他者視点(教会)
~教会サイド~
今年の洗礼式には、この地域一帯を治め、魔の森や他国からも守っている辺境伯のご子息がくる。
前回の貴族様の洗礼式は、いつだったか・・・
確か、辺境伯の傘下の子爵家のお孫さんだったかな・・・?
とにかく、5年以上は間が空いていて、今回初めて担当する者もいる。
朝からソワソワしたりして、教会自体が落ち着かない。
噂の辺境伯のご子息が到着し、受付している列に並んでいるので、受付の新人の者に声をかけ、すぐに辺境伯ご一家のところへ向かわせた。
すると、連れてくるわけでもなく話しをしている。
新人が何かしてしまったのか、やはり私が向かうべきだったと、ヒヤヒヤしながら急いで向かう。
すると、可愛らしい声だが、威厳に満ちた声で、ここで待つとハッキリおっしゃった。
なぜだろうか?
ああ、人員を割けば、逆に開始が遅くなるからか。
いや、でも違うか?
この様子だと、”特別扱いされたくない”と感じていらっしゃる様子だ。
皆が並んで待っているのに、後からいらっしゃったご自分たちだけが、早くに入場できるのは忍びないという思いのようだ。
弱冠5歳のお子様が、貴族の権利を享受するわけでもなく、ちゃんと考えておられることに、とても驚いた。
その後の洗礼式では、皆がどよめいた。
キラキラと舞う粒子、フェンリル。
ステータスを見なくても分かるほどの神からの寵愛。
ああ、先程の対応といい、この方は素晴らしいお方だから、神からの加護を授けられたのだと。
見送りは総出で行った。
そしてすぐに、このことを王都の教会本部へ伝達するため、馬に乗り、駆け抜けた。