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2階の階段付近で家族と落ち合う。
豪華な階段を降りていくと、玄関がある。
落ち合う前から、キャンキャンと吠えている。
息子の声はあんまり聞こえないが・・・
近づくにつれ、内容が聞こえてきた。
「ちょっと!客を玄関で待たせるとは!本当に辺境の人間は、使用人の躾がなってないわね!!」
おいおい。少し考えろよ。
先触れなしの自分たちは棚に上げてんのか?
それに、先に案内されないことが、主人が客と認めていないってことぐらい、普通ならわかるもんじゃないの!?
前世とか、少し前までの小心者で、自信がない僕ならば、こんなことは思えなかったな。
でも、家族のたくさんの愛情で、僕は自信を付けることができた。
嫌なことは嫌と言えるようになったし、好きなことは好きと言えるようになった。
それもこれも、父上や兄上、母上に姉上。
それから執事をはじめとする、うちの使用人のおかげだ。
もし、もしも。この人たちのために嫁いでと言われるなら、僕は喜んで嫁ぐだろう。
それで、僕の大事な人たちが幸せになれるなら。
それくらいの恩返しはしたいと、本気で思う。
それでも、あんな人たちと家族になりたいとは思わない。
聞こえてくる声に、階段のところへ集まった家族みんなで、顔をしかめていた。
「ノア、確認だ。ノアがもし好きになっ・・・」
「あり得ません。第一、メリットがありません。」
「いや、好きという感情はメリット、デメリットでは・・・」
「無理です。生理的に無理です。デブだし、常識ないし、気持ち悪いし。追い返したいくらいなのに。父上、変なこと言わないでください。オエエ。」
「そ、そうか。わかった。じゃあ、行こう。何があってもノアを守るから。安心して?」
「はい。ありがとうございます。みんな、大好きです。」
「・・・・・・・・」
「父上、ノアをください。」
「え?」
「まてまて、ダメだ。ノアの気持ちが一番だ。ノアはまだやらん!」
「もう!行きますよ!さっさと決着つけましょう。」
そう言って、父上と兄上の攻防を強制終了させたぼくだったのだ。