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そこに、父上と母上がやってきた。
「ノア、心の準備はできたかい?」
「そうですね。ただ、緊張はしてますが・・・」
「ハハハ、最初はそんなもんだ。だが、心配はいらん。ノアは普通にしているだけで。」
「そうよ。ノアちゃんがもし、失敗したとしても、誰かしらがフォローするわ。そのために私も、リアムも、エマも、トーマスやイーマスたちだっているのだから。自分だけでどうにもならないときは、頼って?ね?」
うんうんと、みんなが頷いている。
ああ、助けてくれる家族や仲間がいるって、こんなにも心強いんだなあ。
「さあ、ホールへ出迎えにいこう。リアム、エマ。ここは任せたよ。」
「「はい!(お任せください。)」」
兄上と姉上は、自信満々な様子で返事をしていた。
素敵だな~こうゆう信頼関係のある家族とか、執事や従者って。
僕もいつか、仲間に入れるよう頑張ろ!!
父上、僕、母上、少し遅れてイーマスやトーマスが続く。
あ、今日はリルは僕の影の中でお留守番。
といっても、頭の中に声が響いたりしているけど。
料理長に無理言って、今日のパーティーに出す料理数種類と、果物を前もって分けてもらって、影の中にリルが持って行ったのだ。
料理と言っても、こてこての味付きの料理とかではなくて、蒸し鶏とかなんだけど。
フェンリルは食べなくても大丈夫らしいけど、リルは料理や果物が気に入ったようで、催促されるのだ。
『ふふ~ん。おいしいな~』
と、なんとも幸せそうなリルの声が聞こえている。
ついつい笑顔になってしまった。
いけない、いけない!
勝手に笑って、変な人に見えちゃう。
パンパンと頬を軽くたたき、気合いを入れ直す。