルだ。ノアが主だ。神の遣いでノアの元にいる。それで、忠告だ。ノアを害するものは必ず排除する。陛下とやらにも伝えろ。ノアを害したら、国が亡ぶと。』
いつもと違うリルに戸惑うなあ。
なんか、偉そうだな・・・
宰相は、目を丸くしていたが、すぐに戻ってきて返事をした。
「はっ!我が国の宰相をしています、ゼン・フィルランダと申します。以後お見知りおきください。ご忠告、しかと賜りました。陛下にも、必ずお伝えします。」
「よろしく。ノア、神様が宰相とご家族とお話ししたいんだって。悪いけど、教会の時みたく少し祈ってみてくれない?」
「うん、わかった。」
同じように膝をつき、祈る。と、まぶしいくらいに光った。
目を開けると、そこにいたのは神様だった。