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「フフッ、悪い悪い。ついな。」
と、宰相はまた笑った。
「父上、どういうことでしょうか?」
兄上が、僕たちを代表して聞いてくれる。
「ああ、すまない。ゼンは、私の学園時代の友人だ。」
「「「え!?」」」
僕ら兄弟が見事にハモった。
「そうなのですか。」
「ただ、今回どんな目的で来るのかは定かじゃなかったから、皆にはそれは伝えず、警戒していたんだ。そのせいで、家族と使用人だけに周知したはずが、騎士たちにも伝わってしまったようで、結果ゼンは針のむしろになってしまったね。すまない。」
「いやいや。この時期ですから。そう思われても仕方ないよ。というより、本来は来月だった視察を早めたのは、ノア様の洗礼式の結果を見て早めたから、あながち間違えではないよ。ただ、何が何でもノア様を連れてこいとか、取り込みなさいということは、陛下も私も思っていません。ダンテのところなら、大丈夫だとは思っていたけど、結果が結果だけに、家庭環境を見たり、領地を見たり、家族や本人が、国によからぬことを考えたりしないか・・・等々を見極めるのが、私の今回の役目です。なので、リアム様や、オリビア様もご心配しないでくださいね。もちろん、奥様も。」
「「「わかりました。(わ。)」」」
「といっても、ノア様には伝わっていないですよね。うーんと・・・」
と、宰相様が簡単な言葉に変えて、僕に説明しようとしているのが分かったので、父上に”理解した”、”この後はいつも通りでいいか”と考えながら、アイコンタクトを取ると、頷いてくれた。
「ゼン。ノアに説明はいらないよ。」
「え?でも、それじゃノア様は安心できないんじゃ・・・」
「ノアには、さっきの説明で充分なんだよ。」
「え?」
「宰相様、理由はわかりました。なので父上のおっしゃる通り、説明は不要です。」
と、急に僕の口調が変わったものだから、宰相は混乱してしまったようだ。
「あ・・・え??」
「悪いな。ゼンの目的が分からなかったから、5歳児らしくと言ってあったんだ。だけど、ノアは大人ともやりあえる知能もあるんだ。イーマスに言わせると、当主になれるほど、言葉・マナーも完璧だ。ちなみに、学園卒業レベルに達している教科もある。」
「ええ!?」
と宰相はついていけてないようだった。