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ん?どこだ?
とたどると、バーチより少し前方、右ななめ前くらいの場所だと分かった。
「ギルド長、右ななめ前方、負傷者がいそうです。急いでいきましょう。」
そう言って、跳ねるように走る。
すぐに、その声の主は見つかった。
戦っている魔物から、少し後方に下がり、回復魔法士に手当を受けている。
あの魔物は・・・なんだ?
このスタンピードのため、辺境伯家の者として、小さいころから魔物の勉強はしてきたが、こんな魔物は見たことがない。
周りを見てみると、着いたときに話しをした第二隊長が戦っている。
きっと強敵なのだろう。
とりあえず今は目の前の騎士と冒険者を助けなければ。
1人の回復魔法士が、重症の2人を左右それぞれの手を当てて治療している。
集中力が必要な回復魔法なのに、すごいな。
「手伝おう。君は、そのまま騎士の方を治してあげて?」
「はい!ありがとうございます。」
涙目になっている。
このままじゃ2人とも手遅れになると思っていたんだろう。
「ふう・・・。」
ヒール。
と心で唱えれば、まばゆい光が冒険者をつつみ、傷を治していく。
「ん?あれ、おれなんで・・・」
「あの魔物にやられて、瀕死だった。」
「あ、あ、あ・・・」
「ん?」
「ノ、ノア様・・・が?」
「そうだよ。」
「す、すみません!!」
「気にすることはないさ。当たり前のことしただけだ。」
それを2度ほど繰り返した。
恐怖なのか、顔を青くした冒険者と騎士だった。
砦まで下がるように伝え、未だ強敵と戦うものたちのとこまでいく。
近くまで行って見てみると、ますます不気味だ。
ドス黒いオーラを撒き散らし、騎士、冒険者を威圧している。
4足歩行の動物のようだ。
ん?でも、なんだか・・・
少しリルに似てるか??
そんなことを考えながら、近づき声をかけた。
「加勢します!」
「ノア様!助かります!!」