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「ご招待客された方々が到着いたしました。」
と、イーマス伝えてくれる。
今日は、イーマスは家令をメインとして動いている。
我が家は最低限の使用人で回している。
節制ということもあるし、有事の際の為でもある。
使用人が多ければ、その分有事のときの伝達は難しくなる。
その点、人数を減らせば伝達はたやすい。
人数が少ない分の欠点は、何種類かの職がこなせる人材を採用することで、補っている。
イーマスなら、執事・家令・護衛をできる。
母上や姉上についているメイドも、メイドはもちろん、護衛もこなせる。
というか、ここの使用人は皆が護衛をできる腕前はある。
辺境伯だから、そこが最低条件なんだ。
兼任してもらうのだから、他の貴族の使用人よりも給与は高い。
なかなか、人気らしい。
そうそう、だからイーマスは父上の執事でありながら、リートルテ家の家令で護衛でもあるのだ。
「うん、いいぞ。」
そう父上が言うと、使用人が両開きの玄関を開けた。
目の前に広がるのは、いつもの門から屋敷までの道に出来た馬車の列だった。
こういうときは、いやこういうときでなくとも、下位貴族から到着、入場するのが習わしだ。
今日も今日とて、例にもれず男爵家から馬車を降り、こちらへ来る。
次に子爵家、伯爵家、辺境伯家、侯爵家の順に、屋敷へ招き入れる。
「本日はお招きいただきありがとうございます。」
皆、一様に同じ挨拶をして、使用人について大広間へ向かっていく。
僕は父上が、返事するのに合わせて、お辞儀をしていくだけだ。
ここでは、まだ何も話さない。
僕はまだ紹介されていないからね。
あとで父上から紹介してもらってから、挨拶回りの時にお話しをする予定。