130
「こちらへどうぞ。」
そう言って、応接間に案内する。
お茶とお菓子を出し、紅茶を飲み、ハンスの上がっていたん息が戻ったなと思った頃に話しを始める。
「それで、今日はなにがありましたか?」
「そうでした!ノア様拝んでいたら、忘れていました!侯爵から言伝てです。この間、王都在住のバーン伯爵が妙なことを言っていたと。その時は半信半疑だったが、今朝方そのバーン伯爵が侯爵領に着いたと。強行な行程ならば、夕方くらいには、そちらに着くだろうと。もちろん侯爵はなるべく引き留めてはいますが、いつまでもつか分からない、とのことです。」
「ほうほう。なるほど。して、その妙なこととは何ですか?」
「それが・・・あの。辺境の平民になるのを待つだけのノア様をもらってやるとか、なんとか・・・」
「は?」
あ、やべ。素がでちった。
「どういうこと?」
「はい。ここ最近王都でもノア様の話題で持ちきりでして。ノア様を嫁にとか、夫にとか、そういった話しが出ています。そこで、いち早く獲得にと思ったバーン伯爵と、令息が、先程のようなことを夜会で言っておりました。それで、今回は婚約の話しをするため、こちらに向かっていると思われます。」
「はああ。やっぱりきたか。あー、早く籍抜いてもらえばよかった。」
と、少しの間天を見上げた。
「ふう。父上に早馬を出す。トーマス、準備を。」
「はい。承知しました。」
「それで、この件なんですが、どうやら王族方々にも耳に入ったそうで・・・」
「なに?」
少し威圧がかかってしまい、ハンスがビクっとした。
「ああ、すまない。それで、王族の方はなんと?」
「それは、まだ・・・」
「そうか。イーマス、部屋の準備を。念のため4部屋。それから、料理長を呼べ。」
嫌だが、追い返すにしても、今日きたら夜追い返すことになる。
そしたら、こちらが悪く言われかねない。
今日ついてしまえば、どんなに嫌でも、1泊は許すしかないだろう。
伯爵夫妻、子息に1部屋ずつ。
それに、もしかしたら・・・
噂の真実を確かめに、かの方々も来るやもしれんからな。
「ほううう。」
顔を赤らめたハンスはなんだか、熱っぽい視線を向けてくる。
「どうした?」
「さすが、ノア様。ほれぼれするほど、的確な指示。感服です。」
ハハハ・・・苦笑いしか出ない。