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大広間のホスト側の出入り口から、入場する。
扉の前に立ち、父上と母上にお礼をする。
「父上、母上、ありがとうございました。おかげで少し、緊張がとけました。」
そう言い、繋がれた手を離す。
「ノア、このまま入場してもいいんですのよ?」
母上は、僕に甘いようだ。
いや、母上だけじゃないか。
「ありがとうございます。でも、今日はこの場は、僕は僕の足で踏みだします。」
そう、自分に奮い立たせるように、母上と、父上に伝えた。
前世の自信のない僕は今日で、さよならする_
こころの中でそう決意して、しっかりと自分で立ち、壇上に立つんだ。
「そうだな。ノアは僕ら家族の誇りだよ。さあ、開けるよ。」
父上は、いつも僕の気持ちを尊重して理解してくれる。
そんな人たちの期待に、僕は答えたい_
父上がドアを開けると、舞台袖のような場所に、家族と執事がいた。
大広間でのお出迎えも滞りなくされたようだ。
さすが、兄上・姉上だ。
「ノア、頑張っておいで。」
「ノア、リラックスよ?」
そう兄上・姉上に優しく声をかけてもらい、ニッコリと笑って父上に続く。
父上、僕、母上の順に檀上へ上がる。
檀上の隅には、兄上と姉上、それに執事や従者が並んでいる。
「この度は、リートルテ辺境伯家の次男・ノアの、洗礼式パーティーにお集まりいただきありがとうございます。ノア、ご挨拶を。」




