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「メロンを抱えた人」
頭部を損傷した人たちの住む街で
私はただ、メロンを抱えている
このメロンを何に使うか
今はもう覚えていない
人たちは誰も私を気にしない
私を見ることもない
ある程度の事実は知り尽くされたこの世界で
メロンを抱えた私という不釣り合いな存在は
最初からいないかのように
眩い光で視界は衰えた
止まない雑音にも慣れた
それでもまだ私は
メロンを抱えていよう
目的はもう、忘れてしまったけれど
このメロンは、あとで生ハムメロンにして食べることにしよう
そのためにも、生ハムを買いに行こう




