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「というより、また先触れなしなの?ほんと、信じられないわ。いまどきの貴族のレベルもお里が知れるわ?女性は準備に時間がかかるっていうのに。」
うわわわ・・・
母上、怖し。めちゃくちゃ怒っているじゃん。
触らぬ神に祟りなし。
「ほんとよね!王都の貴族はそれが普通なのかしら?」
あああ、姉上まで・・・
怖いぃ。
「まぁまぁ、落ち着いて?王都でも、先触れは、常識だったでしょ?学園にいれば、分かるでしょ?」
兄上がたしなめる。
すげぇ!あの怒りをたしなめるとか。
チャレンジャーだ。そのうえ、まるめこめるなんて・・・
「まぁ・・・そうね。」
「そうそう。だから、アホな貴族ってことだね。そんな奴らに、ノアをやるかぁあ!!」
と、いきなり叫ぶ兄上。
あ、兄上・・・
「と、とりあえず準備しましょ?ね?」
(ノアちゃん、かわいい!首コテンとか罪レベルッ!)
以上、家族の心の声でした。
「・・・はわわっ、そうね。」
「そうだな。イーマス一応、応接間の準備を頼むな。」
「はい、承知しました。」
僕らはいったん部屋へ戻り、来客対応のための服装や、髪の毛のチェックをする。
常識のない人たちで、先触れもなかったくらいだから、いくら待たせても文句は言えない。
本来なら。あの人たちは常識がないから、苦言を申してきそうなことは、たぶんみんな予想しているだろう。
ま、心配はしていない。
口ではめっためったに論破されるだろうし。
実力行使されたとしても、あんなおデブに、辺境伯家の人間(僕を含めて)が負けるわけがない。
メイドにすらやられるだろう。
ま、メイドちゃんたちも冒険者ならBランク以上だと思うから、強いんだけどね。
はーあ、憂鬱だけど行きますか。
「トーマス、これからの予定は?」
「はい。申し訳ないのですが、バカで、アホで、デブな貴族のご対応をお願いします。ええ、本当に申し訳ないのですが。私の主人を侮辱する者は、魔物の森に捨て置きたいですね。ええ、本当に。」
う、うわー。
トーマスもめちゃくちゃ怒ってるじゃん。
ほんと出来た執事だな。主人がバカにされて怒るなんて、ほんとにいい人なんだ。
「ありがとう。トーマス。じゃあ、行こうか。」
そう言って、部屋を出て歩き出した。