第7話 旅立ち
「おはようございます!」
ミリエールが早朝だというのに、元気に挨拶してきた。僕もすかさず挨拶する。
「おはよう。朝なのに元気だね」
「朝早いのには慣れてますから」
聞けば、カフェで働いていた時は、まだ日が昇らない内に起きていたという。そして昼過ぎに仕事を終えていたそうだ。僕なんか朝は重い瞼を擦りながら起きているというのに。
「あ、そうだ。マティさんが言ってたんですけど、今日から王国を出て旅に行くそうですね」
「は?え、何それ聞いてないんだけど」
「あれ?そうなんですか?私もお供して良いと伺ったのですが・・・・」
そこはどうでも良い。いつかこんな日が来るとは思っていたけど突然すぎだろ。ていうか昨日の内に言っといてくれればいいのに。
「ミリエール、それって今日聞いたの?」
「いえ、昨夜、ご飯を頂く前に聞きました」
Oh my god 聞いてないぜ。全く準備してないぞ。ちょっとマティさんに問い詰めよう。
「ミリエール、マティさんは何処に居るか知ってる?」
「マティさんならもうとっくに出かけて行きましたよ」
ガッデム!!!!!!
「私達も行きましょうか」
「行くって何処へ!?」
「マティさんのキャンプ場ですよ。コースを解りやすく、付けて頂きました。ほら」
ミリエールの見してきた地図には赤い線がズラーッと描かれていた。
「勝手すぎる・・・・。旅に出るのって国で決めたのかな。そうだよな。普通そうでもしないかぎり、遠出なんてしないもんな」
適当に荷物まとめて行けばいいか。
「私はもう準備終わってますから」
早過ぎるだろ・・・・。昨日聞いたから当然だけどな。面倒臭い。
1時間後
よしこれで完璧だ。朝食も食べてきたし。
「じゃあ、行きましょうか」
「ああ」
いよいよ王国の外へ出る。果たしてどんな所なのだろうか。僕は緊張と期待が混じったまま、門を出た。
―大草原―
「うわぁ、凄いな。あたり一面草だらけだ」
「そりゃあ、草原だから当たり前ですよ」
「で、キャンプ場は何処だっけ?」
「え~と確か・・・・」
その時!突如として近くの木が爆発した!!
「「!?」」
すると、煙の中から2人の男が出てきた。身体の大きな奴と細い奴だ。
「手間ぁ取らせやがって。もうとっととぶっ殺すことに決めたぜ!」
敵か!まずい。今の戦力では勝てない気がする!
「まぁ取り敢えず死ねや」
大男が手を振りかざすと、無数の火の玉が飛んで来る。しかも一つ一つがデカい。
「くっ!冷却魔法アイスバーグ!」
なんとか火の玉を止めることが出来た。だが・・・・。
「ほう!さすがだな。グランディルを倒しただけの事はある。だがこれはどうかな」
大男が急に瓶に入った紫色の液体を飲み始めた。毒系魔法か!
「猛毒魔法!フォッグポイズン!」
毒系魔法の中でもレベルが高い猛毒魔法を!これに対抗する手は・・・。
「鋼魔法、リジッドスチール!!」
「糞!こんな魔法合戦をチンタラやってたらキリが無いぞ!」
危険な賭けだが、もう行くしか無い!!!
「ミリエール、ちょっと」
「は、はい!」
「ふぅ・・・・」
「うん?おいおいおいどーしたぁ!かかって来いよ!」
今だ!!
はい!
「ビーンド!後ろだ!!」
大男が油断している間にミリエールが、植物魔法で奴を縛り、行動不能にする。そこへ僕が切り刻みに行く!
「な、グハァッ」
「ビンゴォ!」
「せ、成功した。成功しました!」
「ッチ!のろま野郎が」
大男は上半身を斜めに切り刻まれ血を吐き出している。
「お前みたいなザコはもう用無しだ。死ね」
「ぐ、ぐああああああああああああああ」
細男の目から眩い閃光が発され、大男は石になってしまった。
「お、お前、仲間を!」
「ッフ!こんな雑魚はもう用無しだ」
「ふ、ふざけんなよ!!!お前の仲間だったんだろうが!」
「五月蝿い蝿だ」
「許さない!!仲間を大切にしない奴は絶対に許さない!!」
「死ねぇ!!究極魔法アフィス・ティーヌ・ロイヤル・エディション!!」
「血迷ったか・・・・。まるで理性の無い野獣だな」
「ファーボン・ジ・ダクーレン」
二つの大きな魔法の球がぶつかり合う。
「うおおおおおおお!!」
「・・・・・・・・・・」
数分後
「フ、他愛も無い」
「か、はぁ・・・・。つ、強・・・・すぎる」
「行こうか。ミリエール、マティさんの所へ」
「はい!」
僕達は無事、マティさんのキャンプ場へ着いた。マティさんに今日戦った二人組について話すと、やはり帝国軍の奴らだったらしい。皇帝親衛隊隊長と副隊長だ。ということは後はもう皇帝を倒すだけだ。打倒帝国軍まで後一歩だ。あ、今日テントだから窓が無い。
「演技というのは中々疲れるな」
「イヤでもうまく騙せてたじゃん」
「馬鹿な奴ら・・・・」
「にしても危なかったじゃん?」
「だ、黙れ!今度は油断なぞせん!!」
「本当かなぁ?」
「くっ!もう良い。皇帝陛下の元へ行くぞ」
「「はぁーい」」