The things for someone
「B組の××××が行方不明なんだって〜」
「え〜!や×××君って確か、家が商店街のパン屋の××××〜」
噂話が教室のどこかから聞こえてくる。
B組の誰って言ったか、そんなことよりも今朝は頭がぼんやりとしていて何にも手につかないが・・・
窓から見える雨空が、より一層に頭の回転を鈍らせてくる。
この春から進級して二階の教室からこの町の海を一望しているっていうのに、あんまり実感が湧かないもんだな・・・
「×××!××と!!おーい!!!!」
なんだか後ろが騒がしい。
それなのに周りの声がとても遠くて、まるで水の中にいるみたいだ。
「結人!!起きろ!!」
「なんだ、光臣か。今年は同じクラスになったんだな。」
「なんだじゃねえよ!初日からやる気ねーな!寝不足か?」
そう言いながら肩を小突いてくる。
「いや、寝不足って程でもないんだけど、昨日の夜から調子悪いんだよ」
「おいおいこっちの調子も狂うぜ〜!それより聞いたか?山内のこと」
「山内がなんかあったのか?」
「3日前から連絡着かねーってよ!なにやってんだかあいつも!」
山内が・・・?さっき聞こえてきた話は山内の事だったのか・・・
「結人、山内と仲良かっただろ?一年の時同じクラスだったし、何も知らねーのか?」
「いや、初耳だな。」
山内とは仲が良いと呼んで差し支えなければ、友達として面白いやつだ。たまに一緒にゲーセンに行ったり、実家のパン屋でご馳走になったりもしていた。
「なんか気にならねえか?確かにあいつは変なやつだけど、家出するような性格してねーだろ?」
確かに、山内はそんなタイプではない。勉強や運動も人並みに出来たし、学校や家庭での人間関係も良好そのものだった。
強いて挙げるとすれば、趣味である昆虫集めのために、夜な夜な深夜徘徊を行うところくらいか・・・
「確かにそうだな・・・この間会ったけど、特に変わったところはなかったな。わかった、連絡してみるよ。」
「俺もしてみたけどよ、携帯の電源切れてんのか、全然繋がらねーんだよ。今日学校終わったら家行ってみねーか?」
「そうだな、そんな事になってるなら山内のおばちゃんにも話聞きたいな。」
「だろ?事件の臭いがプンプンするからよ!じゃあそろそろ席戻るわ!そろそろホームルーム始まるぞ!」
肩を小突きながら颯爽と去っていく。
相変わらず騒がしいやつだな。独りでもでもあんな調子なのか?と考えてしまうくらい元気なやつだ。
だからこそ学校でも顔が広くて、人望も厚いんだろうーーーーーー
斯くして、僕ら二人は山内家に向かう事となった。
不可解な事件に巻き込まれるとは知らずに・・・