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ーあれから、1年ー
僕は、6歳になった。
家を出るまで、あと4年。
僕らはあの後、無事にリートルテ領へ帰ってきた。
商会長夫妻は、3か月後ほんとうに、手続きの書類を持って、屋敷へやってきた。
両親との顔合わせも、問題もなく終わり、正式に後見人になってくれた。
危惧されていたスタンピートはまだ来ていない。
スタンピートが遅れたり早まったりするのは、たまにあることだ。
だが、遅れているときは、例年よりも強敵な魔物が現れたり、量も多かったりするそうだ。
過去の文献にも載っていて、僕らも、領民も、冒険者も、騎士も、戦線恐々となっていて、ソワソワ落ち着かない一年だった。
だけど、だからこそ鍛錬する時間もたくさんとれた。
リートルテの冒険者も、僕を舐めていた砦の騎士たちも、僕の実力を認めてくれている。
もうすぐでAランクにランクアップするだろう、と言われている。
そんな僕は今日も今日とて、毎日のルーティーンは変わらない。
朝起きて、自主練。部屋にて、魔力・体力を使い果たし、つっぷす。寝る。
執事のトーマスがお越しにきてくれて、寝ぼけながらも支度を整えてもらう。
だんだんと目覚めてきて、支度が終わるころに聞くのだ。
「トーマス、今日の予定は?」
とね。
「はい、本日は旦那様が、ノア様・リアム様とご一緒にスタンピートへ向けて、お話しがしたいそうです。」
「そうか、分かった。ありがとう。さあ、行こうか。」
毎日、トーマスは僕より早起きして、父上や母上、姉上に兄上の予定まで頭に入れているっていうんだから、すごいよなあ。
さすがだ。よくできた執事だ。
でも、そろそろ僕も自分で起きて、自分で身支度ができるようにならないとだろうな。
冒険者になったら、支度をしてくれる人はいないのだから。
・・・・・・・・・・
トーマスと離れるのは、寂しくなるだろうなあ。
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「で、昨年起こると思われていたスタンピートが遅れている。過去の例から言っても、大規模なものになるだろう。ノアのおかげで、砦の者たちも冒険者もすごく強くなった。だがお前たち、二人とも念には念を入れてほしい。リアム、お前には領民を任せている。食糧や、要塞の準備は大丈夫か?」
「はい、抜かりなく。食糧・飲料も領民が1週間生活できるだけ蓄えています。要塞も各所点検し、補修したりしました。今日にでも、見にいらしてください。」
「わかった。」
「ノア、お前は冒険者として、先陣をきるんだな?」
「はい、もちろんです。」
「わかった。1年前は私も一緒にいようと思っていたが、ノアは私に引けを取らないくらい、いや私よりセンスもあるし、強いだろう。冒険者の方は、頼んでいいか。」
「もちろんです。」
「ありがとう。ただ、ギルド長を必ず付けていてくれ。私の可愛い子供に代わりはないんだ。強くても、心配なのが親心だ。頼む。」
「はい、わかりました。」
「私は騎士団をまとめ、全体の指揮をとる。」
「「はい。」」
「二人とも、頼んだぞ。」