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ロビーに着くと、そこには使用人がズラっと並んでいる。
侯爵家までとはいかないが、伯爵家以上ではあるという何とも複雑な位置付けのされている辺境伯。
国境や、魔の森近くの領地に配置されていて、我が国には4つしかない爵位だ。
リートルテ辺境伯はそのうちの北側にある辺境伯家である。
今回パーティーに参加してもらうのは、辺境伯の傘下にはいっている子爵家、男爵家の3家族。
横に広い領地だからね。
辺境伯だけでは見切れないところを、領地の持っていない信頼のできる男爵家、子爵家に一部を任せ、定例会を年4回開催し、領地運営やら防衛を回している。
それに、隣の西側の辺境伯のご夫妻、それに内陸に入った隣の領地の侯爵家と、伯爵家だ。
東側の辺境伯は、隣国との小競り合いで、辞退。
南側の辺境伯は、距離が遠く物理的に領地をそんなに空けられないとのことで、辞退という事だ。
だから、参加人数は少なくとも12人で、それに夫妻の子供も合わせるとそれなりの人数だな。
当主夫妻の顔は覚えたが、子供は貴族名鑑に載っていないのでまだだな。
今回のパーティーでしっかりと覚えないと!
そんなことを考えながら待っていると、ふいに声をかけられた。
「ノア、今日の参加者は友好的な者だけに厳選した。だから、そんなに構えなくても大丈夫だよ。」
と優しい声の父上を見上げると、ふわりとほほ笑んでくれた。
いかつい顔立ちの父上だが、見上げた顔は、父親の顔・・・愛情にあふれた顔だった。
そんな顔の人を前世では見たことはないのだけど、転生してたった5年だが、その間に見慣れた顔だった。
だけどそのたびに、嬉しくなる顔なのだ。
「はい!父上!ありがとうございます。」