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_コンコン_
「はい。」
「ノアです。」
「入っていいぞ。」
「失礼します。」
「来たか。とりあえず、座りなさい。」
「はい。」
そう言われ、説明を受けた。
昨日の夜に当主だけで集まって、僕のことを話したこと。
内容は、勉強もマナーも、出来すぎているくらいなこと。
魔法も、大変良くできること。
ステータスのこと。神様の加護のこと。
フェンリル様のこと。
僕の希望は、当主にはなりたくはないし、貴族に連なることも不味いと感じていること。
そして、冒険者になると決めていること。
そのために国や王家からも、神殿からも僕を守りたいので、力を貸してほしいとお願いしたこと。
僕のステータスとかの具体的なことは、話してはいない。
ということだった。
「ということだ。勝手に進めてすまない。」
「いえ、父上が信頼なさってる方々ですから。僕に否やはありません。それに僕のために、ありがとうございます。」
「ありがとう。そう言ってくれて、助かるよ。オリビアから、怒られてしまってね・・・それでな、当主方に集まってもらっているんだ。今はリアムが対応してくれている。そこに、ノアも行ってくれるか?」
「もちろんです。ご支援いただくのに、本人から何もないのはおかしな話ですからね。」
「あ、あぁ・・・」
「そういうことなら、もう取り繕う必要はありませんね。」
と歩きながら、父上に話す。
_コンコン_
とノックすると、兄上が出てきてくれた。
「ノア、入れ。」
「はい、失礼します。」
座っている方は、皆頭を下げている。
え?なんで侯爵まで頭を下げてるの?
困った僕は兄上を見上げると、肩をすくめられる。
父上を見ても、苦笑いだ。
えーどうにかしてよ・・・と思っていると、ちゃんと助けてくれた。
「侯爵、発言のお許しを。」
「よかろう。」
そう言ったものの、頭はあげない侯爵。
「ノアが困っております。顔をおあげください。」
そう言われ、ゆっくりと顔を上げる侯爵と次期侯爵。
「さすがだな。ダンテ様があれだけ必死になるわけだ。」
「ええ、そうですね。父が申し訳ございません。」
「いえ、お試しになられたのですね。」
「ハハ!お見通しか!たしかに優秀なのだな!」
「恐れ多いお言葉、ありがとうございます。」
そう言って、父上を見上げる。
分かっているとでも言うように、頭を撫でられた。
「皆様、お顔をおあげください。」
父上がそう言うと、皆顔をあげた。